【からだとこころ編集部】「えらいね!」発達障害のある子を叱るのがNGな理由…大切なのは「ほめること」

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子育ての基本はほめることだと、よく言われます。しかし、発達障害のある子の場合、日々の生活で失敗やトラブルが多いため、親は子どもをほめることよりも叱ることに気が回りがちです。
そして、怒ってばかりの自分が嫌になり、子育てへの自信をなくしたり、自己嫌悪に陥ったりして、ひとりで悩みを抱え込むことに……。
そんな人におすすめしたいのが、『ペアレント・トレーニング(ペアトレ)』。発達障害、とくにADHDのある子をもつ親のための子育て支援プログラムです。
ペアトレに参加すると、子どものさまざまな行動にどう対応すればよいのかを学べ、ほめ方や指示の仕方にひと工夫できるようになります。そのひと工夫で子どもが自信をもち、元気になり、子育てがぐっと楽になるのです。
親子がおだやかに、幸せに暮らしていくためのヒントが詰まったペアトレ。今回は、その根幹をなす、子どもを「ほめる」ことについて学んでいきましょう。
ぺアトレは、ほめることをすべての基礎にしているプログラムです。ペアトレの内容はいずれも、ほめて子どもの自信をはぐくむことを目的としています。
発達障害がある子は、さまざまなことで自信を失い、不安になりがちです。自分に自信がもてると、できないことを受け入れたり、挑戦したりしようという意欲も出てきます。
具体的な内容をみていきましょう。
まず、初回のセッションで子どもの行動を3つに分け、(前回の記事を参照)、2回目からほめ方の基礎を学びます。姿勢や口調、タイミングなどを確認し、自分のほめ方を見直します。
わかりにくい部分は、ロールプレイで実践します。こうして、ほめることの意味とほめ方を学ぶことは、ほめ方がわからなくて困っているという人にぴったりです。
【ほめ方のポイント】
・「25%ルール」でほめる。100%できるまで待たず、できたところをほめる。
・行動を具体的にほめる。シンプルに、明るい口調で言うとよい
・ほめ言葉だけ言えば十分。「次もがんばって」はよけい
・しゃがんで視線を子どもに合わせる。表情もにこやかに
・背を向けたまま遠くから言うのではなく、体を子どもに向ける
・おもちゃを片付けはじめるなど、行動をはじめた瞬間にほめる。終わるまで待つのは間違い
子どもは一人ひとり、性格も感じ方も違います。わが子にとって嬉しいのは、どんなほめ言葉や仕章なのか、それを探すために、さまざまなほめ方を試すのです。
ほめ言葉を使わずに「ほめる」方法も知っておきましょう。態度で示す方法は、とくに子どもの年齢が上がってきたときに有効です。
【さまざまなほめ方】
・感謝を伝える。「〇〇してくれて、ありがとう」と言う
・子どもの体にふれる。頭をなでる、肩や背中にふれるなど
・「〇〇をはじめたね」「もう少しだね」と、経過を表す言葉を伝える
・手をふったり笑顔をみせたりして、仕草で「ほめる」を表現
・「〇〇がここまでできたんだ、すごいね」とはげます
・好ましくない行動をしているときに、好ましい行動のヒントを出す。子どもが気づいたらほめる
ぺアトレでは、保護者が子どもの言動になんらかの反応を示すことを「注目」といいます。ほめるのも叱るのも、注目です。
保護者がほめたり喜んだりすると、子どもはもっとがんばろうとプラス思考になります。それが「肯定的な注目」です。
いっぼう、叱られた子は「自分はダメだ」とマイナス思考になったり、「こうすればお母さんがかまってくれる」と間違った学習をしてしまいがちです。注目が否定的に働くこともあるのです。
ペアトレは、肯定的な注目を活用して、よりよい親子関係を築くためのものです。
【肯定的な注目】
ほめる、喜ぶ、子どもに感謝する、笑顔を見せるなど。子どもの行動を受け入れて、 肯定するときにおこなうこと
ペアトレでは……肯定は多く、否定はしない
・手伝ってくれてありがとう!
