大人になっても乳歯のまま…その割合「10人に1人」 生え変わるはずの永久歯がない「大人乳歯」の対処法

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「大人=永久歯」だと思っている人が多いと思います。ですが、32歳の筆者は上の犬歯がどちらも「乳歯」のまま頑張っています。乳歯なだけでなく、生え変わるはずの永久歯がどちらも存在しません。意外なことに「大人乳歯」を持つ人は多いようです。なぜ大人乳歯が存在するのか、対処法はあるのか、専門家に聞いてみました。
【写真を見る】永久歯6本が先天的に欠如している症例 「乳歯(子供の歯)」の表記も
「大人乳歯」について教えてくれたのは、いなげ矯正歯科医院(横浜市青葉区)の稲毛滋自さんです。
そもそも乳歯はいつまで働くことを想定しているのでしょうか。一般的に、5歳ごろに乳歯は生え変わり始め、11歳までに生え変わります。上手に使えば、50代まで乳歯が残っている人も中にはいるといいます。
大人乳歯になってしまう一因に、永久歯が存在しないことがあげられます。乳歯が残っていてもいなくても、生まれつき永久歯がない状態を、永久歯の「先天性欠如」といいます。
まさか人間は進化の過程で永久歯を失ったのではないか、などと思っていましたが、稲毛さんは「先天性欠如歯を有する人の割合は、あまり変わっていないのでは」と一蹴します。
日本小児歯科学会が2007~2008年度の2年間、7歳以上の約1万5000人(男子約7500人、女子約8000人)を対象に実施した「日本人小児の永久歯先天性欠如に関する疫学調査」によると、先天性欠如の子どもは約1割います。すなわち10人に1人です。
稲毛さんによると、この割合は、どういった集団を見るかによっても変わるといいますが、感覚として大きく変わることはないそうです。
永久歯がなぜ欠如するのか。原因は分かっているのでしょうか。
歯科医師に親しまれている「口腔病理学」(永末書店)などを読んでみても、先天性欠如になる原因ははっきりと分からず、諸説あるといいます。稲毛さんは「遺伝も否定はできません」といいます。
その上で稲毛さんは「永久歯がなくても、生き死にには関係なく、そんなに気にしても仕方がないと思います。むしろ、乳歯を大事にすることが必要です」と強調します。当たり前ですが、永久歯がないということは、乳歯を永久歯の代わりに使わなければならないということです。
歯を失う原因としては、外傷を除くと、虫歯や歯周病などの細菌感染がほとんどだそうです。
「歯磨きをする」「甘い物を食べ過ぎない」といった基本的なことを徹底する必要があります。また、キスは細菌を交換する行為なので、稲毛さんは「エチケットとして、普段から歯みがきをきちんとして」と推奨し、「外出先で歯磨きができない場合、水で口をしっかりゆすぐだけでも良いです」と話します。
先天性欠如の人しか興味がないかもしれませんが、永久歯が欠如していることが多い歯についても調べました。
2011年の研究「永久歯先天性欠如の発現様式のメタアナリシス」によると、日本人の場合、「前から数えて5番目の奥歯」の先天性欠如が一番多く、次に、「前から2番目の歯」が多いといいます。さらに、女性の方が男性よりも永久歯が欠如している割合が高いといいます。
筆者のように犬歯の永久歯が欠如しているのは、稲毛さんによると、かなり珍しいそうです。
通常、乳歯は上下合わせて20本。親知らずを除いた永久歯は上下合わせて28本だそうです。一度、自分や子どもの歯の本数を数えてみても良いかもしれません。
生まれつき永久歯がなかった場合、隙間を埋める必要があります。対処方法を稲毛さんに聞いてみると、「ブリッジやインプラントといった歯を失った時に行う方法や、矯正歯科治療で歯を移動する方法などで対処できる可能性があります。心配だったら早めに相談してみてください」とアドバイスをくれました。
その一方で、永久歯が10本以上ない子どももいます。この場合、ブリッジなどの技術を駆使しても、必要な歯の本数が圧倒的に足りずに対応できないといいます。逆に、6本までの欠如であれば、歯を寄せることで対処できることがあるそうです。
最後に、興味深い話題が。それは「歯が生える薬」です。大阪市にある医学研究所北野病院などでつくる研究チームが、世界初の「歯が生える薬」の治験を2024年9月から始めると発表しました。歯の構造は複雑で、すぐに歯を生やすことができるようになるといった期待は薄そうですが、ひとまず、今ある乳歯を大事にして生きていこうと思います。
◇取材:TBSテレビ デジタル編集部・影山遼

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