冷たい雨、無事祈りながら捜索見守る家族…願いかなわず悲しみの対面も

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石川県能登地方を震源とする最大震度7の地震で大きな被害を受けた被災地では3日、倒壊した建物で消防や警察などによる懸命な捜索・救出活動が続けられた。
冷たい雨が降り、余震も続く中、無事を祈りながら作業を見守る家族。だが、願いかなわず、悲しみに暮れる姿もみられた。(尾藤泰平、小野寺経太)
「揺れてる! 大きいよ!」「早く建物から離れて!」
同県輪島市で震度5強の余震が発生した午前10時55分頃、同市河井町の7階建てとみられるビルが倒壊して隣の建物が下敷きになった現場に、緊迫した消防隊員らの声が響き渡った。ビルを支えるために設置した柱はゆがんでいた。
下敷きになった建物は住宅で、地震発生当時、家族5人がいた。40歳代の女性とその娘の2人が取り残され、2日に娘が救出されたが、死亡が確認された。
派遣された大阪市消防局の隊員は午前9時半、女性の捜索に着手。未明から大雨警報が出る厳しい状況の中、隊員らは倒れたビルの下に潜り込み、機材を使ってがれきを切断するなどして作業を進めた。
その後も緊急地震速報が流れたり、揺れを感じたりするたびに鬼気迫る声が飛び、隊員たちが一斉に建物から離れた。
がれきの奥に女性がいるのは確認できていたが、呼びかけに応じない状況が続き、地震発生から約54時間後の午後10時10分頃、救助されたものの死亡が確認された。雨の中、作業を見守った女性の夫は「ビルが倒れるなんて考えたこともなかった。こんな仕打ちはない」とうなだれた。
◇ 津波が襲った同県珠洲(すず)市宝立町鵜飼地区周辺でも、連日救出活動が続いている。
だが、必死の活動にもかかわらず、同地区の女性(52)は、近くに住む母(75)を地震で亡くした。「世話好きな母だった。もっと旅行などに連れて行きたかった……」
女性は元日、自宅からスーパーに向かう途中、大きな横揺れに襲われた。大津波警報が鳴り響く中、間違った行動だとわかっていたが、母の家に大急ぎで駆けつけた。
母の自宅は2階部分が崩れ、内部は家具が散乱した状態。「母ちゃん、母ちゃん」。何度呼びかけても返答はなく、避難を促す声に従って現場を離れるしかなかった。2日朝、自宅に捜索隊が入り、1階のこたつの横で亡くなっている母を見つけた。
たまに口げんかをすることもあったが、世話好きで、悩み事がある人がいれば一緒に解決しようと奮闘する母を尊敬していた。
母は昨年末に腰を痛め、入院も考えていたが、年末年始は自宅で過ごすと決めた。女性は「早く入院させていたら違ったのかな……。でもすぐに見つかっただけで十分」とつぶやいた。
◇ 石川県内では4日朝にかけて雷を伴ったやや強い雨が降る見込み。激しい突風や、ひょうの恐れもあるという。金沢地方気象台は地震の影響で地盤が緩み、少しの雨でも土砂災害の危険度が高まっているとして注意を呼びかけている。

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