・勉強するのね、えらいね
・「ごめんなさい」が言えたね
・静かに待てたね
・上手にできているよ
子どもは「こうすれば親がほめてくれる」と実感します。
【否定的な注目】
叱る、怒る、非難する、問いただすなど。子どもを注意するときにおこなうこと。 否定的な表現だが、それらもひとつの「注目」として機能する
多くの場合……肯定は少ない、否定が多い
・手伝いなんて、できて当たり前
・勉強はしなきゃいけないこと
・とにかく騒いじゃダメ!
・どうしてできないの?
・早く、ちゃんとして
・もう、口きかないよ!
好ましい行動をしても親の反応が返ってこないので、 子どもにはそれが好ましい行動だと実感できません。反対に、好ましくない行動をして親の気を引こうとします。
子どもの「好ましくない行動」にはあえて注目せず、見て見ぬふりをします。すると、子どもは、好ましくない行動をしても見返りがないため、やめるようになります。
子どもが好ましくない行動をしたときすぐに近づいて注意すると、子どもはこうすれば親を呼べると感じてしまいます。
「注目しない」は、子どもを「無視する」ことでもあります。ただしそれは、子ども自身の人格を無視する冷たい対応ではありません。あくまでも、好ましくない行動への無視であり、見て見ぬふりです。
「注目しない」対応をとると、最初は子どもの態度が悪化します。よりいっそう騒いだり、「無視しないで」と怒ったりします。そこをがまんして、見て見ぬふりを決め込む覚悟が必要です。
無視することで関係が険悪になった場合は「〇〇するまで話しません」と宣言し、代わりにしてほしい行動を示します。そして、好ましくない行動をやめたら、すぐにほめるのもポイントです。
【「注目しない」ポイント】
・子どものほうを見ない。目を向けるだけでも関心が伝わる
・仕草にも注意。眉をひそめたり、ため息をついたりしない。
・イライラを顔に出さないようにする。がまんが必要。
・好ましくない行動には注目しない。一貫した対応をとる
子どもを感動させるような、優れたほめ言葉を考える必要はありません。ほめるときには、子どもが、自分のどの行動がほめられたのか、はっきりわかるように、 具体的に伝えましょう。「机の上をきれいに片づけて、えらいね。お母さんうれしいわ」という具合です。
「やめなさい!」「なにしてるの!」などと強い口調で子どもを叱ってしまうのは、たいてい、イライラしたときです。数分でよいので、子どもから離れてリラックスする時間をとりましょう。
イライラしたら、子どもにどの行動が嫌なのか、具体的に伝えてください。その宣言をしたうえで、別室にこもり、好きなことをします。子どもがぐずっても、注目しないことがポイント。
【使いたい言葉】
・「〇〇することができたね、えらいね」
・「〇〇」してくれて、ありがとう
・「〇〇」する時間ね、「〇〇」しよう
・今日の宿題はなあに?(気づいてみせるだけでもよい)
・ずいぶん進んだね、その調子その調子
・もうそろそろ終わるね、あと少しだね
・「ばばあ」って言うなら、話を聞きません
・私も「むかつく」って言わないようにするね
【使いたくない言葉】
・早く「〇〇」しなさい
→命令形ではなく「~します」に
・どうしてそんなことするの?
→理由を問いただす必要はない。 好ましくないことだと示せばよい
・赤ちゃんじゃないんだから
→小言や不満は子どもを傷つける
・「△△」しないと「××」できないよ
→否定形ではなく「~すると~できる」に
・もう!悪い子ね
→好ましくない行動を示す。 子どもを悪く言わない
・このくらいやってよ~
→できないことをとがめない。できることを伝える
・お兄ちゃんはやっているよ
→きょうだいと比べない
・ちゃんとしなさい
→言い方があいまい。具体的に指示する
完璧な話し方は誰にもできませんが、上記の例を参考に、できる範囲で気をつけましょう。
記事後編【「ちゃんとしなさい」は絶対NG…発達障害の子どもが劇的に変わる「効果的な指示の出し方」】に続きます。
「ちゃんとしなさい」は絶対NG…発達障害の子どもが劇的に変わる「効果的な指示の出し方」

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