9月9日、岡山県津山市で2歳の孫を車内に長時間置き去りにした過失致死の疑いで、祖母の柴田節子容疑者(53歳)が逮捕された。同じように孫の子育てに協力する祖父母は「孫を育てるのは重労働なんです。私たちもあり得ない話ではない」と訴える。前編記事『《岡山2歳男児車内放置死》「他人事ではない」と青ざめた…“孫育”に疲れている祖父母たち』より続けて紹介する。仕事と“孫育”両立の難しさ「このおばあちゃん(柴田容疑者)、“孫育”と仕事で疲れていたんじゃないかしら」
神奈川県に住む青木美紀子さん(64歳・仮名)はそう推測する。写真はイメージ(Photo by iStock)岡山県津山市で起きた、車内に2歳の男児を放置して死なせた事件。過失致死の疑いで岡山県津山署は10日、介護助手の柴田節子容疑者(53歳)を逮捕した。死亡した目瀬陽翔ちゃんは柴田容疑者の孫。柴田容疑者は陽翔ちゃんを保育園に送り、勤め先に向かう予定だったところ、忘れて出勤。陽翔ちゃんは9時間半にわたり、高温の車内に閉じ込められ、命を落とした。「柴田容疑者は『仕事のことで考えごとをしていて保育園に送るのを忘れてしまった』と供述しています」(全国紙社会部記者)柴田容疑者は、出産予定日が近い長女の依頼で9月から陽翔ちゃんの送迎を行っていたという。柴田容疑者は陽翔ちゃんの誕生直後から育児を手伝い、誰よりもかわいがっていたという。きっと目に入れてもいたくないほどに愛しい存在だったことだろう。結果的に愛する祖母が孫の命を奪った――。柴田容疑者はきっと身重で忙しい娘夫婦を気遣っていたことだろう。娘たちだって母親の負担は考えつつも、頼らざるを得ない事情があった。ただでさえ、忙しい子どもたちに変わり祖父母が子育てに協力することはどこにでもある話。だが、その中で悲劇は起きた。その絶望たるや想像を絶する。冒頭の青木さんは「他人事ではない」と訴える。“孫育”で疲労困憊「私も少し前に孫のお迎えを忘れて出かけてしまい、保育園から連絡がきて慌てて迎えに行ったことがありました。だからこうした事故のニュースを見るたび、今度は私が孫に同じことをしてしまうんじゃないか、という不安があります。仕事もしていますし、私も孫たちの世話で疲労困憊ですから……」(青木さん、以下同)実は青木さんのようにこの“孫育”で疲れる祖父母が増えているのだ。「“孫育”とは、親に代わって祖父母が子育てをすることです。共働き夫婦やひとり親にとって、祖父母のサポートはありがたいもの。祖父母も孫に愛情を注ぐことができるのでうれしい反面、疲れてしまう人も増えています。“孫疲れ”なんて言葉があるほどです」(女性誌編集者)共働きで忙しい子どもたちに代わって、祖父母が孫の食事や入浴の世話、保育園の送迎や通院、遊びの相手をすることもある。50~60代であれば祖父母自身もまだ仕事に従事している人も多いし、自分が子育てをしていたころと比べると体力だって落ちている。孫を育てる、ということは中高年の祖父母たちにとって重労働なのだ。3家族分の夕食を作る毎日「ワンオペや両親のサポートなしに育児をしている方々は本当に立派としか言えません。頭が下がる思いです。私はいつもヘトヘトなんですから」現在、青木さんは夫(70歳)と2人暮らし。孫育が始まったのは3年ほど前、長男(34歳)の当時2歳だった孫の面倒をみるようになったのがきっかけだった。「息子はテレワーク、嫁は医療従事者。保育園がコロナで閉園になってしまい、出産直後からサポートはしていたので、続けて私が面倒を見るようになったのです」(青木さん、以下同)そのうちに保育園は再開されたが、長男夫婦の仕事は忙しく、たびたび青木さんが迎えに行くことがあった。そこで、青木さんたちが長男夫婦を実家の近くに呼び寄せたところ、近所に引っ越してきたのだ。現在では孫の保育園の送り迎えや通院は青木さんの仕事となった。さらにそこに長女(38歳)一家も加わり、現在は息子家族・娘家族と“半同居状態”という。「娘婿は出張の多い仕事でほとんど不在なため、育児は娘のワンオペ状態。そこで私たちがサポートしているのですが……」青木さんの長女も週3~4日ほどパートに出ており、その間は青木さん夫婦が孫(2歳)の面倒をみる。希望していた保育園は全滅し、近所で孫を預けることができなかったためだ。「長女一家も出産後、しばらくうちにいました。それが当たり前になって、家を出てからも毎日晩御飯を食べにくるようになって、今では3家族分の晩御飯を作ることも多いです」愛していても身体がついていかない青木さん夫妻は、孫の送り迎えから食事の世話、遊びの相手までこなす日々なのだとか。