暴力団の”秘密組織”事情 命を張って親分を守る「極道スワット」が「最近ほとんど集められない」ワケ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、「極道スワット」と関係者が呼ぶ抗争の時などに特別編成される組織について。
【写真】日本の警察の特殊部隊 * * * 暴力団には秘密組織があるのかと、ある暴力団幹部に尋ねると「弘道会では十仁会と呼ばれる者たちがいる」という答えが返ってきた。三代目弘道会は六代目山口組の中核組織。その弘道会にあるといわれる秘密組織「十仁会」。弘道会傘下の組員が敵対組織の組員らを射殺する事件が勃発する度に”密殺集団”などと、オンラインメディアなどで取り上げられてきた組織である。

これまでの記事によると、十仁会はもとは組長の警護役を務めており、抗争が勃発した時には敵対組織やターゲットの情報を掴んで裏工作したり、相手の幹部や組員らを狙うこともあるという。その諜報活動は暴力団だけに限らず、警察組織にも及び、捜査員の家族の情報が洩れ捜査当局を困惑させたこともあったらしい。 暴力団幹部に、他の組はどうかと聞くと「他は各組織によって、選抜チームのような形で組織を作って行動するところがほとんどだ。抗争になると、傘下の各組織から選抜されるケースが多いが、あえて何々会などと名乗りはしない。弘道会は特別だ。六代目山口組組長の出身母体であり、敵対する組織から最も狙われやすい組だからな。そのためあそこはスワットもすごい」という。 スワットとは本来、米国の警察などに設置されている特殊武装戦術部隊(SAWT)のことを言う。銃撃事件や立てこもり事件などの際に出動し、狙撃手がいたり軍隊並みの装備を持つことから、凶悪事件を制圧して解決するイメージが強い。転じて、強力な戦闘力を持つチームのことを俗にスワットと呼んだりする。幹部が言う「スワット」は、もちろん後者の意味だ。見開きのファスナーを開けた広げた鞄を持つ男 幹部曰く、スワットのことを仲間内では”極道スワット”と呼ぶという。自分の親分を守るための人間たちのことだ。幹部の説明によると、ボディガードとは少々違うらしい。「ボディガードは公私の区別なく親分のそばで常に護衛する役で、いつも傍ら行動を共にしている1~2人のことをいう。スワットは抗争の時や狙われる可能性がある時に、親分を守ために編成する7~8人ほどの組織。親分が移動する時は別車両で親分が乗った車の走り、会合や食事などの時はその周囲に立って護衛する。政治家のSPと同じだ」。 他の組織では、スワットは抗争が起きた時や組員が他組織の組員らとケンカをした時などに編成されるが、弘道会は常にスワットが配備されていると幹部は話す。「弘道会の親分らが動く時は、常にスワットが護衛していると聞く。親分らがレストランで食事をする時は、後ろや横に立つボデイガードとは別に、レストランの周辺の交差点や角をスワットが警護している。彼らは警察のSPと同じ鉄板が入った見開きの防弾鞄を持っている。スワットがその鞄を持って立っていると、自分らには弘道会の親分たちが来ているとすぐわかる」と幹部はいう。 それは素人目にもわかるのかと尋ねると、「ヤクザの親分が近くにいるというのはわかるね。スーツ姿で、見開きのファスナーを開けた広げた鞄を持って、ごっつい男たちが交差点の角々に立っていたらおかしいだろう。それがキョロキョロと四方八方に目を配っている様子は異様だよ」(幹部)。 弘道会のように、常に襲撃の危険がある組では、ボディガードだけでなくスワットによる護衛が欠かせないらしい。「組の車より危ないのがタクシーだ。降りた時に弾かれるということもあるし、走行中に窓ガラスを狙って近づいてくるオートバイもいる。どんなヤツがいつ襲ってくるかわからない」。 他の組はと聞くと、「いくつかの組にはスワットがいる」と言って幹部があげたのが2022年10月に岡山市内の理髪店で池田組の組長が襲撃された事件だ。池田組は、六代目山口組から分裂した際に山健組らと神戸山口組を結成、しかしその後、神戸山口組からも脱退し独散組織となっていた。資金力が豊富で、かつ神戸山口組や絆會との連合を実行しようとした池田組は、六代目山口組にとっては邪魔でしかない。2016年5月に若頭が弘道会系の組員に射殺され、2020年5月には後任の若頭が銃撃を受けている。それ以前にも組の関連先などに車両が突っ込まれる事件が連続、六代目山口組から狙われ続けていたのだ。 そしてこの日、組長は理容店にいたところを、六代目山口組に神戸山口組から戻った山健組系の妹尾組幹部に襲撃された。催涙ガスとサバイバルナイフで組長を襲った実行犯は、その場で数名のボディガードに取り押さえられたと報じられているが、幹部の話ではその中にはボディガードだけでなく、スワットがいたという。「抗争中の組では、ボディガードだけでなく、しっかりとスワットが組織化されている。襲撃する方も自分が助かりたいと思うヤツは、逃げられる方を選ぶが、やってやるという心意気が違うヤツは飛び込んでくる。そのため命を張って親分を守れるヤツを選びだす」。 しかし、それも特定の組に限った話のようだ。「自分らの周りでスワットが集められるようなことは、最近ほとんどない。山口組分裂抗争の時のような緊迫状況はないからね。それにどこそこが襲撃されたと聞いても、もはや他人事だ。自分みたいなヤクザが、今のこの業界にはうんざりするほどいる」。幹部は最後に皮肉交じりの声でこう言った。「今の俺たちは”スエットでも着てスワットけ”って感じだね」
