JNTO(日本政府観光局)による2023年11月の外国人観光客数は2,440,800人と発表された。この数字はコロナ禍前の2019年同月とほぼ同じとなり、個人観光再開から1年をかけて堅調に回復したことが分かる。円安の追い風もあり、13市場(韓国、台湾、香港、シンガポール、インドネシア、ベトナム、インド、豪州、米国、カナダ、メキシコ、イタリア、スペイン)においては11月として過去最高を記録している。今後もインバウンド需要拡大と持続に向けて、さまざまな市場においてプロモーションが行われていくだろう。
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旅行を計画する際、情報収集もインターネットが主流となっていることを考えれば、SNSでの個人的な発信もプロモーションに大きな影響を与える。自ら候補地や行程を計画し、実行することが可能な時代となって、情報収集に余念がないだろう。メジャーな観光地や体験だけではなく、自分の嗜好に合った旅行を目的にする外国人観光客も多い。個人旅行のほうがより安く内容をカスタマイズすることができ、費用対効果も高い。街を見渡せば、団体ツアーの外国人観光客は少なくなったように感じる。
そんな中、インバウンド需要に大きく貢献する飲食分野で、日本食ブームの先駆けとも言われるYouTubeチャンネルが話題だ。チャンネル登録者数80万人を超える人気急上昇中ユーチューバー「Momoka Japan」をご存知だろうか。道行く外国人観光客に声をかけ、日本食を振舞って堪能してもらうという内容だ。関西出身で英語が堪能なMomokaさんと、日本を愛する外国人による、楽しい会話や豊かなリアクションが見どころとなっている。
その撮影は、「仕込みなし」「台本なし」「一発撮り」をモットーとするらしい。そのおかげで堅苦しい口調ではなく、友達としゃべっているかのようなシーンが多く収められている。日本語字幕には気さくな関西弁が多用され、まるで目の前にいて一緒に話しているかのよう。実際に視聴者からは「ほんとに自然に笑みがこぼれて嬉しい気持ちになる」「普段外国人と接する機会ないからわからなかったけど、美味しいもの食べて自然と笑った時の顔がかわいい」「全身で美味しさを表現してくれてめっちゃ嬉しい!」など温かいコメントが寄せられている。インタビュイーとのフレンドリーなやり取りとその場で生まれるリアルなリアクションが「Momoka Japan」ならではの魅力だろう。
また、Momokaさんによる日本食の説明や振舞うメニューのチョイスにも定評がある。外国人からの質問に的確に答える知識や、さらに日本を好きになってもらおうとする姿にはおもてなし精神が溢れている。視聴者からも「こうやって日本の良さを伝えていくMomokaさんを尊敬」「日本の料理を押し付けるわけでなく、日本の料理を相手にわかるように説明してみんなに食べてもらって、こちらも幸せな気持ちになります」と日本人にとっても見習うべき視点があるようだ。
再生回数100万回を超える動画が多数ある本チャンネルの中でも、396万回再生とずば抜けた人気を誇る動画が「初来日!初めての日本食に感動!夢中で食べる【絶品ぶりしゃぶ】」だ。本記事ではその内容をご紹介する。
本動画でインタビューを受けたのはイタリア人のジャンパウロさんとマニュエルさん。2人とも初来日で2日目の滞在。まだまだ不慣れかと思いきや「文化も食べ物も全て新鮮で楽しい!」「もうすでにリピート確定」と好反応。親切な店員の対応や綺麗に維持された店内、なにより美味しい日本食が多いなど、日に日に日本が好きになっているそうだ。特に初日に出会った和牛が「信じられないくらい美味しかった」「旨すぎて驚愕したよ」と言葉を噛みしめていた。
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そこで今回は和牛料理のレパートリーを増やし、締めにはぶりしゃぶを堪能する贅沢なコースが振舞われた。訪れたのは新宿駅西口から徒歩5分の「WA‐DINNER き」。ゆったりとした席とテーブル、暗めの照明が寛ぐのに心地よい。
