「はだしのゲン」巡り揺れる広島=教材から削除、販売は急増―原爆忌

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広島市教育委員会が児童生徒向けに作成している独自教材「ひろしま平和ノート」から4月、漫画「はだしのゲン」が削除された。
一部の市民団体が撤回を求めるなど、削除を巡ってさまざま議論が出る中、漫画の売り上げは急増している。
4月の平和ノート改訂に伴い、小学3年生向けの教材から「はだしのゲン」が消えた。市教委によると、平和教育の検証会議で教員らから出た「『浪曲』や『池のコイを盗む』などの場面の背景理解に補足説明が必要で、時間がかかる」、「漫画の一部では被爆の実相に迫りにくい」などの指摘を受けた措置という。
削除前の3月、市民団体「教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしま」は撤回を求める約5万5000人分の署名を市教委に提出した。事務局の岸直人さん(69)は「子供たちが戦争や原爆の恐ろしさについて考える大きなきっかけがなくなる」と説明。現在、市教委に削除の判断が適切だったかなどを改めて審議するよう請願する準備を進めているという。
教職員らでつくる日本教育文化研究所広島支部の事務局長で、小学校教諭の川本通さん(64)は「ゲンは現代の子供たちの生活実態に合わない。限られた授業の中で原爆の悲惨さを教え切れない」と指摘。教員からは、改訂で負担が減ったとの声を聞くという。
一方、市立袋町小(中区)の三吉和恵校長は「(現場の)先生からは特に変わりないと聞いている。(負担は)減りも増えもしていない」と語った。
「はだしのゲン」の文庫本を出版する中央公論新社(東京)によると、6月までの上半期の販売部数は昨年同期比の約15倍に増加。プロモーション担当者は、削除を巡る報道や、5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)開催などが要因と推測している。
連載開始50年で3月末に特設コーナーを設置したジュンク堂書店広島駅前店(広島市南区)の三浦明子店長によると、一連の報道以降で、200冊超が売れた。「手元に置きたい」「学校で読めなくなるから子供や孫に読ませたい」などの声を聞いたという。
三浦さんは一連の報道が読み返すきっかけになったと指摘。「過去にこういうことがあったと未来につなぐ資料や書物は必要だ」として、「広島から発信していかないといけない」と話している。

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