未知なる生物、近くにいた 若狭湾で新種のエビ類続々見つかる

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京都府北部の若狭湾で、昨年から今年にかけて新種のエビ類の発見が相次いで報告されている。
発見場所は過去にも調査を行ってきた地点だが、採集道具や調査頻度の変更が影響したという。これまでの前提を覆す発見に研究者らは「生物相が貧弱とされてきた日本海に、エビ類の未知なる生物多様性がある」と沸き立っている。
2種類の新種を発見したのは、京都大フィールド科学教育研究センターや千葉県立中央博物館などでつくる研究グループ。昨年9月に高級釣り餌の「ボケ」として知られるスナモグリ類の新種を、今年5月には「パチン」という特徴的な音を出すことで知られるテッポウエビ類の新種発見を国際学術誌に発表し、それぞれ「ワカサスナモグリ」「ワカサムラサキエビ」と命名した。
同研究センターの邉見(へんみ)由美助教によると、ワカサスナモグリはセンターの拠点の一つである舞鶴水産実験所(同府舞鶴市)そばの水深26~28メートルの海底から見つかった。
通常使う底引き網による調査ではなく、環境調査などで用いられる「スミス・マッキンタイヤ型採泥器」という道具を使って調べたところ、甲長6ミリほどの小型のスナモグリ類を泥の中から発見。詳しく調べると触角や脚の形に特徴があり、ミトコンドリアのDNAの配列などから新種と判明した。
スナモグリは海底に巣穴を作って生息しているため、通常の底引き網を使った調査では採集が困難だった。今回は20センチ程度まで深く採集できる採泥器を使ったことが功を奏したとみられる。今回の新種は大西洋に分布の中心がある種類と近いといい、「日本まで7千キロ以上も分布の範囲が拡大したことは生物地理学的に重要な発見」(邉見助教)。
また、ワカサムラサキエビは同府伊根町沖の水深90メートル地点から採泥器を使った調査で見つかった。年に数回だった調査頻度を月1回にしたことで、全長10ミリほどの抱卵したメスの個体を発見できたという。
しかし1年間の継続調査でも採集できたのは1個体のみで、そもそもの個体数が少ないとみられる。今後はオスの個体の発見も含め、研究を進めたいとしている。
邉見助教は「京都の海の生物多様性が明らかになりつつある。次に見つかる生物も楽しみにしてほしい」と話している。(杉侑里香)

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