「ED患者3600万人」「セックスレス夫婦7割」時代の到来 25年ぶりの全国調査で明らかになった「性欲を全く感じない」20代男子“急増”の意外な背景

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日本人男性の半数が「ED(勃起不全・勃起障害)の可能性がある」――と聞けば、どう思うだろうか。「いや、俺の場合は最近、ちょっと仕事が忙しいだけで……」や「単に年のせいだろう」などの声が返ってきそうだが、実際はどうか。今年、25年ぶりとなる大規模調査を実施した専門家が「日本に広がる驚きのED実態」を語った。
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【写真】大規模調査で判明! ED有病者「1400万人」、セックスレス「20代前半で7割超」の衝撃データを公開 EDとは「満足な性行為を行うのに十分な勃起が得られないか、または維持できない状態が持続または再発すること」(ED診療ガイドライン[第3版])と定義されている。

日本性機能学会が今年5月から約1カ月をかけて、1998年以来となる「性機能障害の全国実態調査」を実施し、その結果を9月に学会で発表した。すると、その衝撃の内容に専門家の間からも驚きの声が上がったという。新たな“国民病” 今回の調査委員長であり、順天堂大学浦安病院泌尿器科教授の辻村晃氏がこう話す。「近年、EDは動脈硬化の症状の一つと捉えられるようになっており、高齢化の進む日本でED患者は増加しているとの見立てのもと調査を始めましたが、結果は想像以上でした。結論から言えば、ED患者は日本国内で約1400万人と推計されただけでなく、評価基準を変えて検証すると3600万人を超えることが明らかになった。日本の男性人口は約6000万人ですから、実に半数以上がEDの可能性があることになります」「セックスレス夫婦」7割の衝撃 25年前の調査では、日本のED患者は約1130万人(成人男性の約20%)と推計され、今回はさらに300万人弱増えたことになる。ちなみに98年はED治療薬として話題を集めた「バイアグラ」の発売前年にあたり、当時はまだEDが「疾病」と認められていなかったことから、それ以前のED関連の調査はないという。 辻村氏が続ける。「ED患者が増えただけでなく、セックスレスの割合も今回、70%にまで跳ね上がりました。前回調査の対象年齢は30~79歳でしたが、今回は20代も対象に含め、これまで実態が明らかでなかった若年層のEDについても初めて調査した。すると20代前半でも2割超が『性欲を全く感じない』と回答するなど、予想外の結果が得られたのです」 辻村氏が主導した今回の調査では、全国の20~79歳の男性3万7485人を対象とし、インターネットを介して6228人から回答を得た(回答率16.6%)。 その結果を詳しく見ていくと、興味深い事実がいくつも確認できたという。ED推計人口「3658万人」「対象者のうち『自分がEDであると思う』と回答したのは全体の13.0%と、日本の男性人口で換算すると590万人になります。しかしEDの場合、自覚のない人も少なくないため、潜在患者数を把握するべく『SHIM』と呼ばれる重症度を判定する勃起機能問診票を用いて有病率を算出しました」(辻村氏) すると、「重症ED」との判定が52.8%、「中等度ED」が12.9%、「軽度~中等度ED」5.4%、「軽度ED」9.9%の結果となった(「EDでない」は19.0%)。つまり81.0%がEDと推計され、人口換算では3658万人に達することになる。またEHSと呼ばれる別の指標で評価すると、『(勃起障害などから)性交ができない』に定義されるグレード2以下の対象者は30.9%となり、同じく人口換算で1400万人にのぼったという。「夫婦間のセックスレス(『性交頻度が1カ月間に1回未満』と定義)についても質問したところ、全体の70.4%が“セックスレス”と回答しました。年齢が上がるにつれ、その割合は増加傾向にあった一方で、20~24歳でも40%台後半の高い数値を示した。もともと日本人男性は世界的に見ても“性に対して積極的でない”と評価されており、たとえば1年間の性交回数で見ると、世界トップのギリシャ〈168日〉に対し、日本は〈48日〉というデータもあります」(辻村氏) さらに「性欲をほとんど、または全く感じない」と回答した対象者は全体の28.5%を占め、20~24歳でも20%超と高い数字だった。一体、なぜなのか。SNSが及ぼす影響 一般に、EDになる原因として「器質性」「心因性」「薬剤性」「混合型」の4つが挙げられる。器質性とは、糖尿病や動脈硬化など神経・血管系の障害に起因したEDを指し、心因性はストレスやうつ病などメンタルの不調を原因としたものだ。降圧剤や抗うつ薬、AGA(男性型脱毛症)治療薬などの副作用によって勃起障害を起こすのが薬剤性で、混合型はこれら3つが合わさったケースをいう。「20代などの若年層でEDが増えている背景の一つに、若者を取り巻く特異なSNS環境が挙げられます。いまやSNSをはじめネット上に性的な動画が氾濫し、それをスマホなどから誰でも簡単にアクセスして視聴できる状況にある。実際、ポルノなどの性的動画を見る頻度が増えるほど、“生身の女性に対する性的欲求が低下する”という研究結果もあります」(辻村氏) 調査ではマスタベーション(自慰行為)の頻度についても訊ねているが、20~24歳では20%超が「毎日」と回答。また20~30歳代では「毎日」と「1週間に1~2回程度」の合計が8割を占め、自慰には積極的な傾向が見られたという。「つまり若者の性欲そのものが衰えているというより、情報や刺激過多の環境から現実の女性に興奮する機会が減っていると推察されます。若年層に広がるEDに加え、不妊原因の4割が“男性側にある”との調査も存在します。ED治療が社会に浸透することで、日本の課題に挙げられる少子化対策にも繋がっていくと考えます」(辻村氏) 後編【EDが「脳梗塞」「狭心症」「糖尿病」「認知症」の“予兆”の可能性も 厚労省認可の「ED治療器具」本当の評判】では、EDが性欲低下にとどまらず、さまざまな重大疾患の原因と指摘される理由や、話題の最新「ED治療機器」を検証する。デイリー新潮編集部
