乳がんの診察で医師から激怒されたワケ。ショックで混乱する私に語りかけてくれたのは…

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2016年のクリスマスイブに突如乳がん宣告。(ステージB)。晴天の霹靂だった「がん宣告」から約1年間、泣いたり笑ったり怒涛の日々を駆け抜けた、私のがん治療ドキュメンタリーを連載でお届けしています。 クリニックで乳がんと診断され、紹介状を持って都内のがん専門病院を訪れた初診の日。
◆ここにいる人は、みんな「がん」
「いよいよ始まる」と緊張した気持ちで病院に入りました。広々とした受付ロビーは、たくさんの人であふれかえっていました。
不思議なことに、この光景を見てわたしは正直ほっとしました。なぜなら、ここはがん専門病院。ここに来ている患者さんは全員「がん患者、もしくはその家族」のはずです。けれど、わたしが想像していたような「どんより感」は、この病院にはありませんでした。
キレイな20階建てのビル、ガラス張りのオープンな雰囲気のロビー。なんとなく全体的に雰囲気が明るいのです。外来なので当たり前ですが、パッと見てすぐにがんに見える人はとても少なく「ここにいる人ってみんな『がん』なんだ。私だけじゃないんだ」と思うと、一人じゃないんだという気持ちが湧いてきました。
乳がん宣告を受けてから、ずっと一人であれこれ調べて不安になっていた私は、ここにいる人たちみんなと共にがんの治療を頑張ろう、と前向きな気持ちになりました。
◆緊張しながら診察室に入ると……
受付を済ませ、乳腺外科の待合室へ。こちらも人でごった返していました。ドキドキしながらしばらく待って、診察室へ。診察は乳腺外科長のA先生でした。
がん関連のWEBサイトで先生のインタビューを見たことがあり、写真で優しそうな印象だなと思っていましたが、実際の先生は少し怖そうで、ぶっきらぼうな感じでした。
先生は紹介状の内容を読んでから「手術は必要と思いますが、まずは精密検査してからですね」と言って、手元のパソコンで精密検査の予約をじゃんじゃん入れ始めました。
もちろん病院を最優先にするつもりではいましたが、それでも都合の悪い日もあるため「この日は都合が悪いのですが……」というと少し不機嫌な様子に。「たくさん患者さんがいて検査の予約がなかなか取れないからこの日で!」と押し通されてしまいました。
乳がんの治療が始まることで不安でいっぱいな私は、もっと詳しい説明が聞きたかったのに、何の説明もなく精密検査の予約表だけ渡されたことがショックでした。
がんの専門病院だから、乳がんの患者さんなんて1日に何百人も来るのだろうし、いちいち患者さんの不安に寄り添う暇はないのだろうと想像はできましたが、少しだけ質問をしたくて先生に話しかけました。それがなんと先生の地雷を踏んでしまったのです!
◆先生がいきなり激怒!ショックで呆然自失
私は当時、腰痛や肩こりがひどくて整体に通っていました。そちらの整体が気持ちよかったので、がんの治療をしながらでもときどき通ってよいか聞きたいと思っていました。抗がん剤では免疫力も落ちるとのことだったし、整体と併用できたらよいなと思ったのです。
そこで先生に「手術をはじめ治療はもちろんこちらでお願いするつもりですが、治療中に整体など、別の施術を受けても問題ないですか?」と聞きました。もう少し言い方は違ったかもしれませんが、とにかくその質問で先生の顔色が変わりました。
ぶっきらぼうで口数が少ない先生が、急にスイッチが入ったように大声でまくしたてました。

