女児の「わたしは死ねばいいのに」に赤丸をつけた教師…両親が明かした「学校のあまりに酷すぎる対応」

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「娘が思い詰めて書いたことに対して、花丸がつけられた意味がわかりません。記された『You can do it!!』は『やればできる』という意味。ノートを見た瞬間怒りが湧(わ)いてきました」
そう語るのは、学校でいじめ被害を受けた奈良県奈良市内の小学校に通う5年生女児Aさん(11)の両親だ。
Aさんは学校から適切な対応をしてもらえず、思い悩んで自学ノート(教師との交換ノート)に「かなしかった」「わたしは死ねばいいのに」と記入。そこに担任の女性教師が花丸をつけたうえ、「You can do it!!」と記したのだ(上の写真)。昨年12月に、奈良市教育委員会が調査報告書を公表し大問題となった。
事の発端は’21年にさかのぼる。当時3年生のAさんが、同じクラスのB君からいじめを受け始めたのだ(以下、ことわりのない発言はAさんの両親)。
「娘が『B君からこんなことをされた』と被害を訴えるようになり、その回数が増えていきました」
AさんがB君から受けたいじめは、調査で判明しただけで11件にのぼる。手を捻り突き飛ばす、鉛筆で背中を突くという身体的な暴力に加え、「覚えとけよ」などの暴言もかけられた。そうした状況で’22年2月、足を蹴られる事件が起きる。
「娘が教室の後ろへランドセルを取りに行く際、B君が娘の右足を蹴ったのです。蹴られたスネは青くアザになっていたため、病院で診断書を取りました。酷(ひど)いのは学校の対応です。目撃者がいるので校長に調査を頼んでも『B君が蹴ったことを否定している。学校は警察じゃない』と逃げ腰でした。仕方なく奈良西警察署に被害届を出すとB君のいじめが認定され、警察は児童相談所に通告しました」
しかし、B君の態度は変わらず学校もいじめを認定しない。「学校へ行きたくない」と言い出したAさんの自学ノートに、花丸がついたのは直後のことだった。
「担任の女性C先生は指導が厳しく、娘にどなり散らすこともありました。B君の件も重なり娘はその年の6月、自学ノートに『わたしは死ねばいいのに』と書いたんです。C先生はそのノートに花丸をつけ、英語で『やればできる』と記入。C先生は、学校に『Aさんに頼まれたから書いた』と言いわけをしたそうです。しかし、娘はそんなことを頼んでいない。仮に頼まれたとしても書いて良いものとは到底思えません(C先生は2学期が始まる前に体調不良を理由に休職する)」
その後も学校の非情な対応は続く。
「校長に娘へのいじめについて、どう考えているのか質問したことがあります。帰ってきた答えは『ノーコメント』。これでは埒(らち)が明かないと弁護士に依頼すると、学校はようやく11月にいじめの『重大事態』として認定したんです。しかし、いまだに学校から正式な謝罪はありません。娘は食欲が落ち夜中に飛び起きるようになり、心的外傷後ストレス障害と診断された。そのせいで’23年1月から、2ヵ月近く学校を休まざるを得なくなりました。学校は誤った対応を正してほしい。そうしないと、5年生になった現在も症状が不安定な娘は安心して登校できません」
小学校と奈良市教育委員会はFRIDAYの取材に対し、「いじめを受けた児童と保護者に多大な精神的苦痛を与える結果となったことを重く捉えている」とし、再発防止に向けていじめを起こさない、見逃さない学校組織の見直しを行うと答えた。
Aさんの代理人を務めた、いじめ問題に詳しい三橋和史弁護士が指摘する。
「Aさんがいじめを受け続けていた当時、学校はいじめを認めず被害児童として見ていなかった。本来なら心理的にダメージを受けている状態なのでフォローが必要なのに、学校の対応には悪質性があります。現場の教師や教育長の多くがいじめ防止に関する法律や方針の中身を知らないため、教育現場で起きたトラブルへ適切に対応できていないんです」
Aさんの心を踏みにじるような学校側の態度に、両親が憤(いきどお)るのも当然だろう。
『FRIDAY』2024年2月2・9日号より
取材・文:形山昌由(ジャーナリスト)

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