【伊藤 洋志】地方移住に「成功」する人と「失敗」する人は何が違う?移住先で見るべき「意外なポイント」

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住む場所を変えるというのは生活状況を変えるのに確実なアクションの一つだとよく言われます。21世紀の処世術と称して、移住について考えてみたいと思います。
Uターン、Iターン、田園回帰、地方移住と色々な形で表現されてきましたが、居住地の移転は良くも悪くも個々人の生活にインパクトが大きいアクションなのは間違いありません。ダイナミックなものだと民族ごと大移動する、させられることも人類史の中ではわりとありました。
この文章を書いている今、非常に厳しい状況になっているパレスチナも集団的な移住が起きた場所です。大規模な移住は日本人にも無縁ではなく、戦中、戦前、戦後と田畑を求めて人が住んでいなかった場所を開拓してできた場所は想像以上に多く、国外に移住した人も相当おります。
例えば、お茶の名産地として名高い静岡県のお茶の産地のいくつかは、もっと以前からお茶の産地だった場所に比べると山越え、山越えようやく辿り着く、という感じです。
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これは、幕府が解体された際に、幕藩体制中に橋をかけることができなかった大井川の川越人足(人を担いで川を渡る仕事)の仕事がなくなるということで人がいなかった山深いエリアや水田に向かない台地を茶畑に開拓したことが理由です。最初に訪れたときに、なぜここまで山奥に広大な茶畑が…?と疑問に思ったのですが、やはり理由があるわけです。
そんな感じで日本を移動していると何か雰囲気が違う土地を通ることがあります。私自身が平野の水田が多いエリアの育ちなのでそこと比較しての違和感ではあるのですが、田舎なのに妙に田んぼが少なかったり、杉林なのに妙に土地が平らだとか、家の配置が違うなど気になることがあれば調べるに限ります。そこで石碑を探してみると「開拓の歴史」のような題が刻まれていたりする。やはり土地に歴史ありなのです。
これと移住の秘訣がどう関係あるか、というとだいぶあります。結論を言えば、「都会生活も限界を感じるし、どこかに移住したいなー」と思ったら見るべきポイントの一つはその土地の歴史になります。
チャレンジ精神の高い人は、チャレンジ精神のある歴史を持つ土地に移住した方がよく、逆にその土地で絶対的な序列を持つような有力者がいるような土地は避けた方がいい。また、年功序列、男尊女卑のカルチャーが根強い場所は多くの人にとって避けた方がいいわけです。そもそも、一ヶ所に永遠に固定しない方が良いという提案もあるのですが、これは別の機会に。
一例としてあまりに広いので一般化はできませんが、ざっとした話で言ってしまうと例えば北海道は土地が広く、「比較的」土地のしがらみが生じにくいように感じます。それぞれの家が離れているからか、各自が理想を追求して淡々と取り組んでいる人が多い印象です。
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私のささやかな観測範囲でも、質の高い酪農を求めて牛に食べさせる塩を自ら釜炊きで製塩をやり始めた酪農家(牛飼いと製塩職人の両方をやる!)や、日本で牧羊犬と羊を飼う牧場を一代で開拓した方、など圧倒されるエピソードを持つ人の遭遇率が高い。周囲の目が気になる環境だと、なかなかこういうチャレンジはやりにくく、密集度が高いと無難な生活や仕事を選ぶ圧力が高まりがちです。例えば標準的な農法の田んぼが密集しているところで、いきなり無農薬無肥料の自然農に取り組むと嫌がられることが多いです。
そういえば、私は学生の頃にとある工芸作家さんのところに滞在調査したことがあるのですが、この方は、チャレンジ性のあるものづくりをするために、家は集落の中にありましたが、工房はあえて少し集落から離れた場所に構えておられました。やはり距離感は大事なのでしょう。
よく県民性などといいますが、だいぶ生活感覚が違います。例えば高知県で、一人で静かにお酒を飲める場所は稀です。居酒屋などで一人で飲んでいようものなら高頻度で話しかけられます。さらに、もっと細かく見た方がいいこともあります。中山間地域のような村々が川や山で隔てられている場所だと、細かく見れば集落単位で雰囲気や人の気質が違います。
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橋がかかった今では川を渡って数分で行き来できる場所でも、片方の集落は、行事やお祭りが頻繁にあり、住民同士の交流が盛んというところもあれば、もう一方は元々住んでいる人同士の結束が強くて外部の人が住みにくい雰囲気もある、といったこともざらにあります。昔は川に隔てられて交流がなかったことから気質がかなり違ったのでしょう。わずか数分の距離でも大きな違いです。
もし移住して住むなら、その人の気質が合うか合わないかでかなり住み心地が変わることでしょうから、よく観察して確認することが必要です。
もっと言えば、ここまで雑に地方、田舎とひと括りにしていますが、かつての藩があった地方都市、郊外、平野の農村、中山間地、県庁所在地レベルの地方都市、港町、漁村、1000年の歴史がある村、できて100年も経っていない村、などさまざまです。気候も含めてどれが自分に合うかをみた方が良いです。
実際に、合うかどうかは感覚的なことですから住んでみてみないと分からないかもしれません。とはいえ住む前に見極めるのにいい方法もあります。
一つは、自分が気に入った場所(お店など)があるかどうか。もう一つは、そこに住む人で意気投合できる人に出会うかどうか。話が通じる人が見つかれば自ずと気に入った場所にもたどり着きますし、おそらく暮らしやすいでしょう。
記事後編は「『苦労して改修した空き家を追い出され』地方移住で大誤算…!移住先でほんとうに気を付けるべきこと」からお読みいただけます。

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