大谷翔平はもう「泣き寝入り」するしかないのか…弁護士が指摘する、水原一平が「スーパースターから盗んだ26億円」を「返済する方法」

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ドジャースの大谷翔平投手の元通訳、水原一平被告が大谷の銀行口座から不正にカネを送金した問題の発覚からもうじき2ヵ月。5月14日(日本時間15日)に米・ロサンゼルスの連邦地裁に現れた水原被告は、集まった報道陣に囲まれるも無言を貫いた。気になるのは大谷から盗んだ約26億円返済の行方だ。
前半記事「「違法なスポーツ賭博でできた負債60億円は返さなくていい」…弁護士が指摘する、大谷翔平から金を盗んだ水原一平の「返済計画」」に引き続き、弁護士の村尾卓哉弁護士に解説してもらう。
ドジャースの大谷翔平投手の元通訳・水原一平被告が大谷の口座から盗んだのは、違法なスポーツ賭博でできた借金を返済に充てたとされる1660万ドル(約25億6500万円)だけではない。
歯の治療代と偽り、大谷投手から受け取った6万ドル(約928万円)、転売目的で購入したとみられる野球カードの費用32万5000ドル(約5000万円)も含まれている。
合計すると約1700万ドル、日本円にして約26億2800万円を大谷の口座から盗んでいることになる。
ほかにも410万ドル(約6億3600万円)の追加収入を申告していなかったことで虚偽の納税申告の罪に問われており、115万ドル(約1億7800万円)が追徴課税されます。大谷の口座から不正にカネを送金した銀行詐欺罪の罰金は上限125万ドル(約1億9500万円)。当然、これも支払う義務がある。
いったいどのような仕事で支払えばいいのだろうか。
ニューヨーク州・カルフォルニア州の弁護士資格を持つ、国際弁護士の村尾卓哉弁護士は次のように説明する。
「アメリカでも日本同様、収監中に刑務所の中の仕事をすることはできます。ただし、時給が安い。州によって異なりますが時給1ドルを切ることもあります。そうした環境で働かせることは、アメリカ国内でも『奴隷制を禁じる法律に反するのではないか』と批判の声があるほどです。
水原被告は刑期が終わったあと、日本に強制送還されます。水原被告に限らず、アメリカで法を犯した外国人にはこうした処分が下ることが多い。国外退去処分が科せられれば、アメリカに再び入国するのは難しいでしょう。断言することはできませんが、在留資格や入国するための資格を再度得るのも困難です」(村尾弁護士、以下「」内も)
スーパースターの口座から大金を盗み、数々のウソを重ねて周囲の人々を裏切ってきた水原被告にとって、故郷同然のアメリカを離れることには、むしろ未練はないかもしれない。それどころか、事件から年月が経っての帰国となれば騒動のことは過去の話としてすでに忘れられているだろう。
事件前の自分を知る人もほとんどいない、周囲の人たちは「水原一平」など忘れている。そうなれば心機一転、得意の英語を生かして新しい人生を歩むには好都合な環境かもしれない。
しかし、追徴課税や罰金を支払いや大谷への弁済義務は残っている。10年前後の禁錮刑であれば、出所してもまだ50代。十分に働ける。だが、長期となれば出所時は60代、下手したら70代が目前に迫っている状況も考えられる。
「刑事事件での損失は自己破産で免責できません。水原被告が得意の言語を生かした仕事をして返していくことも考えられますが約26億円もの大金を返し終わるのは現実的には難しいでしょう」
そうなれば、大谷は泣き寝入りするしかないのだ。
「大谷投手が返済を求めて、水原被告に対して訴訟を起こしたとしましょう。それはメディアによって絶対に報じられます。今回の騒動が長引くことは大谷選手にとってはできる限り避けたいところ。ですから大谷選手が今回奪われた金銭のことで水原被告に対して何らかのアクションを起こす可能性は低いと思います」
ほかに借金を返済する手段として考えられるのは、事件や大谷についての暴露本の出版だ。