自宅はいつも保育園状態。子どもたちが帰った後に片づけをして、自分の仕事の準備をする。ホッと一息つく頃には深夜を回っていることも少なくない。夫も仕事をしており、青木さんも週1~2回ほど近所の子どもたちに書道を教えている。仕事と家事、孫育の両立は、高齢の夫婦にとって重労働だ。「当初は長女も長男も仕事で忙しいし、子育てもワンオペ状態になることが多かった。少しでもサポートしよう、と思って買って出たのですが、さすがにきついですね。自分が子育てをしていたころのような体力はないことを実感しています。疲れはてて、ぼーっとしてしまうこともありました。夫から『大丈夫か?』と声をかけられて正気に戻ったこともありますし、週末は起きられないこともありました」「体力も気力も限界」だと青木さんは吐露する。いくら愛する子どものため、孫のため、と奮闘する親心も、寄る年波には勝てないのも当然だろう。誰でも同じ状況になり得る「私が子育てをしていた時代と現在とでは、かなり状況が違います。子どもたち自身が大変な状況はよくわかります。仕事は残業も多いし、休みもないし。稼ぎだって大して多くもないので、生活面、金銭面でも少しでもサポートしなきゃって思うのですが……。ただ、もういい加減にしてって気持ちもあります」そう弱音を吐く青木さんの葛藤はなおも続いている。「あのおばあちゃん(柴田容疑者)と私たちは一緒なんです。一歩間違えれば誰でも同じ状況になってしまう。再発防止をするにはどうしたらいいか、私にはわかりません。保育園が確認をしていれば、と言われていますけど、先生だって、みんな疲れていますから……」小さなミスが重なり起きた今回の悲劇。心身ともに疲れており、追い詰められていれば無意識でいつもと同じ行動する。いつもと違うこと、平時ならできることも、それに気を配ったり、見返したり、意識する余裕がない。そうした「ついうっかり」は誰にでも起こり得るもの。だが、そうした思い込みや不注意、「ついうっかり」が、今回のように取り返しのつかない悲劇を招くことがある。誰よりも孫を愛し、子どものためと思ってやった祖母の愛情。残された家族のことを考えると、身につまされる思いだ。・・・・・さらに関連記事『それは国民栄誉賞受賞時から徹底されていた…結婚相手を守り続ける「羽生結弦と家族の絆」』では、“知られざる秘話”を紹介しています。
9月9日、岡山県津山市で2歳の孫を車内に長時間置き去りにした過失致死の疑いで、祖母の柴田節子容疑者(53歳)が逮捕された。同じように孫の子育てに協力する祖父母は「孫を育てるのは重労働なんです。私たちもあり得ない話ではない」と訴える。
前編記事『《岡山2歳男児車内放置死》「他人事ではない」と青ざめた…“孫育”に疲れている祖父母たち』より続けて紹介する。
「このおばあちゃん(柴田容疑者)、“孫育”と仕事で疲れていたんじゃないかしら」
神奈川県に住む青木美紀子さん(64歳・仮名)はそう推測する。
写真はイメージ(Photo by iStock)
岡山県津山市で起きた、車内に2歳の男児を放置して死なせた事件。過失致死の疑いで岡山県津山署は10日、介護助手の柴田節子容疑者(53歳)を逮捕した。
死亡した目瀬陽翔ちゃんは柴田容疑者の孫。柴田容疑者は陽翔ちゃんを保育園に送り、勤め先に向かう予定だったところ、忘れて出勤。陽翔ちゃんは9時間半にわたり、高温の車内に閉じ込められ、命を落とした。
「柴田容疑者は『仕事のことで考えごとをしていて保育園に送るのを忘れてしまった』と供述しています」(全国紙社会部記者)
柴田容疑者は、出産予定日が近い長女の依頼で9月から陽翔ちゃんの送迎を行っていたという。柴田容疑者は陽翔ちゃんの誕生直後から育児を手伝い、誰よりもかわいがっていたという。
きっと目に入れてもいたくないほどに愛しい存在だったことだろう。
結果的に愛する祖母が孫の命を奪った――。
柴田容疑者はきっと身重で忙しい娘夫婦を気遣っていたことだろう。娘たちだって母親の負担は考えつつも、頼らざるを得ない事情があった。
ただでさえ、忙しい子どもたちに変わり祖父母が子育てに協力することはどこにでもある話。だが、その中で悲劇は起きた。
その絶望たるや想像を絶する。
冒頭の青木さんは「他人事ではない」と訴える。
「私も少し前に孫のお迎えを忘れて出かけてしまい、保育園から連絡がきて慌てて迎えに行ったことがありました。だからこうした事故のニュースを見るたび、今度は私が孫に同じことをしてしまうんじゃないか、という不安があります。仕事もしていますし、私も孫たちの世話で疲労困憊ですから……」(青木さん、以下同)
