先日知人は、電車内で大声を出している人を目撃しました。そのときある女子高生がひと言でその場をおさめたんだそうです。その女子高生の対応が『とても勉強になるな』と思いましたので、知人から聞いたこのエピソードをご紹介します。
先日、出勤でいつものように電車に乗っていたときのことです。電車内は、立っている人がちらほらいる程度の混み具合でした。
静かな電車内に「あんた、何してんのよ！」という、車両全体に響きわたる怒鳴り声が聞こえてきたのです。
声のした方向を見てみると、女性と小学校低学年くらいの男の子が見えました。どうやらお母さんが息子さんを叱っている声のようでした。
お母さんの声が大きくて話は丸聞こえ。その内容から察するに、どうやら息子さんが忘れ物をしてしまったらしいのです。
息子さんは下を向いて「ごめんなさい」と謝っていますが、お母さんは「なんでできないのよっ？！」と怒り続けます。
あまりに強く怒り続けるので、事情を知らない私から見ると『そこまで言わなくても……』と感じる状況でした。
それに怒鳴り声を聞き続けるのは、周りの乗客にとっても苦痛です。『もうやめてあげてくれないかな』と思っていたそのときでした。
「すみません」近くに立っていた女子高生が、その母親に話しかけたのです。
「大切なお話をされているところ、すみません。私事で申し訳ないのですが、今勉強をしているので、もう少し声のボリュームを抑えていただけますか？」
それはとても高校生とは思えない、冷静かつ丁寧な話し方でした。さらに非難めいた様子も一切なく、本当に丁寧で、申し訳なさそうに話していたのがとても印象的でした。
そんな丁寧で申し訳なさそうな女子高生の様子に、お母さんも冷静になったようで「あ、はいすみませんでした」と素直に答えていました。そして、そのあとはひと言も怒ることなく静かに乗車していました。
私が高校生のころだったら、あんな大人な対応はとてもできません。『大人の私よりよほどしっかりしている高校生だな』と感心してしまいました。
もしこんな状況に遭遇したら、「迷惑だ」とか「子どもがかわいそう」という気持ちが先行してしまって、つい非難的に「迷惑なんでやめてください！」なんて言ってしまいそうな状況ですよね。どんな人であっても、非難せず丁寧に伝えるのはとても大切なことだなと思いました。
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター：橘るい