救急車は「映えスポットじゃない」 搬送中にスマホ撮影、生配信するインフルエンサーも…現場から漏れる本音

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「たまに救急車で搬送中に自撮りしてる人がいます。見て見ぬ振りはしてますが…内心『そんな余裕あんならタクシーで行けよ』って全隊員が思っています」
救急救命士を名乗るアカウントが今年3月、X(旧ツイッター)に投稿した「本音」が波紋を広げている。
近年、動画サイトやSNSに、自身が搬送される様子や、付き添いで救急車に乗ったときの様子をスマホで撮影するケースが相次いでいる。最近も、女性インフルエンサーが救急車で搬送されている最中、YouTubeで中継していたことに批判が殺到した。
中には、救急隊員と記念撮影しようとする人もいるといい、現場からの苦言に対して、SNSでは「救急車内で撮影するなんて信じられない」「救急車を有料化して、お金を取るべき」といった声が多くあがっている。
救急車内の撮影ルールはどうなっているのだろうか。そして、現場はどう対応しているのだろうか。
「救急車内の撮影に関するルールはありません」
そう話すのは、東京消防庁の担当者だ。しかし、現場では「撮影をやめるよう、いつも依頼はしています」と説明する。
「ルールがなく、依頼するだけになってはいますが、活動に支障がある場合は、組織として対応していく方針です」
都内で働くある救急隊員の男性は「こちらが懸命に活動している中、SNSにあげるために撮影をされるとやる気を失いますよね」と打ち明ける。
SNSでもしばしば、医療関係者が苦言することがある。
「救急車内で写真を撮るのは避けて下さい。珍しい光景でしょうが車内では沢山の医療者が関わっており必死に対応しています。SNSにアップする事で刺激された人達が、軽症でも写真の為に救急車を呼ぶ事も考えられます。
救急車は映えスポットではありません。命の現場です。承認欲求は他で満たして下さい」(https://x.com/renatkhsh/status/1091899518314995712?s=20)
実際、「撮影禁止」に踏み切った消防局もある。川口市の救急車には、「撮影禁止」と書かれたステッカーが貼られているという。
「当市では、全19台の救急車を所有し、2020年からステッカーを導入、その後の更新 車両すべてにおいてステッカーを貼付しています。実際に、救急車ての撮影はお断りしています」
そう答えるのは、川口市消防局の担当者だ。撮影禁止の理由を、次のように説明する。
「救急隊かおこなう救急活動は、傷病者の観察と必要な応急処置をおこない、速やかに医療機関等に搬送することを目的としています。
動画撮影等の行為は、医療機関・消防機関・傷病者(関係者含む)相互のトラフルとなりかねないことや、撮った動画の SNS などへの拡散防止等の観点から、2020年からステッカーを導入しました。
また、当市ては、外国人居住者も多く、言葉か通しないことも鑑み、見れはわかるステッカーを貼付することになりました。
同時に、動画撮影等の行為は、危害を加える等の妨害行為とは異なることから、あくまても、円滑な救急活動に協力をお願いしているところてす」
弁護士ドットコムニュースが総務省消防庁に確認したところ、やはり「救急車内の撮影禁止」というルールは設けていないという。しかし、担当者はこう話す。
「撮影禁止のルールはつくっていません。ただ、各消防本部で撮影しないよう依頼があった場合には、やめていただければと思います。
救急隊員のみなさんは、人命を助けるために頑張っていらっしゃいますので、現場では救急隊員からのお願いを聞いていただければと思います」
総務省消防庁は3月29日、2023年中の救急出動件数が763万7967件となり、過去最多を更新したと発表した。各地では新型コロナウイルスやインフルエンザの流行などにより、救急医療が逼迫しており、救急車の適正な利用が求められている。
東京消防庁の公式サイトでは、救急車を呼ぶべき事例として、「意識がない」「けいれんが止まらない」「大量の出血をともなうケガ」「広範囲のやけど」「ものをのどにつまらせて呼吸が苦しい、意識がない」「交通事故、溺れている、高いところから転落」「子どものじんましん、顔色が悪くなった」「乳幼児の様子がおかしい」などを挙げている。

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