元労働局職員が「間接的パワハラ」提訴 他の部下への暴言聞き苦痛

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厚生労働省長崎労働局(長崎市)の労働基準監督官が特定の部下に暴言を繰り返すパワーハラスメントをし、それを傍らで見聞きしていたことで精神的苦痛を受けたなどとして、同局で勤務していた永瀬仁(まさし)さん(54)=長崎市=が国を相手取り、慰謝料など計330万円の損害賠償を求める訴えを長崎地裁に起こした。原告代理人によると、別の人物へのパワハラを近くで見聞きさせられる「間接的パワハラ」の被害を訴えて提訴するのは珍しい。
労基監督官の暴言で職場一変 「決して許されない」間接的パワハラ
永瀬さんは「当時の上司は労働基準監督官として絶対言ってはいけないことを言い、傍らで聞いている自分としても加担しているようでつらかった」と訴える。
提訴は12日付。永瀬さんは1994年に労働省(現厚労省)に入り、97年に労働基準監督官になった。2020年4月から、退職した23年3月末まで長崎労働局で勤務した。
訴状によると、21年4月に着任した労働基準監督官でもある男性上司が連日、特定の部下に「人間腐ってる」「仕事をなめている」などの暴言を繰り返した。上司は、この部下に「仕事をしない」と言って給与の返還を求めたり、金銭の要求をしたりする発言もした他、部下に退職を迫り、「歩いている女性に抱きついて下半身でも露出して警察につかまれば、そっちが早いかも」などと言ったこともあったという。
また、上司は「することがあるなら、ボランティアでもしないと仕方ない」などと残業申請を認めない趣旨の発言を繰り返し、この部下が申請できなかったこともあったとしている。
永瀬さんが直接暴言を受けたことはなかったが、永瀬さんの机はこの上司の正面にあり、2メートルほどしか離れていなかった。このため、「至近距離でパワハラ言動にさらされることで精神的苦痛を受け、心を正常に保てなかったり、職務に専念できなかったりした」と訴えている。
永瀬さんは21年12月、上司のパワハラについて厚労省に内部通報した。22年1月中旬以降、パワハラは収まり、22年3月に同省から「調査の結果、不適切な言動があったことが認められ、長崎労働局で所要の措置を講じた」と報告を受けた。
一方、永瀬さんは22年10月、通報した時期を含む21年10月~22年9月の能力評価で「B(通常)」評価を受けた。それまではずっと「A(通常より優秀)」だったため、苦情処理を申し出たところ、23年1月、長崎労働局から「評価は妥当」と通知された。永瀬さんはこの点についても「内部通報への報復的措置として不当な評価をされ、精神的苦痛を受けた」として、慰謝料を求めている。
長崎労働局は取材に「まずは事実確認をしたい」と答えた。【樋口岳大】

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