あの「OSO18」が返り討ちにあって逃走…!最凶ヒグマに勝った、伝説の乳牛「リオン」と牧場主の「知られざる秘話」

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「ようやく駆除されました。少しばかりですが、うちのリオンも貢献しましたね」
こう笑って話すのは、北海道・厚岸町にある久松牧場の久松昭治さんだ。
2019年から標茶町と厚岸町で66頭もの牛を襲い続け、「最凶ヒグマ」と恐れられたOSO18だが、実は返り討ちにされたこともあった。
ありし日の「OSO18」写真:標茶町提供
昨年8月20日、OSO18は久松牧場で乳牛を襲撃しようとしたが、反撃され逃走していたのだ。
「朝6時頃、うちのお母ちゃん(久松さんの妻)が、搾乳の時間になっても戻ってこない牛がいることに気づきました。放牧地を探すと、1頭の乳牛が立ちすくんでいました。それがリオンです。当時は月齢24ヵ月、体重500kg程度でした。
OSO18に勝った乳牛「リオン」
リオンの両肩には、鋭い牙の痕が刻まれていて、ぬかるみを引きずられたのか全身泥だらけでした。襲われた時間はわかりませんが、リオンの体についた泥の乾き具合から見て、夜中だと思います」(久松さん)
久松牧場では基本的に乳牛の角を切り落とさないため、リオンには先端が鋭く尖った角が生えていた。
「リオンはまだ若いので角はカーブしていませんでした。鬼の角のような感じです。その左の角に、ゴワゴワとした茶色の毛が3本残っていたのです。DNA鑑定したところ、OSO18の毛だと特定されました。
おそらくリオンは、横からOSO18に噛まれた拍子に首を振って抵抗したのでしょう。反撃されたOSO18はそのときにケガをしたと思います」
OSO18は牛の背骨を折り、身体を真っ二つに引き裂くほどの怪力を持っていた。そんなバケモノを返り討ちするのは簡単なことではない。
「リオンは同じ月例の牛と比べると少し小さいのですが、とにかく気性が荒い。言うことを聞かないので困るほどです。また首が太く、あの首と鋭い角で反撃されたら、OSO18といえど、アバラくらい折れたはずです。
例年、9月ごろまではOSO18による被害が出ましたが、この年は返り討ちに遭って以降、OSO18はぱったりと姿を現さなくなりました。OSO18は初めて牛に反撃されたのではないかな。賢いOSO18は、牛は反撃することもあると学んだのかもしれません。
農家は皆、困っていましたからね。これで牛を襲うのをやめてくれればいいな、とひそかに期待していました」
久松さんの言葉通り、リオン襲撃失敗以降、OSO18による被害は劇的に減った。今年6月24日、標茶町の牧場で生後14ヵ月の乳牛1頭の死骸が見つかったが、この一件だけだ。
この約1ヵ月後、OSO18はハンターによって駆除されたが、その姿はやせており、リオン襲撃失敗以降の“苦境”を物語っているようでもあった。
「あっけない最後でしたね。でも、ひとまず解決してよかった。農家ができる対策には限界があります。どこが狙われても不思議ではないというか。ある意味、運次第という部分もありました。
農家のなかには『リオンのおかげだ』と言ってくれる方もいます」
返り討ちから1年。リオンはどうしているのか。
「OSO18に襲われた傷はなかなか完治しませんでしたが、5月にようやく治って傷跡もなくなりました。元気にやっています」
久松さんに話を聞いたのは、OSO18駆除のニュースが大々的に報じられた8月22日。久松さんが明かす。
「実はこれから病気の治療のため入院します。家を出る前、リオンに『おい、捕れたぞ~』と挨拶してきました。牛を残して入院することに不安がありましたが、これで安心できます」
4年ぶりに牧場に訪れた平穏。リオンは久松さんの帰りを持っている。
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さらに関連記事『頭部に命中した3発でようやく…最凶ヒグマ「OSO18」が絶命した“最期の瞬間”と、駆逐したハンターの「意外な正体」』では、現場の生々しい証言を紹介しています。

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