まるで巨大な竜巻…甚大な被害もたらす「スーパー台風」 コンクリートブロックも吹き飛ばす

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9月中旬に発生した台風14号は、各地に被害をもたらした。日本に上陸する前には、「スーパー台風」と呼ばれる過去有数の規模に発達した。専門家は、今後 同じ規模の猛烈な台風が日本を襲う可能性があると指摘している。
日本列島を直撃した「最強クラス」の台風14号。9月18日に鹿児島県に上陸した時点での中心気圧は935hPaで、これは中心気圧の低さでは史上4番目。2000年以降としては初めてという、大きな台風だった。
気象庁大気海洋部課長(9月17日):衛星画像を見ていて、これはもうかなりやばいなと。これまで自分で、気象庁で働き始めて見たことがないというか…。かなり危機感を持ちました
なぜ台風14号はここまで発達したのか。長年台風の研究を続けてきた名古屋大学の坪木和久教授に解説してもらった。
名古屋大学の坪木和久教授:大気の上層と下層の風速差が小さい。それは台風の発達の阻害要因となるわけですけれども、その阻害要因がほとんどなかった。つまり(台風が)発達しやすい構造をしていたということになります
これまでも台風が発生した際、上空から観測するなど研究を続けてきた坪木教授。台風14号が迫る9月16日と17日には、ジェット機で県営名古屋空港から沖縄県の宮古島を経由して南大東島の上空などをフライトし、台風14号の動きにあわせて、上空から撮影した。
坪木教授らの研究チームでは、「ドロップゾンデ」と呼ばれる小型の観測機器を上空から約50個投下。台風の風速や風向き、気圧などのデータを観測した。
坪木和久教授:この写真は、台風の目の中に入った時の写真なんですけど、台風は中心に目があるわけですけれども、その周辺を壁のように取り巻いているドーナツ状の雲があります。この壁雲と目の中の温度が、台風のエンジンとなるわけです
台風の目の周辺に、「壁雲」と呼ばれる発達した積乱雲の集まりが、壁のようにそびえたつ様子も確認が取れたという。
こうした観測の結果、「スーパー台風」だったことわかった。
坪木和久教授:前の日の午後からその日の午前にかけて、短い期間に30hPaくらい気圧が低下する。それくらい急速に発達していったことが直接測定からわかった。当初は予想していなかったんですけど、台風の強度カテゴリーで「スーパー台風」というものに達した
「スーパー台風」とは、アメリカの気象機関が定義した最強クラスの台風のこと。
過去に東海地方を襲った「最強クラスの台風」といえば、1959年9月26日の「伊勢湾台風」だ。
中心気圧929hPaで和歌山県に上陸。6時間余りかけて本州を縦断し、広い範囲を雨と強風が襲った。
その結果、死者・行方不明者あわせて5098人、住宅の被害は約50万棟と甚大な被害をもたらした。
坪木和久教授:スーパー台風は、風速が67m/s以上の台風になりますので、極めて大きな災害をもたらします。台風というより、巨大な竜巻のような風速になるわけです。風と雨、両方の災害がもたらされる
スーパー台風によって、伊勢湾台風を超える風速60m/sの風が襲ってくると、どんな現象が起きるのか。埼玉県にある、全国で2台しかない設備で猛烈な風を再現してみた。
まずは、工事現場でみかけるパイロンで実験。
リポート:一瞬の出来事で最初は何が起こったかわからなかったんですが、突風が吹くとあっという間にパイロンが飛ばされていきました。跡を見ると、いかにものすごい強さで飛ばされていったかわかります
コンクリートブロックも…
軽々と吹き飛ばす猛烈な風。あらゆるものを凶器に変えてしまう。
猛烈な風、そして雨をもたらす「スーパー台風」。今後、日本列島を繰り返し直撃する恐れがあるという。
坪木和久教授:(今後)台風の最大強度が増大する。スーパー台風のような、より強い台風が発生していく。地球温暖化が台風に対してどのような影響を与えるか、これが非常に大きな問題だと思います
スーパー台風の発生に影響を及ぼしていると考えられるのが、地球温暖化だ。日本近海の海面水温は、この100年余りで既に1度以上の上昇をしている。
温暖化が進み、海面の水温がさらに上昇すると、海からのエネルギーを得て台風が発達。
その結果、ますます台風が巨大化し、日本にも直撃する可能性が高まってくるという。
坪木和久教授:今回の台風(台風14号)は、日本周辺より高い緯度で、強いものが発生することを示唆していると思うんですけれども、(スーパー台風の)頻度が今後増えていくと考えられます
日本列島に迫る「スーパー台風」。私たちはどう備えを進めればいいのだろうか…
坪木和久教授:今後、これまでに経験したことのないような台風が接近・上陸するということが起こってくると思います。これまでの経験に頼った防災、あるいは避難ではなくて、最新の知見に基づいた防災や、災害が起こりそうな時はより早めの避難をしていただいて。まずやはり、台風の脅威から命を守ることをしっかりしていっていただきたいと思います
(東海テレビ)

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