息子と妻に不倫がバレて家庭崩壊へ…その後、“ごく普通のいい子”だった50歳がとったゲスい行動とは

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

前編【大学生の息子が「20歳年上のシングルマザー」と結婚宣言…父親として「取り返しのつかないことをした」と嘆く50歳男性の末路】からのつづき
大曽根卓哉さん(50歳・仮名=以下同)は、25歳のときに同級生だった佳葉子さんと結婚し、27歳のときに息子の清志さんが生まれた。突然の失職、実家の母の不倫騒動などの事件はあったものの「感情を乱されることなく生きてきた」と半生を振り返る。そんな彼がパニックに陥ったのが、当時、大学生だった息子の「結婚宣言」だった。相手は喫茶店で知り合った20歳年上の女性で、父親の違うふたりの子供を育てているという。さらに“暴走”する清志さんは、大学を辞め働くと言い出した――。
***
【写真を見る】「夫が19歳女子大生と外泊報道」で離婚した女優、離婚の際「僕の財産は全部捧げる」と財産贈与した歌手など【「熟年離婚」した芸能人11人】 卓哉さんは、その女性に会いに行くことを妻には告げなかった。「なんとなく息子を庇うというか、男同士ならわかってやれることもあるかもしれない、頭から反対している妻には、彼女と会ってみてから報告しようと思っていました」 息子には、それとなく彼女がその喫茶店に来る時間を聞いていた。見せてもらった写真には、相手の子どもたちと彼女と仲良く写っている息子の笑顔があった。もう止めても無駄なほど、相手との関係がしっかりできているのかもしれないと彼は思った。「数日後、午前休をとってその喫茶店に行ってみると、それらしい女性が窓際に座って本を読んでいました。それとなく見たら、図書館で借りたらしい小説本で、けっこう集中しているのがわかった」 静かに近づいて、「菜穂子さんですか」と声をかけた。彼女は顔を上げて、「あ、清志のおとうさん?」と笑顔を見せた。「そのうち来るかもって清志が言っていたから……。はじめまして。徳永菜穂子ですって彼女は立ち上がってさっと手を差し出したんです。なんだかドギマギしながら、その手を握りました。握手なんてしてる場合じゃないだろと自分に思わずツッコミながら」想像と違っていた「彼女」 最初から菜穂子さんペースだったようだ。彼自身、どうしても反対というわけでもなかった。ただ、20歳で大学を中退するような事態にはなってほしくなかったのだ。「その後、菜穂子さんといろいろ話しました。ふたりの気持ちは結婚することで一致しているのかと聞くと、『私は別に結婚を望んではいないし、清志にはもっとふさわしい女性がいると思う』と言うんです。じゃあ、清志ひとりが暴走しているのかと尋ねたら、私も彼のことは好きですと。ただ、会って半年しかたっていないし、子どもたちだって彼とは兄のような友だちのようなつもりで接しているから、とても今は結婚なんて無理だと思っているということでした」 卓哉さんは、ホッとしたような物足りないような、そんな気持ちだった。もっと突っかかってくるような女性だと勝手に思い込んでいたのだ。年若い息子が年上の女性に騙されたと思いたかったのかもしれない。騙されたわけではなく、どちらかといえば息子が暴走しているのだとわかると、彼女に申し訳ないような気持ちになった。「父親の違う子を育てているシングルマザーという先入観もありました。正直言って、ろくでもない女性なのではないかと。だけど会った印象だと彼女は知的で、ごく普通の人にも見えた。仕事を聞くと『水商売だといえば、イメージに合いますか?』と笑ったんです。僕の浅はかさを見抜かれた気がしました。僕が口ごもっていると『水商売をしたこともありますよ。でも今は違う仕事をしています』と。商業関係のデザイナーだそうで、仕事内容はよくわからなかったけど貧乏というわけではないとはっきり言っていました。恥ずかしかったです、いろんな意味で」「恋心なんてありません」 その恥ずかしさが、彼の心を彼女に寄り添わせたのだろうか。彼は「息子のために」彼女をもっと知りたいと思った。