と吐き捨てるように言われたのです。
私は地元の小さな整体院に行っていたので〇〇の病院、が何かはわからないのですが、怒鳴られながらも、どうやらトンデモ治療を提唱する病院のことを言っているのかなぁと思っていました。
混乱しながらも、先生がわたしの質問をわたしの意図と違う受け止め方をされて、わたしが非科学的療法を受けようとしていると勘違いされたのだろうなというのだけは理解できました。
◆看護師さんに不安とショックをぶちまける
不安と緊張でドキドキしながら初診で訪れ、いきなり先生にまくしたてられて驚きとショックのあまり固まってしまった私。その場にいた看護師さんが慌ててフォローに入ってくれ、「とにかくまずは精密検査をするので、あとは診察室の外で私たちとお話ししましょうね」と言ってくれました。
先生は、検査の結果が出る頃に、勝手に次回の診察予約を入れて、予約表をわたしの前に突き付けて、まさかの初診終了。
思わぬ展開に唖然としたまま看護師さんに案内されて診察室から出ました。少し人が少ないエリアに行き、看護師さんが「ごめんなさいね、先生ちょっと怖かったよね」とフォローしてくれました。
私はショックと怒りで混乱してしまい、隣にいる看護師さんは悪くないのは分かっていても、怒りを抑えられません。
「ここの病院はがんの人しか来ないから、『がん慣れ』しているのかもしれませんが、患者は初めてのことで不安です。ここでは患者さんの不安な気持ちに寄り添うことはしないのですか?」と気持ちを吐露しました。
看護師さんは「先生はちょっと気難しいときが多くて……昔はそこまでじゃなかったし、いい先生なんですけどね……」とフォローを入れつつ、こう話してくれました。
「でも、患者さんひとりひとり、みなさん不安なのはわかります。患者さんが多いので、先生は長く時間が取れないことも多いですが、説明不足だったり、不安な気持ちになったときは、私たちがしっかりフォローしますので、なんでも相談してください。相談窓口もありますので、安心してくださいね」
優しくそう言ってもらえて、少し気持ちが落ち着きました。そして診察室では聞けなかったこれから予想される治療の流れや、かかる時間などをざっくりと教えてもらいました。
◆看護師さんに質問し、聞きたかったことを消化
エコーもマンモグラフィも細胞診もクリニックでやったのに、なぜ再び同じ検査をするのか不思議でしたが、それも聞いてみると、手術をするにあたってさらに詳細の精密検査をもう一度しなくてはいけないとのこと。
不安に思っていたこと、聞きたかったことを消化できて、かなりラクになりました。
出産時の緊急帝王切開以外に外科手術を受けたことがなく、手術までのプロセスも知らなかったので、検査の必要性もわかりました。
先生は忙しいと思うけれど、診察室でいきなり予約をぶち込む前に、説明をひとこと添えてくれたらよかったのに。何かの検査や治療は、必要性や内容などの詳細を説明してもらって納得してからやりたい私は、なおさらそう思いました。
◆病院選びを間違えたかも!? 不安は募る
気持ちは落ち着いたものの、初診で先生に理不尽に怒鳴られたことで、看護師さんのフォローはあったものの「病院選びを間違えたかも?」と思いました。

今ならまだ何も始まっていないのだから、もう一度別の病院に紹介状を書いてもらい、病院を変わったほうが良いのではとも考えました。もしくは先生を変えてもらおうか。けれど科長から違う人に変えてもらったら気まずいのでは、などグルグルと考えていました。
そんな気持ちになりながら、どんよりした気分で次回の診察予約の票を見ました。すると、次回の診察の先生は、初診の先生と違う名前になっていました。わたしが変なことを言うから、担当を変えられちゃったのかなと想像しましたが、正直ほっとしました。けれどそれはそれで、次の先生がどんな先生か心配になってきました。
◆担当医になる人を徹底リサーチ
次回の診察を担当するS先生の情報はないかと病院内を探しているときに、S先生が行うという患者向け説明会のチラシを発見。直接S先生を見られるチャンスなので、先生を見てみて、またA先生のような雰囲気だったら、別の病院に行くことを考えようと思って、参加申し込みをしました。
数日後、説明会の日がやってきました。会場に現れたS先生は、線の細い、優しそうな先生。A先生とは真逆のイメージです。手術を目前に控えた患者に向けた説明会なので、まだ私には分からないこともありましたが、先生の対応を知りたくて1つ質問をしてみました。すると、とても親切で丁寧に答えてくださりました。先日の初診のときの不安が、スゥっと消えるような気持ちでした。
担当医がこのS先生ならいろいろ相談ができそうな気がする。そう思って引き続きこちらの病院で検査を受けることにしました。このS先生との出会いが、運命の出会いでした。S先生のおかげで、すべての乳がん治療を納得して受けることができたと思います。
ショッキングなスタートから、なんとなく幸先が良い感じに。乳がん治療というレアな体験を、せっかくなら楽しんでやろうじゃないの、という前向きな気持ちに変わっていきました。
<文/塩辛いか乃>

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