実は青木さんのようにこの“孫育”で疲れる祖父母が増えているのだ。
「“孫育”とは、親に代わって祖父母が子育てをすることです。共働き夫婦やひとり親にとって、祖父母のサポートはありがたいもの。祖父母も孫に愛情を注ぐことができるのでうれしい反面、疲れてしまう人も増えています。“孫疲れ”なんて言葉があるほどです」(女性誌編集者)
共働きで忙しい子どもたちに代わって、祖父母が孫の食事や入浴の世話、保育園の送迎や通院、遊びの相手をすることもある。50~60代であれば祖父母自身もまだ仕事に従事している人も多いし、自分が子育てをしていたころと比べると体力だって落ちている。
孫を育てる、ということは中高年の祖父母たちにとって重労働なのだ。
「ワンオペや両親のサポートなしに育児をしている方々は本当に立派としか言えません。頭が下がる思いです。私はいつもヘトヘトなんですから」
現在、青木さんは夫(70歳)と2人暮らし。孫育が始まったのは3年ほど前、長男(34歳)の当時2歳だった孫の面倒をみるようになったのがきっかけだった。
「息子はテレワーク、嫁は医療従事者。保育園がコロナで閉園になってしまい、出産直後からサポートはしていたので、続けて私が面倒を見るようになったのです」(青木さん、以下同)
そのうちに保育園は再開されたが、長男夫婦の仕事は忙しく、たびたび青木さんが迎えに行くことがあった。そこで、青木さんたちが長男夫婦を実家の近くに呼び寄せたところ、近所に引っ越してきたのだ。
現在では孫の保育園の送り迎えや通院は青木さんの仕事となった。さらにそこに長女(38歳)一家も加わり、現在は息子家族・娘家族と“半同居状態”という。
「娘婿は出張の多い仕事でほとんど不在なため、育児は娘のワンオペ状態。そこで私たちがサポートしているのですが……」
青木さんの長女も週3~4日ほどパートに出ており、その間は青木さん夫婦が孫(2歳)の面倒をみる。希望していた保育園は全滅し、近所で孫を預けることができなかったためだ。
「長女一家も出産後、しばらくうちにいました。それが当たり前になって、家を出てからも毎日晩御飯を食べにくるようになって、今では3家族分の晩御飯を作ることも多いです」
青木さん夫妻は、孫の送り迎えから食事の世話、遊びの相手までこなす日々なのだとか。
自宅はいつも保育園状態。子どもたちが帰った後に片づけをして、自分の仕事の準備をする。ホッと一息つく頃には深夜を回っていることも少なくない。夫も仕事をしており、青木さんも週1~2回ほど近所の子どもたちに書道を教えている。
仕事と家事、孫育の両立は、高齢の夫婦にとって重労働だ。
「当初は長女も長男も仕事で忙しいし、子育てもワンオペ状態になることが多かった。少しでもサポートしよう、と思って買って出たのですが、さすがにきついですね。
自分が子育てをしていたころのような体力はないことを実感しています。疲れはてて、ぼーっとしてしまうこともありました。夫から『大丈夫か?』と声をかけられて正気に戻ったこともありますし、週末は起きられないこともありました」
「体力も気力も限界」だと青木さんは吐露する。
いくら愛する子どものため、孫のため、と奮闘する親心も、寄る年波には勝てないのも当然だろう。
「私が子育てをしていた時代と現在とでは、かなり状況が違います。子どもたち自身が大変な状況はよくわかります。仕事は残業も多いし、休みもないし。稼ぎだって大して多くもないので、生活面、金銭面でも少しでもサポートしなきゃって思うのですが……。ただ、もういい加減にしてって気持ちもあります」
そう弱音を吐く青木さんの葛藤はなおも続いている。
「あのおばあちゃん(柴田容疑者)と私たちは一緒なんです。一歩間違えれば誰でも同じ状況になってしまう。再発防止をするにはどうしたらいいか、私にはわかりません。保育園が確認をしていれば、と言われていますけど、先生だって、みんな疲れていますから……」
小さなミスが重なり起きた今回の悲劇。
心身ともに疲れており、追い詰められていれば無意識でいつもと同じ行動する。いつもと違うこと、平時ならできることも、それに気を配ったり、見返したり、意識する余裕がない。
誰よりも孫を愛し、子どものためと思ってやった祖母の愛情。残された家族のことを考えると、身につまされる思いだ。
・・・・・
さらに関連記事『それは国民栄誉賞受賞時から徹底されていた…結婚相手を守り続ける「羽生結弦と家族の絆」』では、“知られざる秘話”を紹介しています。