息子が20歳年上の女性と結婚することにリアリティはなかったが、目の前の彼女はリアルで魅力的な女性だったのだ。おそらく彼はその時点で、彼女に恋をしかけていたのではないだろうか。「恋心なんてありませんでした」 彼はそうきっぱり否定する。息子の彼女なのだから、と。だが彼女は息子よりも、卓哉さんに年齢が近いのだ。「とりあえず悪い人ではなさそうだし、結婚は今は考えられないと言っている。そのことだけ妻に報告しました。妻は『何もあなたが会いに行かなくてもよかったのに』とは言ったけど、ホッとしたようでした。息子には僕から話しました。少し落ち着け、と。頭から反対はしないが、彼女自身が結婚は今のところ考えてないというのだから、まずは大学を卒業したほうがいいと説得したんです」 反対されなかったことで安心したのか、息子も反抗的な態度はとらなかった。息子に言えない逢瀬 それから数週間後、菜穂子さんから卓哉さんに連絡があった。「息子が何かやらかしたかと思って会いに行くと、菜穂子さん自身の子どもに関する相談でした。『それぞれの父親とは連絡をとりあっているけど、ふたりとも家庭があるのでなかなか相談もしづらくて』って。上の14歳の長男が中学を出たら働くと言い出している、なんとか高校は行ってほしいんだけど、どうやって説得したらいいかわからない、と。母親だけだから家計のことも気にしているんだろうけど、高校へは行かせてやれるんだからと言っても信じてくれないんだそうです。優しい息子さんですね、おかあさんが一生懸命育てたんだろうなと思わずつぶやいてしまいました。菜穂子さんの顔を見たら、すごくうれしそうだった。『自分の好きなように気ままに生きてきたから、子どもに迷惑ばかりかけちゃって』と照れくさそうだったけど、ちょっと羨ましかった。自由に生きてきて、でも子どももそんなやさしい子に育って……」 継続的に話を聞きたくなって、次は卓哉さんから連絡した。ふたりとも自分の気持ちに蓋をしたまま、逢瀬を続けたのだ。本当は惹かれ合っていることに気づいていたはずなのに。「菜穂子さんに会っていることは、妻にも息子にも言えなかった。菜穂子さんは徐々に息子とは距離を置く方向で考えていると言ったんです。それは僕への告白だったのかもしれない。それでもお互いに会って話す以上のことはできなかった。でもあるときふっと手が触れあったことがあった。ふたりともびっくりして顔を見合わせました。本当に電流が走ったような感じだったんです。『もう、無理かもしれない』と彼女が言いました。『僕も』。彼女はいつもは何も言わないけど、『今日は近所に住む母に子どもたちを頼んできた』と言いました。そして食事を終えてからホテルに行ったんです」 その時点では、息子のことは考えられなかった。目の前の菜穂子さんと、どうしてもひとつになりたいとだけ思いつめた。「ベッドの中の彼女も素敵だった。でも次の瞬間、この人と息子が関係をもっていたんだということが蘇ってきて。何をどうしたらいいかわからなくなりました。それなのに別れ際、『また会えるかな』と言ってしまった」 息子の恋人を盗ったという感覚はなかったと、卓哉さんは何度も言った。だが、事実としては、やはり息子の恋人を盗ったのだ。これが息子に知れたら、彼はどんなに傷つくだろう。菜穂子さんは「私は何も言わない。清志には、それとなく別れを切り出しておくから」と淡々と言った。別れを切りだされた息子は… ところがそれが失敗した。菜穂子さんに別れを切り出された息子は、帰宅して激昂、「おとうさんが別れるように言ったんだろう」とつかみかかってきたのだ。そうじゃないと何度言ってもわかろうとしなかった。そのまま家を飛び出そうとしたので力ずくで押さえ込むと、「男がいるんだ、きっと。菜穂子をぶっ殺してやる」と清志さんが物騒なことを言いだした。卓哉さんは息子を殴り飛ばした。「オレの女に手を出すなと言いそうになり、自分の中にそんな言葉があったことに驚きました。もちろんそれは言わなかったけど、すぐに菜穂子に連絡して、子どもたちにも気をつけるように伝えました。とにかく息子に罪を犯させないよう妻にも言い含め、息子にも『まずは落ち着くんだ。これは誰が悪いわけでもない。