路上に倒れ、求めたのは「ガリガリ君とメロン」 桐島容疑者の最期

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1974~75年の連続企業爆破事件のうちの一つに関与した疑いがあるとして指名手配されていた桐島聡容疑者(70)は死亡する約2週間前、神奈川県藤沢市にある勤務先の工務店前でうずくまっているのを、近所の人に発見されて救急搬送されていた。当時、介抱した人たちは「指名手配中の人物とは全く気づかなかった」と口をそろえた。
【写真】手にジョッキ、メガネをかけ…桐島容疑者とみられる人物
工務店近くに住む50代の夫婦は1月14日午後3時半ごろ、車で帰宅途中、青いジャンパーを着た男性が路上にうつぶせで倒れているのを見つけた。車を道路脇に止めて近づいたところ、男性は自力で体を起こすことができず、近くに嘔吐(おうと)した跡があった。男性は小さくかすれた声で「胃のがんで、うまく言葉が話せないんだ」と言ったという。
「救急車を呼びましょうか」と声を掛ける夫婦に、男性は「近くのスーパーマーケットにどうしても行く」と答えた。夫婦が「この体では無理だ。必要なものは私たちが買ってくる」と説得すると、男性は「ソーダ味のアイスキャンディー『ガリガリ君』とマスクメロン、箱のティッシュ」を求めたという。
妻がスーパーに向かっている間、夫は近くに住む男性会社員(61)とともに両脇を抱え、男性を2階建てアパートの自室に連れて行った。室内は物が散乱して足の踏み場もなく、仕方なく玄関に座らせた。
男性が「もう大丈夫」と話したため、工務店に「男性が倒れていたので家まで運びました」と告げ、夫はその場を離れた。その際、工務店の従業員が男性を「内田さん」と呼んでいるのを聞いたという。
夫は近くで、妻がスーパーから戻るのを待っていたが、慌ただしい様子の工務店従業員らに気づき、再び部屋へ戻った。男性は意識のない状態で、呼びかけにも反応しなかった。男性は約15分後に病院へ救急搬送された。
それから10日ほどたった1月25日、「内田」と呼ばれていた末期がんを患う男性は、入院していた神奈川県鎌倉市の病院で自らを「桐島聡」と名乗った。「最期は本名で死にたい」と話し、4日後の29日に死亡した。
夫婦はそのニュースで、あの時の男性が桐島容疑者らしいと知った。何度か近所を歩く姿は見ていたが、「指名手配の写真とは全く似ておらず、ニュースで知っても、『違うんじゃないか』と思った」と振り返る。
一緒に介抱した会社員の男性も「(手配写真と比べようもないぐらい)やせてしまっていた。それまでも昼間に路上で目が合えばあいさつしていたが、桐島容疑者とは気づくはずもなかった。周囲に溶け込んでいた」と話した。【木下翔太郎】

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