小中高校の死亡事故456件、7割が国に未報告…文科省が指針改定で学校の調査対象や方法を明示

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全国の小中高校で、2016年度からの7年間に起きた少なくとも456件の死亡事故のうち、国に報告があったのは3割にとどまり、7割が未報告だったことがわかった。
文部科学省の学校事故対応に関する指針は学校や教育委員会に報告を求めているが、順守されていない。文科省は今年度内にも指針を改定し、事故の報告と調査の徹底を図る。
現行の指針では、児童生徒の死亡事故について、学校はまず教育委員会経由で国に一報する。その後、学校は速やかに事故状況を調べる。学校からの報告を受けた教育委員会は原因究明などの詳細をまとめ、国に報告するとしている。
児童生徒の約95%が加入する日本スポーツ振興センター(東京)の災害共済給付制度により、見舞金などが支払われた小中高校などでの死亡事故を、読売新聞が調べたところ、16~22年度の7年間に少なくとも456件あった。一方、文科省によると、同期間にあった国への報告は141件。このうち詳細な報告が提出されたのは15件だった。
多忙な学校現場では、指針への理解が不十分で、報告漏れの一因となっている。登下校時の交通事故も「学校管理下」とされ、本来は報告対象だが、認識していない学校も多いとみられる。
全国の学校では、校舎からの児童生徒の転落や、校庭のゴールポストが倒れるといった事故が続いている。事故情報を国が正確に集約できないため、事故原因の究明や分析、再発防止策の周知が進んでいない。
改定される指針では、調査対象を明示する。「全ての登下校中を含めた学校の管理下において発生した死亡事故」に加えて、これまで定義が曖昧だった重傷事故について、意識不明や身体機能の喪失といった具体例を示す。
学校は速やかに基本調査を始め、原則として発生から3日以内に教員からの聞き取りを実施する。その後、教育委員会などは詳細調査を行い、再発防止策を検討する。さらに、事故の発生状況、基本・詳細調査の実施状況を把握することを、国の役割と明記。国は蓄積した事故情報を分析し、再発防止に役立てる。文科省は27日に開く有識者会議に、新しい指針を示す。
学校事故に詳しい大阪教育大の藤田大輔教授は「ほかの学校で事故が起きても、危機意識を持たない学校や教育委員会が多い。事故報告を待つ国はこれまで消極的だった。今後は自治体への指導を強化し、全国的な注意喚起につなげていくべきだ」と指摘している。
◆学校事故対応に関する指針=事故の防止や発生後の適切な対応について、学校や教育委員会の役割を定めた指針。文部科学省が2016年3月に定め、全国に通知した。順守されない場合でも、学校や教員に罰則はない。

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