石原知事肝いり「環境浄化作戦」から20年…新宿・歌舞伎町のいま 警視庁が情報収集する「メンコン」トラブル

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脱コロナで街に人が戻ってきた。台風直撃とはいえ、お盆休みを迎え観光地には多くの人が集まっている。各地の繁華街も例外ではない。夏を迎えて今日も各所で大賑わいだ。
【写真を見る】トー横には、外国人観光客も多い 繁華街といえば、やはりここだろう。「日本最大の歓楽街」と呼ばれる東京・新宿・歌舞伎町。その様子はどうだろうか。 何かと話題になる「トー横キッズ」は、新宿コマ劇場の跡地にそびえ立つ新宿東宝ビルの「横」に集まる若者たちを指す。彼らは過度の飲酒やオーバードーズ(市販薬の過剰摂取)などの行為が予見されるため、夏休みに入ったこの時期、警視庁の私服警官が巡回・取締りを強化している。

防犯カメラ(中央真上)が監視する歌舞伎町のセントラルロード また、近くの大久保公園では、個人で売春を行ういわゆる「立ちんぼ」の女性が数多く見受けられ、すでに多くのメディアで取り上げられている。ホストクラブに通う資金を捻出するためだったり、生活費を稼ぐためだったりと理由は様々だが、今ではその珍しさからか外国人観光客が見物に来ることもあるという。 8月のある夜、午後8時ごろの歌舞伎町を歩いてみた。平日だが人通りは多い。飲食店も盛況だが、よく見ると観光客だろうか、家族連れも含め、外国人の多さが目立つ。大久保公園に足を向けると、路上や公園の柵にもたれて立つ女性の姿が目に入る。一見して外国人とわかる女性もいるが、若い日本人女性も。それを遠巻きに見つめる男性たちの中には、前述の観光客と思しき外国人も散見された……。 東京都知事だった石原慎太郎氏の肝入りで実施された、歌舞伎町の「環境浄化作戦」から今年で20年。繁華街を「浄化」することは容易ではないと思うのだが、歌舞伎町はどう変わったのか。歌舞伎町ビル火災後に設置された防犯カメラ 2001年9月、死者44人を出した歌舞伎町・明星ビル火災が発生した。放火犯を捕まえることはできていないものの、警視庁は翌年、2億円の予算を投じて歌舞伎町に50台の防犯カメラを設置する。 03年6月、2期目を迎えた石原都知事は「東京の犯罪を一挙に減らす」という公約の通り、警察官僚で広島県警本部長だった竹花豊氏を治安担当副知事に起用し、歌舞伎町の本格的な浄化作戦を始める。石原都知事の本気度が伺えた。「石原都知事という大きな後ろ盾もあり、警察当局による店舗型風俗店の取締りは、かなり“イケイケ”でした。怒声を発しながら店の備品を乱暴に扱ったり、破壊したりすることもあったと聞きます。そうやって威圧したあと、恐怖で震える女性従業員と服を脱いでいる男性客にプレーを再現させ、採証作業として写真を撮るなどしていました。当初は見せしめのために一部の店だけが狙い撃ちされるのではないかと見ていた同業者も震え上がり、慌てて閉店したところもありましたね」(当時、取材にあたった社会部記者) こうした取締りにより、卑猥な店名の看板を街中に乱立させていた風俗店が壊滅し、外国人観光客などに対しても恥ずかしくない街になったという側面はある。 環境浄化対策は風俗店だけでなく暴力団や不良外国人にも及び、個室マッサージ店や違法カジノ、猥褻ビデオ店など多くの店が廃業に追い込まれた。数百人の暴力団関係者が逮捕・起訴され、1000人以上の不法滞在外国人が摘発された。 05年には東京都迷惑防止条例(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例)と、ぼったくり防止条例(性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等及び性関連禁止営業への場所の提供の規制に関する条例)が改正され、何かと評判が悪かったしつこい客引きの一部は目立たぬように活動するようになり、風俗店への公然としたスカウト行為もあまり見られなくなった。また、暴対法(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律)による暴力団への締め付けもあり、一目でそれとわかる人物が街を闊歩する姿を見ることも少なくなった。水面下に潜った“サービス” かつてに比べ性風俗店の派手なネオンや卑猥な看板も目につかない歌舞伎町。しかし、その実態はどうなのか。「風俗店の非店舗化、つまりホテルへの出張サービスに業態を変えました。店舗を構えない分、経費がかからないのですが、マイナス面も多い。サービスの現場がホテル内という密室のため、トラブルも急増しているのです。従業員の目が届く店舗型ではありえなかった、女性従業員への違法薬物の使用や強要、過剰なサービスの要求や盗撮などです。こうした被害に遭わないために個人で客を取る、つまり大久保公園の周りに立って直接客を取る女性も増えるのです」(元風俗店従業員) 浄化作戦でいくら店を摘発しても、歌舞伎町に性欲を満たしに来る男性の総量は変わらない。