夏前にしておくべき「家のゴキブリ対策」を専門業者に聞いた。“部屋への侵入経路”や“効果のない対策”が明らかに

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気温と湿度が上がる季節、「G」の気配が心配になってくる。清潔な部屋を心がけていても、いつの間にか台所の隅に……そんな悪夢を防ぐには、その生態を知ることが肝心だ。
“ゴキブリ博士”としてYouTubeでの情報発信も積極的に行っている、害虫駆除会社「クリーンライフ」の大野宗社長に自宅で有効なG対策を聞いた。

「一般家庭ではどんなに気をつけていても、とくに『クロ』の侵入を完全に防ぐには限界があります。

『クロ』の飛翔能力は高くないので、戸建てより集合住宅で階数が上の部屋ほど室内に現れる確率は下がりますが、壁や排水管を伝ってベランダなどに迷い込むことも考えられます」

◆1回の交尾で一生分の卵を産む可能性も

「Gのメスは1回交尾したらオスの精子を溜め込んで一生分の卵を産むことができます。昔、水と髪の毛一本だけで『クロ』が何日生きられるか実験したら、飼育ケースにメス1匹しか入れていないのにどんどん卵を産んでいました」

「クロ」はひとつの卵鞘(らんしょう、卵の集合体)から通常15~28匹、「チャバネ」はひとつの卵鞘で30~40匹が生まれるという。知れば知るほど厄介な虫だ。なぜ飲食店での完全駆除は可能なのか?

「脱皮を繰り返して成長するGは、幼虫も成虫も生息場所や餌も変わらないので、駆除業者からすると同じ方法で駆除できます。

また、『チャバネ』は寒い外では生きられず、とくに卵を持つメスや生まれたての幼虫はほとんど動かず、独身のオスでも建物を変えるほど行動範囲は広くない。Gが住み着きにくい環境なら、わざわざ隣の建物などから移り住むようなこともあまりありません」

◆蒸散殺虫剤タイプはG駆除に不向き

ただ、隣の物件で蒸散殺虫剤を使われたときなどは、住処を移すこともあるようだ。

「蒸散タイプは空間にガスを充満させるので、空間を飛翔しているハエや蚊には有効ですが、そもそもGは空間にいるのではなく、家具の裏などに潜んでいます。

問題は床下や冷蔵庫の裏など隙間の奥にいるGで、そこまで致死濃度のガスが瞬時に行き渡らなければ逃げるだけ。しかも、換気するとガスの効果は無くなります」

つまり、これら蒸散させている時しか効果はなく、換気後に侵入してくるGに対しての抑止力にはならないということだ。

最近発売された「電気で加熱して常時薄いガスを出し続ける蒸散剤」は上記のタイプと異なり、Gがあらたに侵入してくるのを防げるが、Gを死滅させるほどの効果はないという。

大野氏が推奨しているのは“毒餌タイプ”だ。

「当社も含めて、多くの駆除業者はベイト剤と数ヶ月間効果が持続する有機リン系の液体タイプの薬剤などを組み合わせて使っていますが、一般家庭ではベイト剤だけで十分です。

業者が使うベイト剤も市販商品の“毒餌タイプの薬剤”と中身は似ています。1回の駆除作業を徹底的に行えば、年2回の作業でも完全駆除は可能です。逆に1箇所でもコロニーを見逃すと、すぐにGは増えてしまいます」

◆G駆除の2大ポイント

基本的なことだが、ゴミやモノが多いとGが好んで隠れられる場所が増えるため、部屋を片付けて衛生的な状態を保つことは大切だ。

「『チャバネ』は5mm、『クロ』は1cmほどの隙間が一番落ち着く。飲食店の場合、厨房機器の下周りと、厨房機器と壁の隙間にゴミが多く、すべて除去する必要があります。そのゴミ掃除だけで3時間くらい掛かることもあります。

すべてのゴミをかき出さないとGをすべて殺し切れないし、新たな個体が入り込んですぐに数を増やしてしまいます」

毒餌を置く際はいかにGが毒餌に巡り合うかがポイント。多ければ多いほど効果的だが、侵入経路や習性を踏まえて設置することも大切だ。Gは空気が澱んでいて、暖かくジメジメした暗い場所、触角が2つの面に当たる隙間などを好み、移動時も隅を歩く習性があるという。

「飲食店の駆除作業では毒餌を1000か所に打ち付けることもありますが、一般家庭では数個から10個もあればいいと思います。Gは脱皮に油分が必要で、水も生息の絶対条件ですが、油分でベタベタした面や埃の上は脚を取られるので意外と歩きたがりません。Gの気持ちになって部屋の四隅や壁・床の隙間、冷蔵庫や水回りの付近などにも置きましょう」

毒餌がGを誘き寄せられる範囲は製品状態や設置場所によって異なるが、20cm程度を目安に考えておいた方がいいそうだ。その効果は開封直後が最も強く、1ヶ月もすると誘き寄せるための臭いが薄れてしまう。

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