インバウンド(訪日外国人観光客)がコロナ禍前の水準に回復目前で、日本全国の観光地に多くの外国人観光客が押し寄せている中、飲食店では日本のローカルルールを受け付けない客への対応に苦慮している。悪態をつかれる事例もあり、中国人の団体旅行が本格化する前に改めて問題となっている。
外国人観光客であふれる観光地は夜の時間帯はどこの店も満席状態。インバウンドで、さぞかし笑いが止まらないだろうと思いきや、関西地方で飲食店を経営する店主は「とんでもない目に遭いましたよ」と悲鳴を上げる。先日、外国人グループが来店し、オーダーを巡って、すったもんだがあった。
「ワンドリンク、ワンオーダー制と説明しても『何でドリンクを注文しないといけないのか』と聞かない。日本の水はタダだからといって、全員が水だけのオーダーではたまらない。注文も『コースはなぜ2人前からしかないのか』『1人前にしろ』とダダをこねる状況でした」(同)
トラブルとなったのは会計時だ。オーダーしたのに提供されなかった分も請求されたと騒ぎ出した。一皿でまとめて提供したことによる完全に客側の勘違いだというが、別の客に対して「この店はやめた方がいい」と営業妨害に出ただけでなく、店の扉を蹴飛ばしもしたという。
さらに後日、口コミが投稿できるサイトで、「ぼったくり」「観光客をだまします」との書き込みを連続で投稿され、“ヤバイ店”のレッテルを貼られてしまったのだ。
店はサイト運営側に口コミの削除申請をしているものの、いまだ対応してもらえないという。「扉を蹴られた時点で警察を呼ぶべきでした。投稿したグループはもう日本にはいないので、テロに遭ったようなもの。ほかの店でも同じようなことが相次いでいる。トラブルを避けるために注文をQRコード決済にしたり、外国人にはなじみがないお通し代ではなく、チャージ代に改めるなどしたりしているところもあるが、なかなか文化の違いで理解されない」(同)
飲食店でのトラブルはインバウンド需要が高まった東京五輪前にも問題になったが、コロナ禍でいったん解消。インバウンド復活で再び問題となっている。そこにネットの口コミサイトでの報復行為ともいうべき新たな手法が出てきて、店側には死活問題となっている。また、中国の団体旅行解禁で、10月以降に大きな波が押し寄せると見込まれ、観光地ではオーバーツーリズムが危惧されている。
都内の飲食店関係者は「中国人で多いのは、複数で来て、ラーメン1杯しか頼まずにシェアしようとする。1人1杯をお願いしているが、なぜオーダーしないといけないのか理解してもらえない。行列ができているのに食べ終わった後もずっと話し込んでいる客も多い」と指摘した。
ドタキャンも多く、連絡先に電話しても使われていない番号だったり、不通だったりで、キャンセル料も取れずに泣き寝入りするしかないという。
前出の店主は「中国人客はドリンクの持ち込みが多く、食事中にも自販機に買いに行くし、カップラーメンを持ち込んで、『お湯をくれ』とやりたい放題」と話す。
マナーの悪さに耐えかねて、外国人客をNGにしている店もあるが、「差別」と批判され、炎上したケースもある。「外国人に来てもらうのはウエルカムだが、最低限のシステムやルールは守ってほしい。低評価に精神的に参って、お店をたたもうというところもある」(同)
インバウンドの特需に沸いているように見えて、裏では深刻な事態を招いている。