基本は届け出制の店舗型風俗は警察も管理しやすいのだが、今は水面下でサービスが行われるため、警察の目も届きにくい。 風俗店だけでなく飲食店にも大きな変化があったという。かつては深夜以降も平気で営業していたキャバクラやクラブも、取締りの強化により少なくなった。多くの飲食店が閉まる午前1時ごろ、街を浮遊する男性を狙ったぼったくり店への勧誘も相変わらず続いている。「最近、警察が目を光らせているのが、出会い系マッチングアプリを使った事例です。素人女性を装い、SNSで知り合った男性を裏で手を結んでいるぼったくり店に連れ込み、法外な料金を取るというもの。歌舞伎町だけでなく各地の繁華街で同様の事案があり、逮捕のたびにニュースになりますが、被害はなくなりません。あわよくば、という下心を抱いた男性がいる限り、この手の犯罪もなくならないのでしょう」(前出・記者)少女を狙う新しい手口「マッチングアプリによるぼったくりもそうですが、もっと悪質な事例もあります」 と言うのは、歌舞伎町に精通するライターの仙頭正教氏。ここにきて警視庁も本格的に検挙に乗り出し、情報収集を進めているのが、メンコン(メンズコンセプトカフェ)だ。 メンコンとは、和装や学生服、あるいは王子様や執事、人気ゲームのキャラなどのキャラクターに扮した男性店員がいるカフェのこと。「店員の中には俳優の卵や地下アイドル活動をしている人もいて、10代の少女を中心に人気を集めています。普通に営業している店はいいのですが、中には悪質な店もあります。問題はお客さんが推しの店員にお金を落とすこと。推しの男性店員とチェキが撮れるといった特典や、ただのミネラルウォーターなのにキラキラしたボトルに入った水を1本10万円で売りつけたり、推しに金をつぎ込むことで店外デートできたりするのですが、客の大部分は未成年です。でも、やっていることはホストクラブと変わりません」(仙頭氏) 警視庁はこの4月と5月、歌舞伎町のメンコン2店を摘発し、店長や店員を逮捕している。うち1店では、客が18歳未満の少女と知りながら40万円のシャンパンを購入させていた。もう1店でも、2人の少女が未成年であると知りながら30万円のシャンパンを飲ませていた。2人は逮捕された店員のファンで、約80万円を支払っていたという。「2件目で逮捕された店員は、この件とは別に、やはり未成年の少女と店の中でわいせつな行為をしていた件でも逮捕されています。まだ分別のつかない未成年の少女をたらし込むのは許せないことです。ただ、推しの男性店員に夢中になるあまりお金をつぎ込んでしまうのも問題で、そうしたお金に困った子が、売春などの違法なビジネスに手を出すもとにもなる。警察には、悪質店で被害を受けた本人だけでなく、親からの相談や被害も寄せられています」デイリー新潮編集部
繁華街といえば、やはりここだろう。「日本最大の歓楽街」と呼ばれる東京・新宿・歌舞伎町。その様子はどうだろうか。
何かと話題になる「トー横キッズ」は、新宿コマ劇場の跡地にそびえ立つ新宿東宝ビルの「横」に集まる若者たちを指す。彼らは過度の飲酒やオーバードーズ(市販薬の過剰摂取)などの行為が予見されるため、夏休みに入ったこの時期、警視庁の私服警官が巡回・取締りを強化している。
また、近くの大久保公園では、個人で売春を行ういわゆる「立ちんぼ」の女性が数多く見受けられ、すでに多くのメディアで取り上げられている。ホストクラブに通う資金を捻出するためだったり、生活費を稼ぐためだったりと理由は様々だが、今ではその珍しさからか外国人観光客が見物に来ることもあるという。
8月のある夜、午後8時ごろの歌舞伎町を歩いてみた。平日だが人通りは多い。飲食店も盛況だが、よく見ると観光客だろうか、家族連れも含め、外国人の多さが目立つ。大久保公園に足を向けると、路上や公園の柵にもたれて立つ女性の姿が目に入る。一見して外国人とわかる女性もいるが、若い日本人女性も。それを遠巻きに見つめる男性たちの中には、前述の観光客と思しき外国人も散見された……。
東京都知事だった石原慎太郎氏の肝入りで実施された、歌舞伎町の「環境浄化作戦」から今年で20年。繁華街を「浄化」することは容易ではないと思うのだが、歌舞伎町はどう変わったのか。
2001年9月、死者44人を出した歌舞伎町・明星ビル火災が発生した。放火犯を捕まえることはできていないものの、警視庁は翌年、2億円の予算を投じて歌舞伎町に50台の防犯カメラを設置する。
03年6月、2期目を迎えた石原都知事は「東京の犯罪を一挙に減らす」という公約の通り、警察官僚で広島県警本部長だった竹花豊氏を治安担当副知事に起用し、歌舞伎町の本格的な浄化作戦を始める。石原都知事の本気度が伺えた。
「石原都知事という大きな後ろ盾もあり、警察当局による店舗型風俗店の取締りは、かなり“イケイケ”でした。怒声を発しながら店の備品を乱暴に扱ったり、破壊したりすることもあったと聞きます。そうやって威圧したあと、恐怖で震える女性従業員と服を脱いでいる男性客にプレーを再現させ、採証作業として写真を撮るなどしていました。当初は見せしめのために一部の店だけが狙い撃ちされるのではないかと見ていた同業者も震え上がり、慌てて閉店したところもありましたね」(当時、取材にあたった社会部記者)
