【政治解説】岸田首相と麻生副総裁 派閥解散めぐり関係に溝… 政治と金の問題に有効策は? 2024年1月世論調査解説

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“政治と金”をめぐる問題で、自民党、そして岸田内閣に対しては国民から厳しい目が向けられています。さらに、派閥の解散を打ち出した岸田首相に対して、麻生副総裁は「違反者がいないのに派閥を解散するのは理屈が立たない」という考えで2人の間には溝が生じています。この問題は今後、どのような展開をみせるのでしょう。そして、岸田首相と麻生副総裁の関係は・・・。日本テレビ政治部の竹内デスクと菅原解説委員の同期コンビが解説します。

■「落ちるところまで落ちてしまった」支持率低迷続く岸田政権 【竹内】内閣支持率は24%で、岸田政権発足以来、最低タイ。去年11月と同じ数字でした。もう一つ。注目は、“青木の法則”です。【菅原】青木元官房長官が提唱していた、内閣支持率と政党支持率を足して50%を切ると、もうその政権はもたないということですね。【竹内】これまではギリギリ50%を超えていましたが、今回、自民党支持率は25%でしたので、合わせて49%。50%を切ってしまいました。【菅原】“青木の法則”通りであれば、もうもたないということですね。【竹内】政権中枢ですら「もう今となっては政権浮揚は難しい。打つ手は見当たらない」と、深刻に語っています。首相に近い議員も「落ちるところまで落ちてしまった」と。【菅原】低迷の原因は“政治とカネ”の問題だと思いますが、特にどこに批判が集まっているのでしょう。【竹内】世論調査をみると、「自民党の派閥の幹部が一連の問題についてちゃんと説明していると思うか」という質問に、「説明していない」と答えた人は92%にのぼっていました。一方で、岸田派が解散を表明したことについては、「評価する」が60%ありました。首相の側近は、「解散表明がなかったら、(内閣支持率は)間違いなく20%台を切って、10%台になっていただろう」と分析しています。■「巻き込まれ事故だ」岸田首相と麻生副総裁の“溝”【菅原】岸田派の解散表明を受けて、安倍派と二階派も派閥を解散しました。ただ、麻生派と茂木派については今のところ否定的な立場です。【竹内】日本テレビの取材では、麻生副総裁は岸田首相に「麻生派は解散をしない」と伝えたということです。麻生派の所属議員は刑事事件として立件されたり、捜査を受けたりしているわけではなく、麻生副総裁からすれば、「派閥には若手議員の教育という、いい面もある」と考えているからです。茂木派も基本的には同じような考えです。【菅原】岸田首相は麻生副総裁、茂木幹事長に支えられて政権運営をしてるわけですから、強く派閥解消を求めるのは難しいですよね。【竹内】そうですね。麻生派の中にも、茂木派の中にもこういうことを言う人がいます。「うちは悪いことをしていない」「巻き込まれ事故だ」と。「総理のやっていること(派閥解散)は、世論に迎合的過ぎる」とまでいう議員もいます。一方で、麻生副総裁は、最後は総理に従うのでないかという見方もあります。第2次安倍政権で麻生副総裁は長く副総理をつとめていたわけですが、安倍元首相と意見が異なることも何回かありました。消費増税の見送りだったり、軽減税率の導入であったり。それでも最後は、当時の安倍首相の判断に従ってきました。また、首相経験者でもあるので、岸田首相と事を荒立てるようなことはしないのではないかという見方もあります。ただ、今回の件では、岸田首相が派閥の解散を打ち出す前に、麻生副総裁に相談がなかったことに不満もあるようです。麻生副総裁に近い自民党幹部は、「こういう大事な時に一言もないのは、これまで支えてきたのにちょっとひどい」と言っています。■岸田政権はいつまで続く?【菅原】ところで、岸田政権は今後どのぐらい続くと見てますか。【竹内】正直、厳しいのは間違いありません。ただ、国会が始まり、能登半島地震の手当てをする予算も盛り込まれた、いわゆる予算案が提出されて審議が始まります。これはすごく大事な政治の仕事なので、途中で投げ出して辞めるということはちょっと考えにくいですし、そういう大事な仕事の最中に自民党の中で岸田首相を何が何でも引きずり降ろそうという動きは、なかなか起きないのでないかと思います。【菅原】ただ、予算委員会などでは相当厳しく追及されますよね。【竹内】それは絶対に避けられないと思います。野党の幹部も、自民党に対して「責任を全然果たしていない」と話し、追及しようと腕をまくって、ぐるぐる回しているというような状況です。1月29日には“政治とカネ”の問題をめぐって集中審議も行われることになっています。予算が成立するまでは国会で常に野党から追及されることになると思います。■“政治と金” 今後の論点【菅原】論戦のポイントはどこになりますか。