さまざまな闇バイトがあるが、この流れはいつから活発化したのか。『地元最高!』などでリアルな不良文化を伝える編集者の草下シンヤ氏(以下・草下)と、自伝的小説『飛鳥クリニックは今日も雨(上)』を上梓したZ李氏(以下・Z李)。
闇バイトを含む裏社会の動向を見続けている両人の刺激的な対談をお届けする。
◆スマホとSNSの登場が「闇バイト」を浸透させた
草下:スマホとSNSの登場が“人を使い捨てにする”闇バイトを劇的に浸透させたのは否めません。
1990年代……僕らの若かりし頃の闇バイト的な犯罪といえば、せいぜい窃盗。
最初はゲーセンの小銭、車を持つと大型テーマパークまで遠征して、自販機をバールでぶっ壊す。小銭の抜き方を地元のヤンチャな先輩から継承するんです(笑)。
◆闇金の出現と「闇バイト」
Z李:’00年代に入って闇金が出現したことがデカいかも。
飛ばしの携帯と板(銀行口座)、コマとしての人材が揃えば、ヤクザがいなくても犯罪が成立するシステムが確立された。出資法で闇金が潰されても、このスキームは今も生き続けてるよね。
草下:SNS以前の情報交換はもっぱら掲示板でしたね。
Z李:2ちゃん、ホスラブみたいなBBS文化。これも根強いんだよな。
それこそ一時期「したらば掲示板」で隆盛を誇ったのが、「パンダ金融」に代表される個人間金融。板を担保にカネを貸してくれるって、明らかに怪しいじゃん(笑)。
でも、闇バイトに手を出しちゃう人にとって、即金は何より魅力的なんだよな。俺のとこにも「今すぐ100万貸してくれませんか?」ってDMが来るから、よくわかる。
◆詐欺も強盗も厳罰化が進んでいる(Z李)
草下:僕はリクルーターが前澤友作さんのことを「前澤様」と呼んでいるのを聞いて、ツイッターの“お金配り”は革命的だったんだなと。
あれは前澤前、前澤後と言っても過言ではない発明(笑)。
Z李:間違いない。お金配りで信じられないほど簡単にコマが集まるからな。
そういうのに応募しちゃう人に言いたいのは、近年、詐欺も強盗も厳罰化が進んでるってこと。
草下:タタキ(強盗)は昔から重罪でしたけど、詐欺は弁当(執行猶予)で済む場合も多かったんですよね。
Z李:’00年代半ばくらいだと、闇バイトといえばパチスロも主戦場だった。
ヤクザがシノギとして一日4万円くらいで打ち子にリースしてた体感器を使えば、「吉宗」で当たりを人為的に引けたんだ。うまく立ち回れば、一日30万円は稼げてた。体感器を使うのはもちろん禁じられていて、ゴト行為。
ただ最悪バレても店長室でボコられて出禁くらうくらいのものだったよ。
草下:ある種、牧歌的な時代でしたね。
◆ディズニーツアーで「大麻の密輸」?
Z李:あと、大麻の密輸の闇バイトもあったな。
HISのディズニーツアーは絶対荷物を調べられないってジンクスが一時期あってさ。「海外旅行をプレゼント!」って謳ってカップル集めて、本当にカリフォルニアまで飛ばすの。
で、お土産に大麻を詰めたクッキー缶を持って帰らせる。当時は運びがバレても「知らなかった」が通用した。今は絶対許されないよ。
◆闇バイトは「弱者からどれだけ巻き上げるかのゲーム」(草下)
草下:ヤクザの衰退で裏社会の秩序が崩壊したことと、テクノロジーの進化で犯罪も使い捨て、トカゲの尻尾切りが横行する人材派遣型社会になっている。これは詐欺のシステムと非常に相性がいい。
Z李:俺が厄介だと思うのは、そういう闇バイトに手を出してしまう人の中に少なくない境界知能の人がいることだな。
◆マグロ漁船や海外治験を勧めます
草下:自分にも「死ぬほどカネに困ってるから仕事を紹介してほしい」というDMがよく届くので、マグロ漁船や西成の飯場、多少のリスクを厭わないなら、海外治験を勧めています。
詐欺の受け子、出し子、強盗の手伝いなんかよりも確実です。
Z李:俺も遠洋漁業は積極的に勧めてる。あと、北海道やカンボジアで木こりをやれとも言ってるな。
借金取りや先輩とのしがらみに悩んで「今いる環境から飛べない」と思い詰めてるヤツは多いけど、正直、闇バイトでまとまったカネはつくれないぜ。
それなら遠くに行って気持ちをリセットして汗水たらして働いたほうがいい。地元に帰るころには、筋肉もいい感じについて何も言われなくなるんじゃないか(笑)。
俺も思うところがあって、注意喚起はすべきだなと、『クローズアップ現代』に出たときも言ったの。けど、伝えたいヤツらは『クロ現』見てないんだよな(笑)。
草下:それなんですよ。「テレグラムで闇バイト募集に身分証を送ってしまいました。大丈夫でしょうか?」的な相談もよく来ますが、まだ何もしてないなら、そんなのブッチしていい。
こうした当たり前のことが少しでも広がってほしいです。
【Z李氏】経歴不詳、表と裏の境界線上にいるインフルエンサー。ツイッターのフォロワー数は77万人超。座右の銘は「給我一個機会,譲我再一次証明自己」。著書に『飛鳥クリニックは今日も雨(上)』。9月に待望の下巻が発売予定。
【草下シンヤ氏】彩図社書籍編集長、作家、漫画原作者。『ルポ西成』『地元最高!』など多くの作品を手がける。著書に『裏のハローワーク』、原作に『ハスリンボーイ』など。YouTube『丸山ゴンザレスの裏社会ジャーニー』のプロデューサーでもある。
写真/産経ビジュアル PIXTA 取材・文・撮影/週刊SPA!編集部