自分を追いつめてはいけない』と話しました」 菜穂子さんとは話し合い、清志さんが落ち着くまでは会うのを控えようということになった。若い清志さんはそれから徐々に日常に戻っていった。若い分、目先の楽しいことに目移りしていくし、就職のことも考えなければいけない時期になっていく。 数ヶ月後、卓哉さんは菜穂子さんと再会を果たした。「待ってた」と菜穂子さんは笑った。そこからまた逢瀬が始まった。できるだけ代休などを使って平日の昼間に会った。やむを得ず夜会うときも、遅くならないようにした。思春期の子をもつ菜穂子さんへの配慮であると同時に、卓哉さんの妻にバレないようにするためだ。息子の暴走 今年の春、清志さんは就職した。そのころから少し様子がおかしいと妻は言っていたのだが、卓哉さんは「仕事が大変なんだろう」と思っていた。そして研修を経て、息子は夏には地方へと旅立って行った。「出ていくとき、がんばれよと声をかけた僕を息子は無視したんです。その代わり、ものすごく虚無的な目で僕をじっと見ていた。イヤな予感はしたんですよね」 その数日後、帰宅すると妻がいなかった。『見そこなった。最低の男と結婚していた自分を呪うしかない』と書かれた置き手紙があった。菜穂子さんに連絡をとると、「清志が全部バラしたって言ってた」と焦っている様子だった。「どうやって知ったのかわからないんですが、地方に行く前日、息子が菜穂子さんの家に乗り込んできたと。彼女の娘を人質にとって『本当のことを言わないと、この子を傷つける』と脅した。菜穂子さんは『おとうさんと何度か会って話はしたけど、あなたが疑うような関係じゃない』と断言した。でも息子は信じなかった。娘の首に清志の手がかかったので、『一度だけあった』と言ってしまったそうです。清志は娘から手を離し、『一度なわけないだろうが』と菜穂子に言い捨てて去った。菜穂子は僕に連絡すべきかどうか迷ったらしいですが、どうしても言えなかったと泣いていました」 清志さんは母の佳葉子さんにも伝えたのだろう。それで妻は出て行ったのだ。こんなことになるとは、まったく想像もつかなかったと卓哉さんは言う。息子は菜穂子さんのことなど完全に吹っ切れたように暮らしていたが、まだ未練があったのだろうか。あるいは父と彼女をどこかで見かけ、恋心が再燃したのだろうか。「どうやって知ったかが謎ですが、息子が就活であちこちの企業を回っていたとき、けっこううちの会社や彼女の勤務先の近くにもいたようだし、僕らはときどきランチも一緒にしていたから、どこかで見かけたのかもしれないとは思います」妻を取り戻したいのに… 清志さんが、菜穂子さんの動向をずっと気にかけていた可能性もある。いずれにしても息子に知られたところから、家庭は崩壊へと流れていった。「そのとき思ったんです。僕は離婚する気はまったくないんだと。妻にはそれから毎日、メッセージを送りました。とにかく話し合いたいと。やっと妻が連絡をくれたのは1ヶ月後で、会えたのはこの夏です。妻は勤務先近くにワンルームのマンションを借りているという。そのことも夏に初めて知りました。家では会いたくないと言うので、ホテルのラウンジで会ったけど、ああいうところで本音の話はできない。とにかく戻ってきてほしい、誤解も多々あると言うと、『清志から写真ももらってる。証拠はある』って。この25年を完全に壊していいのかと言うと、『壊したのはあなたでしょ。私がどんな思いでいるかわかってる?』と言われて言葉がありませんでした」 とにかく妻に戻ってきてほしい。その後も彼は妻を説得し続けている。それなのに彼は、菜穂子さんにも会っているのだという。さすがに「どうして?」と思わざるを得ない。妻を取り戻したいなら、菜穂子さんとは別れるのが筋だろう。「わかっているけど……菜穂子にも会わないほうがいいんじゃないかと言われるけど……寂しいんですよ。どうにもならなくて菜穂子にすがってしまう」 だったら妻と別れて菜穂子さんと一緒になればいいのだが、今さら菜穂子さんの子どもたちとうまくやっていく自信はないという。 まっすぐ育った「ごく普通のいい子」だった卓哉さんだが、やっていることはかなりゲスい。本人がわかっているところが、さらに始末に負えない。寂しいのはわかるが、彼がすべて招いたことだ。息子の心の傷はどうするつもりなのだろう。「わかってるんです、すべて」 最後はうつむいてしまった彼を、それ以上責めることはできなかった。前編【大学生の息子が「20歳年上のシングルマザー」と結婚宣言…父親として「取り返しのつかないことをした」と嘆く50歳男性の末路】からのつづき亀山早苗(かめやま・さなえ)フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。デイリー新潮編集部