【竹内】一つポイントを挙げるとすると、私はやはり「政治資金収支報告書を正しく記載していない」という問題につきると思います。政治資金は、基本的には無税になるわけです。だからこそ、どういう風に使っているかということをきちんと透明化して国民が見えるようにしておくということが大事です。ところが今回は、収入にちゃんと書かなければいけなかったものを書かずに、いわば裏金化して、国民から見えなくしていたわけです。【菅原】政治資金の中には政党交付金、つまり税金も入っているわけですから、透明化は本当に求められるところですよね。【竹内】これはやはり自民党、そして自民党を代表する立場の首相が、きちんと説明しなければならないと思います。■“よその派閥に口出ししない” 自民党の”文化”【菅原】岸田派は3年間でおよそ2500万、収支報告書に正しく記載していなかった。ここについて岸田首相は、会長だったわけですから、首相自身が説明できると思います。一方で、もっと額の大きい安倍派など、よその派閥の問題については、国会で答弁するのは厳しくはないですか。【竹内】そうなんです。自民党は、“よその派閥のことに口出ししない”という、“文化”があります。だから岸田首相から安倍派に“お願いする”ことはできても、強制して“やらせる”ところまではなかなか厳しいと思います。けれど、やはり我々国民からすれば、安倍派の幹部には説明を求めて欲しい。安倍派の幹部は「責任は感じている」など、“おわび”はしていますが、なぜこのようなことが始まったのか、理由は説明していません。かなり長い年月にわたってやってきたようで、その間、安倍元首相は「こんなことはやめよう」といったようですが、それ以外の議員たちは、なぜ、誰も止めようと思わなかったのか。やはりきちんと説明を聞きたいと思います。【菅原】野党などは、国会への参考人招致や、証人喚問を求めてくると思います。それにどう答えるのかというところで、一種、姿勢が見えるというふうに思います。【竹内】安倍派の幹部は閣僚を辞めていますから、出席しないと審議が進まないということはないですけれども、では国会に出なければ説明をしなくても良いのかというと、違うと思います。自ら説明することだって、もちろんできるわけです。やはり問題の経緯や、何に金を使っていたのかは、きちんと説明してほしいです。【菅原】ここまで国民の信頼が地に落ちた状態にあっては、自民党の自浄作用というか「自分たちで生まれ変われるぞ」という姿勢をいかに示せるかは大事になってくるかと思います。■自民党・政治刷新本部 75%が「期待しない」【竹内】本当にそうなんです。今回の世論調査では、「政治刷新本部には期待しない」という声が75%でした。ただ、少なくとも「収支報告書に正しく書かないといけない」という方向には向くべきと思います。今回の件でも、会計責任者の秘書などばかりが立件され、厳しく責任を問われています。これでは「あれ?議員本人は“お咎めなし”なの?」と見えてしまいますよね。今の法律では、議員から積極的な指示や承認、つまり「共謀」があったと認められないと、会計責任者(ほとんどの場合は秘書)の責任となってしまいます。やはり会計責任者だけではなく、議員本人の責任も問えるようにすべきです。そうなれば、議員も「ちゃんとやらなきゃ」となると思います。自民党の幹部からでさえ、「議員にも責任が及ぶようにしないといけない」という声が上がっています。現職の閣僚も「秘書に任せてお咎めなしというのは、誰がどう考えてもおかしい」。総理の側近も、「収支報告書で違反があったときに、罰則を議員にも適用しないといけない」と言っています。こういう改革が必要だということは皆わかっているわけです。私は首相をはじめ、自民党がこれをきちんと実行できるかどうか、ここにかかっていると思います。■“派閥”の解消 効果は?【菅原】もう一つ、“派閥の解消”というのも、ある意味わかりやすいワードと思います。【竹内】“派閥の解消”は全く効果が無いとはいいません。一つの手だと思います。派閥があるからこそ、パーティーをやって、所属議員にお金を配って、ということが発生します。それこそ、「ちょっとずるいことしてやろう」という動機が生まれるケースもあると思います。だから、“派閥自体を無くしてしまう”ということは、もちろん一つの考えだと思います。ただ、麻生派も茂木派も解散しない方向です。とすると、「本当に実効性があるのか」という指摘は出続けるでしょう。また、たとえ派閥がなくなったとしても収支報告書を正しく報告しなかったら、意味はありません。まずは、やはり収支報告書というものを、国民の目の前に正しく出すということが必要になると思います。“政治と金”の問題で、議員本人が責任をとらないという構図はずっと続いてきました。岸田首相は今、大ピンチなわけですが、この問題にきちんと対応し、議員自身の責任も問われるようにして、その結果、国民に“政治と金”のあり方が透明に見えるようになれば、大きな成果になると思います。岸田首相には、ぜひ覚悟をもってやり遂げてほしいと思います。(日本テレビ報道局デスク 竹内真 報道局解説委員 菅原薫)■NNN・読売新聞世論調査(1月19日から21日 全国有権者に電話調査)固定電話426人 回答率59%携帯電話648人 回答率41%合計1074人が回答
