横領の2・5億円、ロマンス詐欺に…元保育園理事長に懲役4年判決

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愛知県瀬戸市の社会福祉法人が運営する保育園の預金約2億5100万円を着服したとして、業務上横領罪に問われた同法人の元理事長(65)に対し、名古屋地裁(村瀬恵裁判官)は23日、懲役4年(求刑・懲役7年6月)の判決を言い渡した。
元理事長は、恋愛感情を利用して金品をだまし取る「ロマンス詐欺」の被害に遭い、巨額の横領に手を染めていたことが法廷で明らかにされた。
「マインドコントロールされて、視野が狭くなっていた」
3月に行われた被告人質問で、元理事長は、赤裸々に事件の経緯を語った。
数年前から、マッチングアプリで知り合った複数の女性と交際していたという元理事長。じきに交際費がまかなえなくなり、法人の金をたびたび流用していたが、その額が跳ね上がったのは、昨年7月にネット上で知り合った「あいな」という女性がきっかけだった。
あいなはすぐに「SNS上にオンラインショップを開設しよう」と誘ってきた。経営に興味はなかったが、「あいなに会えるかもしれない」と考え、現金を振り込んだ。その後、「店のグレードアップ費用」や「税金」など様々な名目で金銭を要求された。法人の金に手を付け、親族からも借金して工面した。「さすがにおかしい」と弁護士に相談したのは、1か月たらずで約3億4000万円を支払った後だった。
あいなは「名古屋市瑞穂区在住」と説明していたが、警察の捜査の結果、メッセージの発信は全てフィリピンからだった。海外の詐欺グループによる犯行で、被害金が戻ってくる見込みも薄いという。元理事長は「女性と仲良くなりたいという気持ちがあったので、すぐに警察に相談できなかった」と振り返った。
この日の判決で、村瀬裁判官は「規範意識が鈍っていることは明らかで、被害結果は甚大だ」と述べ、実刑を選択した。元理事長は、2億円を超える示談金を毎月3万~5万円ずつ返していく意向で、弁護人によると、控訴せず判決を受け入れる方針だという。
被告は瀬戸市で保育園を運営する社会福祉法人「菱野団地子どもセンター」の元理事長。判決によると、昨年7~8月、保育園名義の預金口座から7回にわたり、計約2億5100万円を引き出して着服した。

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