日本最古の湯と言われる道後温泉(松山市)の観光スポット「坊っちゃんカラクリ時計」の“音量”が物議を醸している。市は今月、近隣住民からの苦情を受けて音量を下げたが、観光客らからは「聞こえづらくなった」と不満の声が上がっている。板挟みになった市は対応に苦慮している。
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道後温泉の玄関口にある石畳の広場。決まった時間になると、2段の時計塔が3段に伸び、軽妙な音楽とともに夏目漱石の小説「坊っちゃん」にちなんだ人形が踊り出す。この「坊っちゃんカラクリ時計」は道後温泉本館の建設100周年にあたる1994年に市が設置した。伊予鉄道の「道後温泉駅」前にあり、午前8時~午後10時の1時間(土日祝日などは30分)ごとに約5分間作動する。時間になると観光客らが集まる人気スポットだ。
市によると、音量を下げたのは2月6日。1月下旬ごろに近隣住民からあった「音がうるさい」との苦情がきっかけだった。市が音量を調査したところ、電話のベル程度の60~70デシベルで、約10段階のつまみを1段階(約10デシベル)下げたところ苦情はなくなったという。
一方で、市は3年前には地元の観光関係者から「音が小さい」との要望で、音量を1段階上げたという。音量が元に戻った形のため、観光業者に加えて観光客からも「音が他の音にかき消されて聞こえない」との声も聞かれる。28日も多くの観光客が時計前に集まっていたが、周辺は車の往来なども激しく、中には耳をすましているような人もいた。
兵庫県から初めて訪れたという60代の夫婦は「あまり聞こえなかった。昼間なのでもう少し音が大きいほうがいいのでは」と困惑ぎみ。観光関係者によると、市からは事前に説明がなかったといい、地元商店街の店員は「聞こえないなら時計がある意味がない。観光客が楽しめるようにしてほしい」と訴えた。
市の担当者は午前8時の開始を遅らせたり、午後10時の終了時間を早めたりする可能性について「決まっていることなので(鳴らす)時間帯を変えるのはなかなか難しい」とし、「どちらの意見も聞きながら解決策を検討したい」と話した。【広瀬晃子】