“政治と金”をめぐる問題で、自民党、そして岸田内閣に対しては国民から厳しい目が向けられています。さらに、派閥の解散を打ち出した岸田首相に対して、麻生副総裁は「違反者がいないのに派閥を解散するのは理屈が立たない」という考えで2人の間には溝が生じています。この問題は今後、どのような展開をみせるのでしょう。そして、岸田首相と麻生副総裁の関係は・・・。日本テレビ政治部の竹内デスクと菅原解説委員の同期コンビが解説します。
【竹内】内閣支持率は24%で、岸田政権発足以来、最低タイ。去年11月と同じ数字でした。もう一つ。注目は、“青木の法則”です。【菅原】青木元官房長官が提唱していた、内閣支持率と政党支持率を足して50%を切ると、もうその政権はもたないということですね。【竹内】これまではギリギリ50%を超えていましたが、今回、自民党支持率は25%でしたので、合わせて49%。50%を切ってしまいました。【菅原】“青木の法則”通りであれば、もうもたないということですね。【竹内】政権中枢ですら「もう今となっては政権浮揚は難しい。打つ手は見当たらない」と、深刻に語っています。首相に近い議員も「落ちるところまで落ちてしまった」と。【菅原】低迷の原因は“政治とカネ”の問題だと思いますが、特にどこに批判が集まっているのでしょう。【竹内】世論調査をみると、「自民党の派閥の幹部が一連の問題についてちゃんと説明していると思うか」という質問に、「説明していない」と答えた人は92%にのぼっていました。一方で、岸田派が解散を表明したことについては、「評価する」が60%ありました。首相の側近は、「解散表明がなかったら、(内閣支持率は)間違いなく20%台を切って、10%台になっていただろう」と分析しています。
【菅原】岸田派の解散表明を受けて、安倍派と二階派も派閥を解散しました。ただ、麻生派と茂木派については今のところ否定的な立場です。【竹内】日本テレビの取材では、麻生副総裁は岸田首相に「麻生派は解散をしない」と伝えたということです。麻生派の所属議員は刑事事件として立件されたり、捜査を受けたりしているわけではなく、麻生副総裁からすれば、「派閥には若手議員の教育という、いい面もある」と考えているからです。茂木派も基本的には同じような考えです。【菅原】岸田首相は麻生副総裁、茂木幹事長に支えられて政権運営をしてるわけですから、強く派閥解消を求めるのは難しいですよね。【竹内】そうですね。麻生派の中にも、茂木派の中にもこういうことを言う人がいます。「うちは悪いことをしていない」「巻き込まれ事故だ」と。「総理のやっていること(派閥解散)は、世論に迎合的過ぎる」とまでいう議員もいます。一方で、麻生副総裁は、最後は総理に従うのでないかという見方もあります。第2次安倍政権で麻生副総裁は長く副総理をつとめていたわけですが、安倍元首相と意見が異なることも何回かありました。消費増税の見送りだったり、軽減税率の導入であったり。それでも最後は、当時の安倍首相の判断に従ってきました。また、首相経験者でもあるので、岸田首相と事を荒立てるようなことはしないのではないかという見方もあります。ただ、今回の件では、岸田首相が派閥の解散を打ち出す前に、麻生副総裁に相談がなかったことに不満もあるようです。麻生副総裁に近い自民党幹部は、「こういう大事な時に一言もないのは、これまで支えてきたのにちょっとひどい」と言っています。
【菅原】ところで、岸田政権は今後どのぐらい続くと見てますか。【竹内】正直、厳しいのは間違いありません。ただ、国会が始まり、能登半島地震の手当てをする予算も盛り込まれた、いわゆる予算案が提出されて審議が始まります。これはすごく大事な政治の仕事なので、途中で投げ出して辞めるということはちょっと考えにくいですし、そういう大事な仕事の最中に自民党の中で岸田首相を何が何でも引きずり降ろそうという動きは、なかなか起きないのでないかと思います。【菅原】ただ、予算委員会などでは相当厳しく追及されますよね。【竹内】それは絶対に避けられないと思います。野党の幹部も、自民党に対して「責任を全然果たしていない」と話し、追及しようと腕をまくって、ぐるぐる回しているというような状況です。1月29日には“政治とカネ”の問題をめぐって集中審議も行われることになっています。予算が成立するまでは国会で常に野党から追及されることになると思います。