卓哉さんは、その女性に会いに行くことを妻には告げなかった。
「なんとなく息子を庇うというか、男同士ならわかってやれることもあるかもしれない、頭から反対している妻には、彼女と会ってみてから報告しようと思っていました」
息子には、それとなく彼女がその喫茶店に来る時間を聞いていた。見せてもらった写真には、相手の子どもたちと彼女と仲良く写っている息子の笑顔があった。もう止めても無駄なほど、相手との関係がしっかりできているのかもしれないと彼は思った。
「数日後、午前休をとってその喫茶店に行ってみると、それらしい女性が窓際に座って本を読んでいました。それとなく見たら、図書館で借りたらしい小説本で、けっこう集中しているのがわかった」
静かに近づいて、「菜穂子さんですか」と声をかけた。彼女は顔を上げて、「あ、清志のおとうさん?」と笑顔を見せた。
「そのうち来るかもって清志が言っていたから……。はじめまして。徳永菜穂子ですって彼女は立ち上がってさっと手を差し出したんです。なんだかドギマギしながら、その手を握りました。握手なんてしてる場合じゃないだろと自分に思わずツッコミながら」
最初から菜穂子さんペースだったようだ。彼自身、どうしても反対というわけでもなかった。ただ、20歳で大学を中退するような事態にはなってほしくなかったのだ。
「その後、菜穂子さんといろいろ話しました。ふたりの気持ちは結婚することで一致しているのかと聞くと、『私は別に結婚を望んではいないし、清志にはもっとふさわしい女性がいると思う』と言うんです。じゃあ、清志ひとりが暴走しているのかと尋ねたら、私も彼のことは好きですと。ただ、会って半年しかたっていないし、子どもたちだって彼とは兄のような友だちのようなつもりで接しているから、とても今は結婚なんて無理だと思っているということでした」
卓哉さんは、ホッとしたような物足りないような、そんな気持ちだった。もっと突っかかってくるような女性だと勝手に思い込んでいたのだ。年若い息子が年上の女性に騙されたと思いたかったのかもしれない。騙されたわけではなく、どちらかといえば息子が暴走しているのだとわかると、彼女に申し訳ないような気持ちになった。
「父親の違う子を育てているシングルマザーという先入観もありました。正直言って、ろくでもない女性なのではないかと。だけど会った印象だと彼女は知的で、ごく普通の人にも見えた。仕事を聞くと『水商売だといえば、イメージに合いますか?』と笑ったんです。僕の浅はかさを見抜かれた気がしました。僕が口ごもっていると『水商売をしたこともありますよ。でも今は違う仕事をしています』と。商業関係のデザイナーだそうで、仕事内容はよくわからなかったけど貧乏というわけではないとはっきり言っていました。恥ずかしかったです、いろんな意味で」
その恥ずかしさが、彼の心を彼女に寄り添わせたのだろうか。彼は「息子のために」彼女をもっと知りたいと思った。息子が20歳年上の女性と結婚することにリアリティはなかったが、目の前の彼女はリアルで魅力的な女性だったのだ。おそらく彼はその時点で、彼女に恋をしかけていたのではないだろうか。
「恋心なんてありませんでした」
彼はそうきっぱり否定する。息子の彼女なのだから、と。だが彼女は息子よりも、卓哉さんに年齢が近いのだ。
「とりあえず悪い人ではなさそうだし、結婚は今は考えられないと言っている。そのことだけ妻に報告しました。妻は『何もあなたが会いに行かなくてもよかったのに』とは言ったけど、ホッとしたようでした。息子には僕から話しました。少し落ち着け、と。頭から反対はしないが、彼女自身が結婚は今のところ考えてないというのだから、まずは大学を卒業したほうがいいと説得したんです」
