新幹線延伸で福井の合言葉は「100年に1度のチャンス」、タクシー会社は100人雇用

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

北陸新幹線の延伸開業で、北陸地方の駅や観光地には16日朝から多くの観光客が訪れた。
石川県では今後の観光需要の増加を見越し、能登半島地震の被災者の雇用につなげる動きも出ている。地域活性化と復興の両立を目指す試みだ。
■観光需要の高まりを被災者支援に
金沢市のJR金沢駅では、午前6時発の敦賀行き一番列車「つるぎ1号」の自由席を求めて鉄道ファンらの列ができた。15日午後8時頃から先頭で並んだ横浜市磯子区の男性(56)は「ホームや沿線から手を振ってくれる地元の人に手を振り返す一瞬の交流が醍醐(だいご)味」と笑顔を見せた。
金沢駅や石川県内の新駅となる加賀温泉、小松両駅は多くの人でにぎわった。
観光需要の高まりを、どう被災者支援につなげるか。就労に着目した取り組みが出始めている。
タクシー大手の第一交通産業は、石川県や新潟県で約100人を正社員として雇用する予定だ。採用者には寮や社宅などの住まいを提供し、引っ越し費用を補助するという。
同社の担当者は「(観光支援策の)北陸応援割などの効果でタクシーの利用増加が見込まれる」と話す。
石川県人材事業協議会は被災者向けの雇用相談会を開催している。同協議会によると、延伸開業や北陸応援割の開始で、温泉旅館の皿洗いや、お土産品の梱包(こんぽう)などの求人も出てきているという。同協議会の嶋洋一事務局長は「避難生活が長期化する中、地元の企業と協力しながら、収入面で被災者のサポートをしていきたい」と話した。
■「人がごった返している」
初めて新幹線がつながった福井県。福井駅では到着のたびに家族連れらが続々と降り立ち、駅前に約20体ある恐竜のモニュメントやロボットに見入った。宇都宮市の会社員(26)は「乗り心地がよく、あっという間に着いた。福井駅前が恐竜だらけで驚きました」と話していた。
海の幸を扱う駅構内の土産物店「越前田村屋」の森章一さん(59)は「経験したことがないくらい人がごった返している。新幹線の力は大きい」と笑顔だった。
県立恐竜博物館(勝山市)には3200人超が来館し、コロナ禍前の同時期と比べて3割程度増えた。辻俊之副館長は「新幹線効果は予想以上だ。恐竜と福井の魅力をもっとPRして、全国区にしたい」と話した。
■専門家「長期的な地域づくりを」
青森大社会学部の櫛引素夫教授(地理学)は「イベント的な一過性の開業効果にとどまらず、長期的な地域づくりにつなげることが重要だ」と指摘する。
今回の延伸開業は、被災地への人の行き来を活発にする可能性がある点に特徴がある。櫛引教授は「新幹線でにぎわいを生み、お金を使いながら被災地を助けるという一つの流れを作ってもいいのでは」と期待を語る。その上で、今後、北陸を訪れる人たちに対し、「能登の未来を被災者と一緒に考え、ともに歩んでいくという意識を持ってほしい」と呼びかける。
福井県では「100年に1度のチャンス」が合言葉になっている。櫛引教授は「人口減や少子高齢化が進む中で、新幹線を通して住民が地域に自信や誇りを持つことが、持続可能な地域づくりにつながっていくのではないか」と話した。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。