【菅原】論戦のポイントはどこになりますか。【竹内】一つポイントを挙げるとすると、私はやはり「政治資金収支報告書を正しく記載していない」という問題につきると思います。政治資金は、基本的には無税になるわけです。だからこそ、どういう風に使っているかということをきちんと透明化して国民が見えるようにしておくということが大事です。ところが今回は、収入にちゃんと書かなければいけなかったものを書かずに、いわば裏金化して、国民から見えなくしていたわけです。【菅原】政治資金の中には政党交付金、つまり税金も入っているわけですから、透明化は本当に求められるところですよね。【竹内】これはやはり自民党、そして自民党を代表する立場の首相が、きちんと説明しなければならないと思います。
【菅原】岸田派は3年間でおよそ2500万、収支報告書に正しく記載していなかった。ここについて岸田首相は、会長だったわけですから、首相自身が説明できると思います。一方で、もっと額の大きい安倍派など、よその派閥の問題については、国会で答弁するのは厳しくはないですか。【竹内】そうなんです。自民党は、“よその派閥のことに口出ししない”という、“文化”があります。だから岸田首相から安倍派に“お願いする”ことはできても、強制して“やらせる”ところまではなかなか厳しいと思います。けれど、やはり我々国民からすれば、安倍派の幹部には説明を求めて欲しい。安倍派の幹部は「責任は感じている」など、“おわび”はしていますが、なぜこのようなことが始まったのか、理由は説明していません。かなり長い年月にわたってやってきたようで、その間、安倍元首相は「こんなことはやめよう」といったようですが、それ以外の議員たちは、なぜ、誰も止めようと思わなかったのか。やはりきちんと説明を聞きたいと思います。【菅原】野党などは、国会への参考人招致や、証人喚問を求めてくると思います。それにどう答えるのかというところで、一種、姿勢が見えるというふうに思います。【竹内】安倍派の幹部は閣僚を辞めていますから、出席しないと審議が進まないということはないですけれども、では国会に出なければ説明をしなくても良いのかというと、違うと思います。自ら説明することだって、もちろんできるわけです。やはり問題の経緯や、何に金を使っていたのかは、きちんと説明してほしいです。【菅原】ここまで国民の信頼が地に落ちた状態にあっては、自民党の自浄作用というか「自分たちで生まれ変われるぞ」という姿勢をいかに示せるかは大事になってくるかと思います。
【竹内】本当にそうなんです。今回の世論調査では、「政治刷新本部には期待しない」という声が75%でした。ただ、少なくとも「収支報告書に正しく書かないといけない」という方向には向くべきと思います。今回の件でも、会計責任者の秘書などばかりが立件され、厳しく責任を問われています。これでは「あれ?議員本人は“お咎めなし”なの?」と見えてしまいますよね。今の法律では、議員から積極的な指示や承認、つまり「共謀」があったと認められないと、会計責任者(ほとんどの場合は秘書)の責任となってしまいます。やはり会計責任者だけではなく、議員本人の責任も問えるようにすべきです。そうなれば、議員も「ちゃんとやらなきゃ」となると思います。自民党の幹部からでさえ、「議員にも責任が及ぶようにしないといけない」という声が上がっています。現職の閣僚も「秘書に任せてお咎めなしというのは、誰がどう考えてもおかしい」。総理の側近も、「収支報告書で違反があったときに、罰則を議員にも適用しないといけない」と言っています。こういう改革が必要だということは皆わかっているわけです。私は首相をはじめ、自民党がこれをきちんと実行できるかどうか、ここにかかっていると思います。
【菅原】もう一つ、“派閥の解消”というのも、ある意味わかりやすいワードと思います。【竹内】“派閥の解消”は全く効果が無いとはいいません。一つの手だと思います。派閥があるからこそ、パーティーをやって、所属議員にお金を配って、ということが発生します。それこそ、「ちょっとずるいことしてやろう」という動機が生まれるケースもあると思います。だから、“派閥自体を無くしてしまう”ということは、もちろん一つの考えだと思います。ただ、麻生派も茂木派も解散しない方向です。とすると、「本当に実効性があるのか」という指摘は出続けるでしょう。また、たとえ派閥がなくなったとしても収支報告書を正しく報告しなかったら、意味はありません。まずは、やはり収支報告書というものを、国民の目の前に正しく出すということが必要になると思います。
“政治と金”の問題で、議員本人が責任をとらないという構図はずっと続いてきました。岸田首相は今、大ピンチなわけですが、この問題にきちんと対応し、議員自身の責任も問われるようにして、その結果、国民に“政治と金”のあり方が透明に見えるようになれば、大きな成果になると思います。岸田首相には、ぜひ覚悟をもってやり遂げてほしいと思います。
(日本テレビ報道局デスク 竹内真 報道局解説委員 菅原薫)

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