「下品な方法ではありますが、まとまったカネを稼ぐのであれば、それは手段の一つだと思います。ですが、大谷選手についての暴露、大谷選手自身を晒して作ったおカネで、大谷選手に弁済する。それを大谷選手が望むかは疑問があります」
なんとしてもカネを返たいと思えば、そうした手段に出ることもあるだろう。だが、これ以上大谷に迷惑をかけないよう、きちんと罪を償い、少額でも返していこうと思えば水原氏が大谷の暴露本を出すことはないかもしれない。
「すでに映像化の話も出ているように、今回のことを書いた本を出版したい、という出版社は国内外で引く手あまたでしょう。水原被告自身のことだけを書いていればいいのですが、もちろん大谷選手が出てくることはあるでしょう。差支えない内容であれば問題はありませんが、事実と異なる内容が書かれていたら話は別。『名誉毀損』という問題が出てきます」
例えば刑期を終えて出所した水原被告が「10年目の真実」などといったテイストの本を出したとしよう。1冊でも多く売り、おカネにするために「実は私が大谷をかばっていた」というような事実と異なる記載をするようであれば、大谷は当然、水原被告と全力で争う姿勢を見せるだろう。
「ただし、そのような虚偽の記載がなければ大谷選手は水原被告のことは放っておくでしょう。正直なところ、もう関わりたくはない、と思っているのではないでしょうか」
カタチはどうあれ、少額であっても誠意をもって弁済していけばいいが、追徴課税や罰金の支払いが終わった後、大谷への負債は1円も返さずに雲隠れしてしまうことだって十分に考えられる。
「債務者が自ら支払いをしない日本の場合、債務者の財産を捕捉するのは非常に難しいんです」
財産の所在や仕事先を特定するのは債権者側が行わなければならない。つまり被害者が自らで加害者の財産の調査をしなければならないのだ。
「ただ、自分たちで調べるのには限度があります。ある程度、銀行口座にアタリをつけて調査を行うことが多いですが、空振りも多い。
水原被告のような巨額の詐欺事件だけではありません。殺人や傷害などの事件も同様。日本は犯罪被害者への救済手段というのが十分に整っていない。その整備が遅れているんです」
犯罪被害者やその家族、遺族らは事件後の民事裁判で、加害者に対して損害賠償請求をして、認められたとしても、そのほとんどが支払われていない。加害者から傷つけられ、奪われてもなお、泣き寝入りするほかないのが現状なのだ。
ドジャースと総額7億ドル(約1015億円)で契約を結び、そのほかでの収入を含めると大谷選手にとって資産は潤沢にあるかもしれない。26億円という金額はほんの一部だとしても、弁済を続ける、ということが裏切りに対する償いではないだろうか。
水原被告が地道に弁済していくとしたらどのようなプランが考えられるか。
「金額が大きすぎるので何とも」と話した上で村尾弁護士は次のような方法を説明する。
「例えば返すべきおカネが500万円の場合、まず家族や親族から一時金を借りる。100万円借りたら、それを債権者に支払い、残り400万円は月数万円ずつ返していく、ということも考えられます。しかし、水原被告の場合は金額が非常に大きいので一時金、といってもそもそもそれすら支払うのは難しい。基本的にはコツコツと弁済していくしかないんです」
そんな水原被告だが、5月14日(日本時間15日早朝)に行われた罪状認否では裁判官への返事と「ノット・ギルティ」、それだけだった。報道陣に囲まれても無表情、無言のまま、一言も話さなかった。
「事件の詳細については、既に公開されている司法取引の合意書にある程度記載されていますが、法廷でも、報道陣の前でも水原被告自身が自らの口で事件のことを多く語る機会はないかもしれません」
水原被告は貝のように口を閉ざしたまま、騒動は終焉に向かっていくだろう。
それこそ水原被告の手記や暴露本が出版されない限り、永遠に謎のまま。大谷への謝罪、負債の返済方法、事件に至った経緯や心情――。水原被告が自らの言葉で語る機会は今後あるのだろうか。次の裁判は現地時間6月4日に行われる予定だ。
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