静岡産ミカンで宇宙食、中1少女が挑戦中…試作300品で最大の課題にめど

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

静岡特産のミカンを使った宇宙日本食の開発に、静岡市清水区の中学1年増田結桜(ゆら)さん(12)が挑戦している。
宇宙食の採用には、厳格な審査を乗り越えて、宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))の認証を得る必要があるが、試行錯誤を重ねながら少しずつ夢に近づいている。
「フレッシュさと、しっかりとした食感が魅力」。増田さんはそう自信をのぞかせる。作っている宇宙食はミカンの果肉と刻んだ皮をふんだんに使ったゼリー。小学5年の頃から開発を進め、ようやく最大の課題だった「凝固剤」選びにめどが立った。
凝固剤が重要なのは、無重力の宇宙空間で水分が飛び散ると精密機械の故障につながるおそれがあるからだ。くず粉を使うと甘みがなくなり、寒天では固まりすぎた。ゼラチンは舌触りも悪かった。友人の食べるゼリーの材料やスーパーに並ぶ食材の裏面を逐一チェックし、試行錯誤の末、海藻や種子の抽出物からできた「アガー」を使うと、味を残して固まることがわかった。試作品は約300品に上った。
実は最初から宇宙食の開発を志したわけではなかった。小学4年の学習塾の授業で「宇宙の謎は5%しか解けていない」と聞き、宇宙飛行士に憧れた。「それまではオリオン座とブラックホールしか知らなかった。こんなに知らないことがたくさんあるんだと思った」と振り返る。
だが、重力加速度を強く感じる遊園地のジェットコースターが大の苦手だった。宇宙に関する本を読みあさり、「食で宇宙飛行士を支えられる」と思った。
宇宙食開発の工程には、書類審査や製造場所への立ち入り検査など多くのクリアすべきハードルがある。増田さんは今年度中に書類を提出し、最終的には2026年までに宇宙日本食の認証取得を目指している。
そのため、名古屋コーチンみそ煮で宇宙日本食の認証を得た経験がある静岡県焼津市の「石田缶詰」の協力を得たほか、昨年11月には静岡県内外の大学生らと「チームゆら」を結成した。資金集め、書類審査、開発などを分担して進めている。チームのホームページ(https://team-yura.jp/)ではクラウドファンディングについても紹介し、開発にかかる費用の協力を呼びかけている。
増田さんの憧れの存在は、国際宇宙ステーション(ISS)で日本人初の船長を務めた若田光一さん。「必ず若田さんに食べてもらいたい」と意気込んでいる。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。