反対されなかったことで安心したのか、息子も反抗的な態度はとらなかった。
それから数週間後、菜穂子さんから卓哉さんに連絡があった。
「息子が何かやらかしたかと思って会いに行くと、菜穂子さん自身の子どもに関する相談でした。『それぞれの父親とは連絡をとりあっているけど、ふたりとも家庭があるのでなかなか相談もしづらくて』って。上の14歳の長男が中学を出たら働くと言い出している、なんとか高校は行ってほしいんだけど、どうやって説得したらいいかわからない、と。母親だけだから家計のことも気にしているんだろうけど、高校へは行かせてやれるんだからと言っても信じてくれないんだそうです。優しい息子さんですね、おかあさんが一生懸命育てたんだろうなと思わずつぶやいてしまいました。菜穂子さんの顔を見たら、すごくうれしそうだった。『自分の好きなように気ままに生きてきたから、子どもに迷惑ばかりかけちゃって』と照れくさそうだったけど、ちょっと羨ましかった。自由に生きてきて、でも子どももそんなやさしい子に育って……」
継続的に話を聞きたくなって、次は卓哉さんから連絡した。ふたりとも自分の気持ちに蓋をしたまま、逢瀬を続けたのだ。本当は惹かれ合っていることに気づいていたはずなのに。
「菜穂子さんに会っていることは、妻にも息子にも言えなかった。菜穂子さんは徐々に息子とは距離を置く方向で考えていると言ったんです。それは僕への告白だったのかもしれない。それでもお互いに会って話す以上のことはできなかった。でもあるときふっと手が触れあったことがあった。ふたりともびっくりして顔を見合わせました。本当に電流が走ったような感じだったんです。『もう、無理かもしれない』と彼女が言いました。『僕も』。彼女はいつもは何も言わないけど、『今日は近所に住む母に子どもたちを頼んできた』と言いました。そして食事を終えてからホテルに行ったんです」
その時点では、息子のことは考えられなかった。目の前の菜穂子さんと、どうしてもひとつになりたいとだけ思いつめた。
「ベッドの中の彼女も素敵だった。でも次の瞬間、この人と息子が関係をもっていたんだということが蘇ってきて。何をどうしたらいいかわからなくなりました。それなのに別れ際、『また会えるかな』と言ってしまった」
息子の恋人を盗ったという感覚はなかったと、卓哉さんは何度も言った。だが、事実としては、やはり息子の恋人を盗ったのだ。これが息子に知れたら、彼はどんなに傷つくだろう。菜穂子さんは「私は何も言わない。清志には、それとなく別れを切り出しておくから」と淡々と言った。
ところがそれが失敗した。菜穂子さんに別れを切り出された息子は、帰宅して激昂、「おとうさんが別れるように言ったんだろう」とつかみかかってきたのだ。そうじゃないと何度言ってもわかろうとしなかった。そのまま家を飛び出そうとしたので力ずくで押さえ込むと、「男がいるんだ、きっと。菜穂子をぶっ殺してやる」と清志さんが物騒なことを言いだした。卓哉さんは息子を殴り飛ばした。
「オレの女に手を出すなと言いそうになり、自分の中にそんな言葉があったことに驚きました。もちろんそれは言わなかったけど、すぐに菜穂子に連絡して、子どもたちにも気をつけるように伝えました。とにかく息子に罪を犯させないよう妻にも言い含め、息子にも『まずは落ち着くんだ。これは誰が悪いわけでもない。自分を追いつめてはいけない』と話しました」
菜穂子さんとは話し合い、清志さんが落ち着くまでは会うのを控えようということになった。若い清志さんはそれから徐々に日常に戻っていった。若い分、目先の楽しいことに目移りしていくし、就職のことも考えなければいけない時期になっていく。
数ヶ月後、卓哉さんは菜穂子さんと再会を果たした。「待ってた」と菜穂子さんは笑った。そこからまた逢瀬が始まった。できるだけ代休などを使って平日の昼間に会った。やむを得ず夜会うときも、遅くならないようにした。思春期の子をもつ菜穂子さんへの配慮であると同時に、卓哉さんの妻にバレないようにするためだ。
