『別冊 おとなの週刊現代 「血圧」と「血管」の新しい知識』では多くの人が悩みを抱える「血圧」や「血管」にまつわるさまざまな情報を紹介しているだけではない。「診断ミス」や「処方箋間違い」の実態と、「本当に頼りになる医者」の見つけ方を解説した記事も収録されている。『寿命を縮めないために知っておきたい病院の「基礎知識」 医者によって診断が違う理由、出すクスリが違う理由』を特別公開する。
「当直や土日の診療時間の終わりがけにくる患者に対してミスが出ることはよくあります」
こう語るのは、きよすクリニック院長の伊藤喜亮氏だ。
「医師も人間ですから、気持ちが『帰りたいモード』になっていることがあります。
『1週間ほど調子が悪かった』などと患者にいわれると、なぜこのタイミングでくるんだという思いがよぎることもある。そうすると『さっさと終わらせてしまおう』と、検査を次回に後回しにする医師も出てくる」
そうやって適当にあしらわれた患者が、後日、別の病院にかかって、別の病名をつけられるのはよくあること。診断ミスを避けたいならば、できれば土日や診療時間の終了間際にクリニックに行くのは避けたほうがよさそうだ。
医者も人間だから、ミスは避けられない。特に、「思い込み」には注意したほうがいい。兵庫県の神経内科医が語る。
「先日、私のところにリウマチがある女性がやってきました。これまでも身体のあちこちが痛いといっていたのですが、その日も『右手が痛い』『しびれる感じがする』と訴えました。
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私は彼女の話から、今回もリウマチではないかと考えたのですが、『いつものリウマチの痛みとは違う』『脳を調べてくれないか』といわれました。念のため、頭部CTを撮ったところ、小さな脳出血が見つかったのです。その女性は緊急入院して、治療を受けることができました」
この医師は、女性はリウマチの症状があると思い込んでいたため、まっさらな状態で診断を下すことができなかった。
「いろいろな病気をかかえている患者さんほど、誤診されやすいと思います。新しい疾患が出てきても、これまでの病気の影響だと医師が思い込んでしまうのです。
ですから、そういう患者さんは普段とは違う痛みや症状が出ていると感じたら、そのことを強く訴えたほうがいい。しつこいくらいに『いつもと違うんです』とくり返せば、診断ミスは避けられます」(神経内科医)
たとえば、脊柱管狭窄症や頸椎症などを患っている人が「首や背中が痛い」といっていつもの整形外科にいけば、当然のように整形外科系の病名がつけられるだろう。脳のCTまで撮ってくれる整形外科のクリニックなど、まずないからだ。
では、いろいろな診療科がある総合病院にかかれば安心かといえば、そうとも限らない。内科医の名取宏氏が語る。
「とくに人口の少ない地方都市にいくと、総合病院と名乗っていても、人手不足で『一人医長』がすべてこなすようなところは多い。
一つの科に3~4人いるとミスは起こりにくいし、ミスが起こったときも誤魔化そうとはならないのですが、それが一人しかいないとなると、何が起きているか外からは見えないのです」
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コロナ禍をきっかけに日雇いのアルバイトで稼ぐ医師が増えたのも問題だ。麻酔科医の筒井冨美氏が語る。
「予防接種や発熱外来における医師の需要が増えたことで、派遣業が拡大しました。
『胸に聴診器を当てるだけの仕事です。明日、赤坂の〇×病院で検診に来られる方は……』というような連絡が来て、それに応じるだけで数万円の日給がもらえてしまう。
普通に考えれば、こんなふうに集められた医師が、正しい診断を下せるわけがありません」
病院にいけば、必ず正しい診断を受けられるというのは、甘すぎる幻想のようだ。
クリニックを替えるといつもの病気でも違う薬を処方される。そんな経験をして首を傾げたことのある人も多いだろう。
なぜ、そのような事態が生じるのか。ナビタスクリニックの谷本哲也氏が解説する。
「薬の処方に関しては、大まかなガイドラインがあります。しかし、ガイドラインというのは、標準的な患者を想定して作られているものですので、たとえるなら白いMサイズのTシャツみたいなものです。
6割くらいの患者はそれでいいかもしれませんが、SやLが合う人もいれば、他の色や柄が必要な人もいる。ですから、医者は患者ごとの診察や検査結果で、薬の出し方を変えています」
どのように処方を調整するのか。
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「まずは病気の種類、重症度、経過でしょう。糖尿病と一口にいっても、1型、2型、薬の副作用によるものなどさまざまです。重症度も糖質を控えるだけでいい人もいれば、命にかかわるケースもある。
加えて、患者の年齢、体質、既往症などでも判断します。たとえば肝臓や腎臓が悪ければ、薬の量を調整します」
降圧剤など、多くの製薬会社が似たような薬を出している場合は、医師のコネや好みが反映されることもある。
たとえば、出身大学の研究室で使われていた薬がスタンダードになっていて、それを使い続けるということはよくある。使ったことがない薬よりも、経験がある薬を優先しがちだからだ。
「白血病の治療などでも、東大グループ、九大グループのような学閥で治療方針が異なることもあります。当然、使用する薬も変わってきます」
医者が患者のことを総合的に判断して、うまく処方してくれているのであれば、なんの問題もないが、なかには別の理由で処方をしている医者もいる。前出の名取医師が語る。
「風邪の患者に抗生物質の薬を出すような、薬がやたらと多い医者は要注意ですね。なかには薬をたくさん欲しがる患者さんがいて、薬を出さないと『あそこはヤブ医者だ』などといわれるので、患者サービスのつもりでホイホイ出してしまう。
しかし、本当に患者のことを思っているならば、薬の数は最低限にとどめるはずです」
とくに高齢になると、さまざまな症状が出てくるので、それぞれに処方をしているとどうしても多剤併用になりがちだ。
「医者は患者から『ちょっと痛い』『だるい』『イライラする』と訴えられても、毎回細かく検査ばかりできないし、異常がないことも多い。そこで、それぞれの症状に薬を出すと、どうしても数が増えていく。
注意しておかないと、薬の併用で副作用が強く出ることもあるので、危ないですね」(前出の谷本氏)
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クリニックによっては、新しい治療薬があると薦められることもあるだろう。だからといって医師が勉強熱心で、最新の治療法に通じていると信じ込むのはよしたほうがいい。谷本氏が語る。
「私自身は、新薬にはあまり飛びつかないようにしています。日々、新しい薬が出てきますが、どうしても製薬会社のカネ儲け的な側面があるし、薬価も高い。
なかには本当に新薬が必要な人もいますが、古い薬で十分なケースもけっこう多いのです。まだ報告されていないだけで、未知の副作用もあるかもしれないので、新薬は注意して使う必要があります」
医者が変われば、処方箋もさまざま。自分の主治医は本当に健康を考えて薬を出してくれているか。いま一度、お薬手帳を見直したい。
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『貧血と診断されたが実は「胃がん」だった…痛み止めだけ処方され「そのまま死亡」…医者の「診療ミス」で酷い目に遭った人たちの悲劇』に続く…