「私立中の学費、もう払えない」中2の長男は公立中に転校へ 世帯年収720万円・30代夫婦の後悔「普通のサラリーマン家庭には無理な選択だったのか」

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子どもの将来を考え「子どもを私立中学校に通わせたい」と考える親御さんは多いでしょう。たしかに私立中学校では、公立中学校にないメリットも多くあります。
【写真】高額な学費…「私大医学部」に必要な年収は
しかし、親子で頑張って私立中学校に入学したものの、学費が支払えなくなるケースも少なくありません。しっかりライフプランを考えておかないと、入学後に後悔する可能性もあるのです。
35歳会社員の夫と32歳パート勤務のAさんも、子どもを私立中学校に入学させたものの今後の学費に不安を抱える1人です。FPの鳥居佳織さんに私立中学校にかかる教育費やライフプランの重要性を聞きました。
【Aさんの世帯詳細】Aさん:32歳 パート勤務(年収120万)夫:35歳 会社員(年収600万)子ども:長男 私立中学2年、次男 公立小学6年住宅:持ち家(ローン返済あり)貯蓄:50万
【Aさんの相談内容】
長男の友人が中高一貫の私立中学校を受験すると聞き、長男も友人と同じ学校の受験を決意しました。中学受験のために塾に通いだしたのが小学6年の5月。塾代は130万ほどかかりましたが、長男は希望校に無事合格できました。
中高一貫校に入学すれば塾は必要ないと聞いていたので、今後は学費だけ考えればいいと思っていました。しかし、中学2年になったころ、長男は授業についていけなくなってしまったため、英語塾と個別指導塾に通わせることにしました。
私立中入学後も、月約8万円の学費はパート代で払っていましたが、塾代の約5万円は生活費から捻出していました。夫の毎月の手取りは38万円ほど。ローンや固定費、教育費を支払うと赤字になる月が増えていき、貯金を切り崩すようになりました。
その結果、今では貯金も底をつき毎月の学費や塾代を払っていくことが困難になりました。
次男も小学5年生になり、これから中学進学に向けてお金が必要になってきます。公立校だとしても、今より出費が増えるのは明らかです。このままでは長男は公立中学に転校させなければならない状況です。
安易な考えで中高一貫校に入学させた結果、教育費による家計破綻を起こしてしまいました。普通のサラリーマン家庭が子どもを私立中学に通わせたこと自体、間違いだったのでしょうか。
ーー私立中学校の学費はいくらくらい必要なのでしょうか?
文部科学省「2021(令和3)年度子供の学習費調査」によると、私立中学校の学費は以下のようになっています。
・中学1年生:約180万円・中学2年生:約122万円・中学3年生:約128万円・私立中学校3年間:約430万
また、私立中学生の補助学習費は、平均約26.2万円となっており、内訳の平均額は以下の通りです。
・家庭内学習費:約4万円・通信教育・家庭教師費:約3.7万円・学習塾費:約17.5万円※補助学習費用0円世帯も含む。
学習塾の金額分布を見ると0円世帯が46.1%いますが、学習塾を利用している世帯だけを見ると、40万円以上支払っている世帯が15.6%と最も高くなっています。
私立で塾にも通わせると想定した場合、年間約150万円~200万円かかると想定しておきましょう。
ーー年収720万の世帯では私立の中高一貫校に行かせられないのでしょうか?
令和3年(2021年)度におこなわれた調査(文部科学省「子供の学習費調査」)によると、年収600万円から799万円の世帯の子どもが私立中学に通っている割合は15.4%です。ちなみに年収800万円世帯が16.8%、1000万円世帯が17.7%、1200万円世帯が40.1%という分布から考えても、極端に少ないわけではないことが分かります。ただ安心して通わせるためには、収支のバランスをしっかり考えることが重要です。Aさんの収支を参考に考えてみましょう。
【Aさんの場合】
▽現在の教育費・長男の学費 年間約130万円・長男の塾代 年間約60万・次男の学費 年間約40万円・次男の塾代 年間約15万円→合計:245万円
◇ ◇
▽収入・手取り年収約554万円(額面年収720万円)・児童手当 年間24万円▽主な支出・固定費 年間約150万円・生活費 年間約130万円・レジャー代 年間約40万円・雑費 年間約40万円→収入から主な支出を引いた、教育費に充てられる金額:218万円
◇ ◇
Aさんの現在の収支では、このまま私立中学校と塾に通わせていると毎年約30万円の赤字です。赤字を防ぐためには、収入を増やすか支出を減らす必要がありますね。
収入を増やす場合は、現在扶養内で働いているAさんの働き方を変えるのが現実的です。現在はパート勤務で手取り月収8万(額面10万円)を得ていますが、手取り月収を11万円(額面14万円)になるまで勤務を増やすことが可能ならば、夫の扶養から外れて所得税は増えるものの、年間約36万円のプラスになります。
ーー収入増が見込めない世帯の場合はどうしたらいいでしょうか?
すでに夫婦共働きの家庭であれば、支出を見直す方法があります。Aさんの世帯で考えると、レジャー費や用途が曖昧な雑費を削ることもできますね。他にも、固定費を見直すことで支出を削減することが可能です。
ご兄弟がいる家庭の場合、下の子の学費も考えなければいけないので早めに行動することをおすすめします。現在の収支を確認することで、理想の未来に近づくためのお金の使い方や働き方をよりイメージしやすくなるでしょう。
現在の収支バランスが不安だったり、どうしたら良いかわからなかったりする場合は、FPと一緒に具体的なライフプランを作成してみましょう。
中学受験は周りの意見や思い付きで決めずに、本当にその学校に行きたいのか、今の生活で無理なく通えるのかをしっかり考えて判断することが大切です。
◆鳥居佳織(とりいかおり)/2級ファイナンシャル・プランニング技能士大手生命保険会社にて8年間勤務。保険コンサルティングでは個人、法人、問わず生命保険や損害保険を幅広く販売。金融ジャンルの専業ライターとして活動中。金融全般に関するさまざまな相談に応じてきた経験があり、実体験ベースでの執筆が得意。主に保険、年金、資産運用など幅広く執筆している。
(まいどなニュース特約・八幡 康二)

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