こうした取締りにより、卑猥な店名の看板を街中に乱立させていた風俗店が壊滅し、外国人観光客などに対しても恥ずかしくない街になったという側面はある。
環境浄化対策は風俗店だけでなく暴力団や不良外国人にも及び、個室マッサージ店や違法カジノ、猥褻ビデオ店など多くの店が廃業に追い込まれた。数百人の暴力団関係者が逮捕・起訴され、1000人以上の不法滞在外国人が摘発された。
05年には東京都迷惑防止条例(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例)と、ぼったくり防止条例(性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等及び性関連禁止営業への場所の提供の規制に関する条例)が改正され、何かと評判が悪かったしつこい客引きの一部は目立たぬように活動するようになり、風俗店への公然としたスカウト行為もあまり見られなくなった。また、暴対法(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律)による暴力団への締め付けもあり、一目でそれとわかる人物が街を闊歩する姿を見ることも少なくなった。
かつてに比べ性風俗店の派手なネオンや卑猥な看板も目につかない歌舞伎町。しかし、その実態はどうなのか。
「風俗店の非店舗化、つまりホテルへの出張サービスに業態を変えました。店舗を構えない分、経費がかからないのですが、マイナス面も多い。サービスの現場がホテル内という密室のため、トラブルも急増しているのです。従業員の目が届く店舗型ではありえなかった、女性従業員への違法薬物の使用や強要、過剰なサービスの要求や盗撮などです。こうした被害に遭わないために個人で客を取る、つまり大久保公園の周りに立って直接客を取る女性も増えるのです」(元風俗店従業員)
浄化作戦でいくら店を摘発しても、歌舞伎町に性欲を満たしに来る男性の総量は変わらない。基本は届け出制の店舗型風俗は警察も管理しやすいのだが、今は水面下でサービスが行われるため、警察の目も届きにくい。
風俗店だけでなく飲食店にも大きな変化があったという。かつては深夜以降も平気で営業していたキャバクラやクラブも、取締りの強化により少なくなった。多くの飲食店が閉まる午前1時ごろ、街を浮遊する男性を狙ったぼったくり店への勧誘も相変わらず続いている。
「最近、警察が目を光らせているのが、出会い系マッチングアプリを使った事例です。素人女性を装い、SNSで知り合った男性を裏で手を結んでいるぼったくり店に連れ込み、法外な料金を取るというもの。歌舞伎町だけでなく各地の繁華街で同様の事案があり、逮捕のたびにニュースになりますが、被害はなくなりません。あわよくば、という下心を抱いた男性がいる限り、この手の犯罪もなくならないのでしょう」(前出・記者)
「マッチングアプリによるぼったくりもそうですが、もっと悪質な事例もあります」
と言うのは、歌舞伎町に精通するライターの仙頭正教氏。ここにきて警視庁も本格的に検挙に乗り出し、情報収集を進めているのが、メンコン(メンズコンセプトカフェ)だ。
メンコンとは、和装や学生服、あるいは王子様や執事、人気ゲームのキャラなどのキャラクターに扮した男性店員がいるカフェのこと。
「店員の中には俳優の卵や地下アイドル活動をしている人もいて、10代の少女を中心に人気を集めています。普通に営業している店はいいのですが、中には悪質な店もあります。問題はお客さんが推しの店員にお金を落とすこと。推しの男性店員とチェキが撮れるといった特典や、ただのミネラルウォーターなのにキラキラしたボトルに入った水を1本10万円で売りつけたり、推しに金をつぎ込むことで店外デートできたりするのですが、客の大部分は未成年です。でも、やっていることはホストクラブと変わりません」(仙頭氏)
警視庁はこの4月と5月、歌舞伎町のメンコン2店を摘発し、店長や店員を逮捕している。うち1店では、客が18歳未満の少女と知りながら40万円のシャンパンを購入させていた。もう1店でも、2人の少女が未成年であると知りながら30万円のシャンパンを飲ませていた。2人は逮捕された店員のファンで、約80万円を支払っていたという。
「2件目で逮捕された店員は、この件とは別に、やはり未成年の少女と店の中でわいせつな行為をしていた件でも逮捕されています。まだ分別のつかない未成年の少女をたらし込むのは許せないことです。ただ、推しの男性店員に夢中になるあまりお金をつぎ込んでしまうのも問題で、そうしたお金に困った子が、売春などの違法なビジネスに手を出すもとにもなる。警察には、悪質店で被害を受けた本人だけでなく、親からの相談や被害も寄せられています」
デイリー新潮編集部

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