EDとは「満足な性行為を行うのに十分な勃起が得られないか、または維持できない状態が持続または再発すること」(ED診療ガイドライン[第3版])と定義されている。
日本性機能学会が今年5月から約1カ月をかけて、1998年以来となる「性機能障害の全国実態調査」を実施し、その結果を9月に学会で発表した。すると、その衝撃の内容に専門家の間からも驚きの声が上がったという。
今回の調査委員長であり、順天堂大学浦安病院泌尿器科教授の辻村晃氏がこう話す。
「近年、EDは動脈硬化の症状の一つと捉えられるようになっており、高齢化の進む日本でED患者は増加しているとの見立てのもと調査を始めましたが、結果は想像以上でした。結論から言えば、ED患者は日本国内で約1400万人と推計されただけでなく、評価基準を変えて検証すると3600万人を超えることが明らかになった。日本の男性人口は約6000万人ですから、実に半数以上がEDの可能性があることになります」
25年前の調査では、日本のED患者は約1130万人(成人男性の約20%)と推計され、今回はさらに300万人弱増えたことになる。ちなみに98年はED治療薬として話題を集めた「バイアグラ」の発売前年にあたり、当時はまだEDが「疾病」と認められていなかったことから、それ以前のED関連の調査はないという。
辻村氏が続ける。
「ED患者が増えただけでなく、セックスレスの割合も今回、70%にまで跳ね上がりました。前回調査の対象年齢は30~79歳でしたが、今回は20代も対象に含め、これまで実態が明らかでなかった若年層のEDについても初めて調査した。すると20代前半でも2割超が『性欲を全く感じない』と回答するなど、予想外の結果が得られたのです」
辻村氏が主導した今回の調査では、全国の20~79歳の男性3万7485人を対象とし、インターネットを介して6228人から回答を得た(回答率16.6%)。
その結果を詳しく見ていくと、興味深い事実がいくつも確認できたという。
「対象者のうち『自分がEDであると思う』と回答したのは全体の13.0%と、日本の男性人口で換算すると590万人になります。しかしEDの場合、自覚のない人も少なくないため、潜在患者数を把握するべく『SHIM』と呼ばれる重症度を判定する勃起機能問診票を用いて有病率を算出しました」(辻村氏)
すると、「重症ED」との判定が52.8%、「中等度ED」が12.9%、「軽度~中等度ED」5.4%、「軽度ED」9.9%の結果となった(「EDでない」は19.0%)。つまり81.0%がEDと推計され、人口換算では3658万人に達することになる。またEHSと呼ばれる別の指標で評価すると、『(勃起障害などから)性交ができない』に定義されるグレード2以下の対象者は30.9%となり、同じく人口換算で1400万人にのぼったという。
「夫婦間のセックスレス(『性交頻度が1カ月間に1回未満』と定義)についても質問したところ、全体の70.4%が“セックスレス”と回答しました。年齢が上がるにつれ、その割合は増加傾向にあった一方で、20~24歳でも40%台後半の高い数値を示した。もともと日本人男性は世界的に見ても“性に対して積極的でない”と評価されており、たとえば1年間の性交回数で見ると、世界トップのギリシャ〈168日〉に対し、日本は〈48日〉というデータもあります」(辻村氏)
さらに「性欲をほとんど、または全く感じない」と回答した対象者は全体の28.5%を占め、20~24歳でも20%超と高い数字だった。一体、なぜなのか。
一般に、EDになる原因として「器質性」「心因性」「薬剤性」「混合型」の4つが挙げられる。器質性とは、糖尿病や動脈硬化など神経・血管系の障害に起因したEDを指し、心因性はストレスやうつ病などメンタルの不調を原因としたものだ。降圧剤や抗うつ薬、AGA(男性型脱毛症)治療薬などの副作用によって勃起障害を起こすのが薬剤性で、混合型はこれら3つが合わさったケースをいう。
「20代などの若年層でEDが増えている背景の一つに、若者を取り巻く特異なSNS環境が挙げられます。いまやSNSをはじめネット上に性的な動画が氾濫し、それをスマホなどから誰でも簡単にアクセスして視聴できる状況にある。実際、ポルノなどの性的動画を見る頻度が増えるほど、“生身の女性に対する性的欲求が低下する”という研究結果もあります」(辻村氏)
調査ではマスタベーション(自慰行為)の頻度についても訊ねているが、20~24歳では20%超が「毎日」と回答。また20~30歳代では「毎日」と「1週間に1~2回程度」の合計が8割を占め、自慰には積極的な傾向が見られたという。
「つまり若者の性欲そのものが衰えているというより、情報や刺激過多の環境から現実の女性に興奮する機会が減っていると推察されます。若年層に広がるEDに加え、不妊原因の4割が“男性側にある”との調査も存在します。ED治療が社会に浸透することで、日本の課題に挙げられる少子化対策にも繋がっていくと考えます」(辻村氏)
後編【EDが「脳梗塞」「狭心症」「糖尿病」「認知症」の“予兆”の可能性も 厚労省認可の「ED治療器具」本当の評判】では、EDが性欲低下にとどまらず、さまざまな重大疾患の原因と指摘される理由や、話題の最新「ED治療機器」を検証する。
デイリー新潮編集部

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