ジャニーズ事務所の創業者、ジャニー喜多川氏(2019年死去)による性加害問題で、大手企業の間で所属タレントの広告への起用を見直す動きが広がってきた。
その一方、タレント自身の不祥事とは異なるとして悩む企業も多く、対応が分かれている。
サントリーホールディングス(HD)は11日、ジャニーズ事務所に被害者の救済策や再発防止策を説明するように書面で申し入れた。サントリーは「納得いく説明があるまでは、新たな契約を結ばない」とする。
東京海上日動火災保険は、所属タレントの広告出演などに関する契約を更新しないことを決めた。今年12月の期限を待たずに契約を解除することも検討。「いかなる形でのハラスメントも容認できない」とする。
日産自動車も11日、当面は所属タレントを販促物で新たに起用しないと明らかにした。ジャニーズの調査報告書と記者会見の内容が日産の「人権尊重に関する基本方針」に反しており「非常に遺憾だ」とコメントした。
同様に起用しないことを決めたある企業は、「日本よりも海外の方が人権意識は高い。海外向けに、厳しい対応をしているというアピールも必要だ」と明かす。
一方で、知名度と人気の高いタレントが多く所属することもあり、慎重な声もある。ある食品メーカーの担当者は「タレント自身が罪深いことをしたわけではない。CMは事務所ではなく、タレント個人のイメージが機能している面があるので悩ましい」と対応を決めかねている。
衛生用品を手がける健栄製薬も、「起用しているタレントが被害に遭っていた場合、契約を打ち切ると二度苦しめることになってしまう」として契約満了まで起用を続ける方針だ。
企業の危機管理に詳しい「井之上パブリックリレーションズ」の井之上喬会長(京都大学経営管理大学院特命教授)は、「タレントの起用は各企業の判断だが、その根拠は十分に説明すべきだ」とする。その上で、「契約を解除する場合も、それだけで終わらせるのではなく、再発防止や被害者救済を事務所に促すなど、スポンサーとしての責任を果たすべきだ」と指摘する。