愛媛県新居浜市で2021年、一家3人が殺害された事件で、殺人罪などに問われた無職河野智被告(56)の裁判員裁判の判決が18日、松山地裁であった。
渡辺一昭裁判長は、被告が当時心神耗弱状態だったと認めた上で、「生命軽視の度合いは甚だしく、精神障害の影響を踏まえても、厳しく非難されるべきだ」として、求刑通り無期懲役を言い渡した。
河野被告は公判で起訴内容を認めており、刑事責任能力が争点となっていた。検察側は心神耗弱、弁護側は心神喪失状態と主張していた。
渡辺裁判長は、被告が妄想型統合失調症による被害妄想の影響を受け、犯行に至ったとした。一方、人生への影響を考え殺人をためらうなど、自らの行為の意味を理解し、選択する能力を完全には失っていなかったと判断。「何の落ち度もない3人の生命が奪われた結果は重大」と述べ、心神耗弱による法律上の減軽を認めるとしても無期懲役が相当とした。
弁護側は、自分の行動を制御することができない心神喪失状態だったとし、刑事責任は問えないとして無罪を訴えていた。
判決によると、河野被告は21年10月13日、新居浜市の住宅で、元同僚の岩田健一さん=当時(51)、父親の友義さん=同(80)、母親のアイ子さん=同(80)=をナイフで突き刺すなどして、失血死させた。