早速話題になったのは文化の違いについて。2人は日本を「未来と過去が混じった不思議な国」と表現する。「東京は発展していてキラキラしている」のに対して、「電車の中が静かで落ち着けること」「接客技術がプロフェッショナルで自国とレベルが違う」など、現代の風景の中に残っている日本の文化、調和している伝統に感動したようだ。ヨーロッパや米国で共通して見られるようなラテン由来の文化には関わりが薄い日本は、新しさに満ち溢れているのだろう。この後京都と大阪も訪れるとのことで、未来と過去だけでなく、地域ごとの文化を色濃く感じる体験を楽しみにしているようだ。
最初に運ばれてきたのは馬のユッケ。イタリアでも馬肉を食べる文化はあるが、生の状態で食べるのは初めてだそうで、興味津々に写真を撮る。Momokaさんが、見た目の似ているフランスのタルタルとの違いを前置きし、ユッケの味と食感を楽しんでもらった。口に合ったかはさておき、深く味わってくれたことが2人の表情から伝わる。
次に運ばれてきたのは2人が大好きな和牛、常陸牛の炙り寿司だ。大きな器に均等に並べられ、綺麗にドレッシングされた寿司には「Amazing!」の一言。意外にも和牛寿司は初めてだそうで、期待を寄せながら一口で頬張り、食べっぷりが気持ち良い。「ン~」と感嘆しつつも、途中言葉を失うほど感動しており、目を細めながら寿司を味わっていた。その姿には視聴者からも「食べた直後に話し始めるんじゃなくてめっちゃ味わって噛み締めた後にコメントする2人が好きすぎる」「味に集中してリアクション静かになるタイプで、逆にそれほどの美味しさだというのが伝わって来るw」と感心の声が寄せられていた。そんな2人が「イタリア人は食に厳しいけど率直に言っても日本食とイタリア食が世界の頂点だと思う」と太鼓判を押してくれた。改めて日本食はすごいなと実感した視聴者も多いようだ。
締めには本動画の目玉であるブリのしゃぶしゃぶが登場。野菜の上に山並みに盛り付けられたブリの刺身。脂が転じてブリと言われたとおり、ボリュームがあり血合いのきれいなピンク色は食欲をそそる。様々な角度から熱心に写真を撮る2人の気持ちが分かる美しい艶感だ。刺身と言えば、母国イタリアでも前菜「カルパッチョ」が知られているが、もともとは生肉の料理だった。実は魚介を使うようになったのは日本が発祥で、寿司や刺身に馴染みのある日本人向けに作ったことが由来だ。今では世界的に刺身の人気が出たこともあり、イタリアでも魚介のカルパッチョが親しまれている。
親和性の高い日本料理とイタリア料理だが、しゃぶしゃぶのように茹でるだけの調理法はイタリア人には馴染みがないのだそう。2人とも食べるのを楽しみにしていた。Momokaさん主導で野菜から調理し始め、頃合いを見てブリを茹でて振舞う。一口食べると、「口の中で溶けるね。脳に美味しさが染み渡る」と頭まで昇ったことをジェスチャーを交えて表現。続く相方とは目を見合わせて「いや、まじで」「涙が出てきました(笑)」と共感し合っていた。旨みが引き立つゆずポン酢に、塩分控えめの出汁、素材に手を加えすぎない日本料理の技術と美味しさは改めて素晴らしいと思わせてくれる。豆腐、きのこ、白菜など日本の家庭的な食材も一つずつ味わっていて、素材そのものの美味しさを感じてくれているようだ。すっかり出汁の虜になった2人の様子には「イタリア人の舌の確かさが分かる」「日本とイタリアって食文化が似ていて、味の好みも合いやすいから受け入れられるのかな」など考察が展開されていた。
序盤で日本について「未来と過去の国」と言っていたが、今回のように食だけにフォーカスしても、伝統を守り続けながら温故知新の精神で現代に受け継がれてきた料理の数々が登場した。さらに刺身がカルパッチョに取り入れられたように、異国の地で日本食の評判が高まって影響を与えることもあるほどに、日本食の存在感は大きい。一方で、2人の母国ではビーガンやベジタリアンも多く、それらに対応したメニューは日本にはまだ少ないため、外国のトレンドに寄り添った選択肢を加えてほしいという意見もあるそうだ。