東京電力福島第1原発から出る処理水について、早ければ24日からの海洋放出開始が決まった。
岸田文雄首相は22日の関係閣僚会議で「風評影響やなりわい継続に対する不安に対処すべく、政府として責任を持って取り組む」と表明。福島県内の漁業関係者らからは「約束は破られた」といった怒りや、「風評被害に慣れてしまった」など諦めの声が聞かれた一方、「共存は避けられない」と理解を示す人もいた。
新地町の漁師小野春雄さん(71)は「大臣や首相は一部の漁業関係者と話すばかりで、最後まで多くの地元漁師らと直接話して、理解を働き掛けなかった。『関係者の理解なしにいかなる処分もしない』という政府の約束は破られたと思っている」と憤る。「漁業関係者にとって処理水の放出はデメリットばかりで、(魚の)買い控えは起こる」と吐露した。
「放出には反対だが、どうせ流すつもりだろうと諦めている」というのは、相馬市で鮮魚店を営む男性。懸念される新たな風評被害についても「最終的には消費者心理の問題。県外で買い控えなどが起こるだろうが、原発事故以来続いていることで慣れてしまった」と語った。
相馬市で80年以上続く海産物問屋の社長佐竹真理子さん(62)は放出には反対だとしながらも「陸上保管を続けるわけにもいかず、処理水との共存は避けられない」と打ち明けた。一方、風評被害対策については、「お金だけでは解決しない。国や東電には賠償ではなく安全性の周知に特に力を入れてほしい」と注文を付けた。