* * * 暴力団には秘密組織があるのかと、ある暴力団幹部に尋ねると「弘道会では十仁会と呼ばれる者たちがいる」という答えが返ってきた。三代目弘道会は六代目山口組の中核組織。その弘道会にあるといわれる秘密組織「十仁会」。弘道会傘下の組員が敵対組織の組員らを射殺する事件が勃発する度に”密殺集団”などと、オンラインメディアなどで取り上げられてきた組織である。
これまでの記事によると、十仁会はもとは組長の警護役を務めており、抗争が勃発した時には敵対組織やターゲットの情報を掴んで裏工作したり、相手の幹部や組員らを狙うこともあるという。その諜報活動は暴力団だけに限らず、警察組織にも及び、捜査員の家族の情報が洩れ捜査当局を困惑させたこともあったらしい。
暴力団幹部に、他の組はどうかと聞くと「他は各組織によって、選抜チームのような形で組織を作って行動するところがほとんどだ。抗争になると、傘下の各組織から選抜されるケースが多いが、あえて何々会などと名乗りはしない。弘道会は特別だ。六代目山口組組長の出身母体であり、敵対する組織から最も狙われやすい組だからな。そのためあそこはスワットもすごい」という。
スワットとは本来、米国の警察などに設置されている特殊武装戦術部隊(SAWT)のことを言う。銃撃事件や立てこもり事件などの際に出動し、狙撃手がいたり軍隊並みの装備を持つことから、凶悪事件を制圧して解決するイメージが強い。転じて、強力な戦闘力を持つチームのことを俗にスワットと呼んだりする。幹部が言う「スワット」は、もちろん後者の意味だ。
幹部曰く、スワットのことを仲間内では”極道スワット”と呼ぶという。自分の親分を守るための人間たちのことだ。幹部の説明によると、ボディガードとは少々違うらしい。「ボディガードは公私の区別なく親分のそばで常に護衛する役で、いつも傍ら行動を共にしている1~2人のことをいう。スワットは抗争の時や狙われる可能性がある時に、親分を守ために編成する7~8人ほどの組織。親分が移動する時は別車両で親分が乗った車の走り、会合や食事などの時はその周囲に立って護衛する。政治家のSPと同じだ」。
他の組織では、スワットは抗争が起きた時や組員が他組織の組員らとケンカをした時などに編成されるが、弘道会は常にスワットが配備されていると幹部は話す。「弘道会の親分らが動く時は、常にスワットが護衛していると聞く。親分らがレストランで食事をする時は、後ろや横に立つボデイガードとは別に、レストランの周辺の交差点や角をスワットが警護している。彼らは警察のSPと同じ鉄板が入った見開きの防弾鞄を持っている。スワットがその鞄を持って立っていると、自分らには弘道会の親分たちが来ているとすぐわかる」と幹部はいう。
それは素人目にもわかるのかと尋ねると、「ヤクザの親分が近くにいるというのはわかるね。スーツ姿で、見開きのファスナーを開けた広げた鞄を持って、ごっつい男たちが交差点の角々に立っていたらおかしいだろう。それがキョロキョロと四方八方に目を配っている様子は異様だよ」(幹部)。
弘道会のように、常に襲撃の危険がある組では、ボディガードだけでなくスワットによる護衛が欠かせないらしい。「組の車より危ないのがタクシーだ。降りた時に弾かれるということもあるし、走行中に窓ガラスを狙って近づいてくるオートバイもいる。どんなヤツがいつ襲ってくるかわからない」。
他の組はと聞くと、「いくつかの組にはスワットがいる」と言って幹部があげたのが2022年10月に岡山市内の理髪店で池田組の組長が襲撃された事件だ。池田組は、六代目山口組から分裂した際に山健組らと神戸山口組を結成、しかしその後、神戸山口組からも脱退し独散組織となっていた。資金力が豊富で、かつ神戸山口組や絆會との連合を実行しようとした池田組は、六代目山口組にとっては邪魔でしかない。2016年5月に若頭が弘道会系の組員に射殺され、2020年5月には後任の若頭が銃撃を受けている。それ以前にも組の関連先などに車両が突っ込まれる事件が連続、六代目山口組から狙われ続けていたのだ。
そしてこの日、組長は理容店にいたところを、六代目山口組に神戸山口組から戻った山健組系の妹尾組幹部に襲撃された。催涙ガスとサバイバルナイフで組長を襲った実行犯は、その場で数名のボディガードに取り押さえられたと報じられているが、幹部の話ではその中にはボディガードだけでなく、スワットがいたという。
「抗争中の組では、ボディガードだけでなく、しっかりとスワットが組織化されている。襲撃する方も自分が助かりたいと思うヤツは、逃げられる方を選ぶが、やってやるという心意気が違うヤツは飛び込んでくる。そのため命を張って親分を守れるヤツを選びだす」。
しかし、それも特定の組に限った話のようだ。「自分らの周りでスワットが集められるようなことは、最近ほとんどない。山口組分裂抗争の時のような緊迫状況はないからね。それにどこそこが襲撃されたと聞いても、もはや他人事だ。自分みたいなヤクザが、今のこの業界にはうんざりするほどいる」。幹部は最後に皮肉交じりの声でこう言った。
「今の俺たちは”スエットでも着てスワットけ”って感じだね」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。