駄菓子屋にある「ビッグカツ」って何のカツ? 積年の疑問に迫る

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袋入りの薄いカツ「ビッグカツ」は、子どものおやつはもちろん、大人のお酒のおつまみとしても大人気。ところで、この「カツ」、何のカツ? 気になりながらも避けてきた、「カツ」の謎に挑みたい。
【写真】ビッグカツがスイーツに?! 意外なレシピ
駄菓子屋さんなどにある「ビッグカツ」の存在は、子どものころから知っていた。でも母親から「何か分からんから、食べたらあかん」と言われ、手を出さないまま、気が付けば人生も半ば。「光陰矢のごとし」とは、まさにこのことだ。
初めて「ビッグカツ」に向き合った。袋を開けると、トンカツ屋さんのようないいにおい。こわごわとかんでみると、サクッとした歯ごたえで、ソースとともにカレーが香る。あれっ、おいしい。思っていたより軽く、大人の胃袋にも重くない。
裏面を見ると「魚介加工品」の文字。今食べているのは、肉っぽいのに魚? ちょっと頭が混乱する。製造・販売しているのは「すぐる」。珍味など魚介加工品を手がける、広島県呉市のメーカーだ。
社長で3代目の大塩和孝さんにお話を聞いた。同社は1973年の会社化以前から、イカを味付けしたり、天ぷらにしたりして販売していた。しかし、70年代中ごろ、原料のイカの入手が困難になってしまう。そんな時に出合ったのが、魚のすり身をシート状にした「プッチン」。イカを練り込んだプッチンを原料に「イカ天」などを作るようになった。ちなみに、シートを焼く製造工程でプチプチと音がすることから「プッチン」と呼ばれるんだとか。
「天ぷらができるなら、子どもに人気のカツもできるのではないか」と、創業者の大塩季郎さんが考案したプッチンのカツが、ビッグカツの原型になった。手ごろな価格でおなかいっぱいになってもらいたいと、季郎さんの子ども時代のごちそうだったカステラを参考に、ふわっと軽い食感のカツを目指した。
こうして開発されたカツは、70年代後半から串に刺してポットに入れ1本ずつ販売したり、量り売りしたりしたが、もともとは珍味メーカー。日ごろ付き合いがない駄菓子屋さんには、なかなか置いてもらえず、最初はあまり売れなかった。
親子の絆で活路
人気に火が付いたのは、何とおうちの中から。「お父さんから子どもに広がったんです」と大塩さん。他の珍味と同様、酒販店に置いてもらったところ、おつまみとして売れた。お酒を楽しんでいるお父さんから子どもがカツをわけてもらうことで、そのおいしさが認知され、駄菓子屋さんでも人気を集めるようになった。
更に、80年代初めには現在のように、1枚ずつ個包装での販売を始める。バーコードを付けたことで、コンビニやスーパーにも置いてもらえるように。現在は「ビッグカツ」のほか、中身がほんのりピンク色の「ハムカツ風味」やカクキューの八丁味噌(みそ)を使った「みそカツ」など、シリーズ合わせて年2000万袋以上も売れている大人気商品だ。
でも魚っぽくないですね……。大塩さんは「魚でありながら、魚っぽさを消すためかなり工夫しています」と打ち明ける。自社製造のプッチンはガーリックパウダーなどを入れて、配合を工夫。更に衣やソースもそれぞれの製品に合うように開発している。「実はソースも、専従の職人さんが作っています」。ソースまで!
加えてこだわっているのが、脱油の工程。揚げ油が酸化しにくいよう、製造ラインを組んでいる。特殊技術で油を落とし、サクッとした食感とたくさん食べても胃もたれしにくいようにしているのだ。
ちなみに「プッチン」を味わう商品も。タラのすり身を使用した「やみつき炙(あぶ)り鱈(たら)」は、「ビッグカツ」シリーズに次ぐ同社の人気商品。こちらは魚のうまみとあぶった香ばしさが相まって、そのままはもちろん、チーズを乗せたりスープに入れたりして、アレンジもできる。
大塩さんは、海外の人にもビッグカツを食べてもらいたいという夢を持っている。「子どもも大人も一緒に楽しめ、コミュニケーションが広がるというのが、ビッグカツの魅力だと思うんです」。お父さんから子どもに広がったように、日本から世界に広がるのも楽しみですね。カツの正体は、お魚とおいしいもんを食べてもらいたいと思う情熱やったで、お母さん!【水津聡子】
スイーツも アレンジ多彩に
ビッグカツのおすすめアレンジを大塩さんに聞いてみると、「三つあるんです」との返答。「数秒あたためる」「サンドイッチにする」といかにもおいしそうな食べ方に続き、「カスタードクリームと、イチゴやマスカットなど酸味のあるフルーツを乗せるんです」と、自信満々に教えてくれた。思わずメモを取る手が止まる。本当?
半信半疑で試してみた。一口サイズに切ったビッグカツに、カスタードクリームとイチゴを乗せると、見た目はおしゃれなスイーツのよう。食べてみると、イチゴの酸味とクリームの甘み、カツのうまみとスパイスが混じり合う。思っていたほど違和感がなく、個性的な塩スイーツという感じ。かつてない味ですね。

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