今年の春、清志さんは就職した。そのころから少し様子がおかしいと妻は言っていたのだが、卓哉さんは「仕事が大変なんだろう」と思っていた。そして研修を経て、息子は夏には地方へと旅立って行った。
「出ていくとき、がんばれよと声をかけた僕を息子は無視したんです。その代わり、ものすごく虚無的な目で僕をじっと見ていた。イヤな予感はしたんですよね」
その数日後、帰宅すると妻がいなかった。『見そこなった。最低の男と結婚していた自分を呪うしかない』と書かれた置き手紙があった。菜穂子さんに連絡をとると、「清志が全部バラしたって言ってた」と焦っている様子だった。
「どうやって知ったのかわからないんですが、地方に行く前日、息子が菜穂子さんの家に乗り込んできたと。彼女の娘を人質にとって『本当のことを言わないと、この子を傷つける』と脅した。菜穂子さんは『おとうさんと何度か会って話はしたけど、あなたが疑うような関係じゃない』と断言した。でも息子は信じなかった。娘の首に清志の手がかかったので、『一度だけあった』と言ってしまったそうです。清志は娘から手を離し、『一度なわけないだろうが』と菜穂子に言い捨てて去った。菜穂子は僕に連絡すべきかどうか迷ったらしいですが、どうしても言えなかったと泣いていました」
清志さんは母の佳葉子さんにも伝えたのだろう。それで妻は出て行ったのだ。こんなことになるとは、まったく想像もつかなかったと卓哉さんは言う。息子は菜穂子さんのことなど完全に吹っ切れたように暮らしていたが、まだ未練があったのだろうか。あるいは父と彼女をどこかで見かけ、恋心が再燃したのだろうか。
「どうやって知ったかが謎ですが、息子が就活であちこちの企業を回っていたとき、けっこううちの会社や彼女の勤務先の近くにもいたようだし、僕らはときどきランチも一緒にしていたから、どこかで見かけたのかもしれないとは思います」
清志さんが、菜穂子さんの動向をずっと気にかけていた可能性もある。いずれにしても息子に知られたところから、家庭は崩壊へと流れていった。
「そのとき思ったんです。僕は離婚する気はまったくないんだと。妻にはそれから毎日、メッセージを送りました。とにかく話し合いたいと。やっと妻が連絡をくれたのは1ヶ月後で、会えたのはこの夏です。妻は勤務先近くにワンルームのマンションを借りているという。そのことも夏に初めて知りました。家では会いたくないと言うので、ホテルのラウンジで会ったけど、ああいうところで本音の話はできない。とにかく戻ってきてほしい、誤解も多々あると言うと、『清志から写真ももらってる。証拠はある』って。この25年を完全に壊していいのかと言うと、『壊したのはあなたでしょ。私がどんな思いでいるかわかってる?』と言われて言葉がありませんでした」
とにかく妻に戻ってきてほしい。その後も彼は妻を説得し続けている。それなのに彼は、菜穂子さんにも会っているのだという。さすがに「どうして?」と思わざるを得ない。妻を取り戻したいなら、菜穂子さんとは別れるのが筋だろう。
「わかっているけど……菜穂子にも会わないほうがいいんじゃないかと言われるけど……寂しいんですよ。どうにもならなくて菜穂子にすがってしまう」
だったら妻と別れて菜穂子さんと一緒になればいいのだが、今さら菜穂子さんの子どもたちとうまくやっていく自信はないという。
まっすぐ育った「ごく普通のいい子」だった卓哉さんだが、やっていることはかなりゲスい。本人がわかっているところが、さらに始末に負えない。寂しいのはわかるが、彼がすべて招いたことだ。息子の心の傷はどうするつもりなのだろう。
「わかってるんです、すべて」
最後はうつむいてしまった彼を、それ以上責めることはできなかった。
前編【大学生の息子が「20歳年上のシングルマザー」と結婚宣言…父親として「取り返しのつかないことをした」と嘆く50歳男性の末路】からのつづき
亀山早苗(かめやま・さなえ)フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。
デイリー新潮編集部

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。