“横領総額1億円”“全身ヴィトンの女” 逮捕の橋田壽賀子財団・元経理(66)「物欲を肥大させた鬼女の履歴書」

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〈人間、なにかが「ある」と、より欲が出るというもの。あんがい「ない」状態というのはサッパリしていていいものです〉
【画像】横領額は1億円逮捕された「全身ヴィトンの女」大堀たまみ容疑者 人気脚本家の故・橋田壽賀子は晩年、著書『渡る老後に鬼はなし スッキリ旅立つ10の心得』(朝日新書)の中で、そう説いた。だが、そのお膝元で密かに物欲を肥大させた“鬼女”がいた。◆ ◆ ◆財団の経理担当が現金約1100万円を着服 7月12日、業務上横領の容疑で警視庁に逮捕されたのは、橋田文化財団(以下、財団)の経理担当だった大堀たまみ容疑者(66)。

「容疑は、2017年4月から20年12月までの間に、12回にわたり現金約1100万円を着服したとするものです」(捜査関係者) だが、発表された額は氷山の一角に過ぎない――。 財団は国民的ドラマ「おしん」などを手掛けたヒットメーカーの橋田が、放送文化に貢献した人物や番組を顕彰する目的で92年に設立。2000年4月に採用された大堀は、以来20年余にわたり、1人で財団の経理を担当していた。橋田壽賀子さん 文藝春秋「財団に来る前は、大手病院で院長秘書をしていたといい、独身だったと聞いている」(財団関係者)フランスの有名ブランド「ルイ・ヴィトン」全身を固める 普段の勤務態度は、大人しく真面目。財団の理事経験者もこう振り返る。「年数回の理事会で、交通費を渡してくれる人。あまり印象に残らなかった」 ところが、その裏で大堀は、橋田の存命中から財団マネーを湯水のように使い込み、散財の限りを尽くしていたのである。「着服した金は、ことごとくブランド品の購入や飲食代に消えていた。横領総額は約1億円に達する」(前出・財団関係者) 銀座に足繁く通い、百貨店の上客になっていた大堀は、逮捕に際してこう供述。「ブランド店に常連、お得意さん扱いされて、気持ちよくなっていました」 特にお気に入りだったのが、フランスの有名ブランド「ルイ・ヴィトン」。同ブランドで全身を固め、悦に入っていたのだ。「お洒落な格好をしていたので、実年齢より若く見えました」(足立区にある自宅マンションの住民) 不相応な身なりに違和感を覚えた1人が、橋田の盟友だったTBSプロデューサーの石井ふく子氏だ。「私はプロデューサーですから、俳優さんの手前、派手な格好はしない。でもあの人(大堀)は、いろんなお洋服をお持ちのようでした。上から下まで、私たちが着ないような服を着ていましたから。それが前からちょっと気になっていまして、調べた方がいいなと思っていたんです」架空の請求書や領収書を発行…やりたい放題の手口 大堀の犯罪が露見するきっかけは、21年4月、橋田が95歳で他界したこと。財団が財務状況を確認すると、不自然な金の流れが次々と見つかったのだ。「当初、大堀は横領を認めようとしなかったが、本人宛の出金記録など、動かぬ証拠がボロボロと出てきた。財団は22年3月末で大堀を解雇し、同年8月に麹町署に相談。刑事だけでなく、民事でも提訴している」(前出・財団関係者) 大堀が横領に手を染めたとされるのは、少なくとも10年以上前。「橋田賞」のパンフレットの作成名目などで架空の請求書や領収書を発行する手口のほか、「石井ふく子さんへの支払いを偽造したり、贈答用に購入した商品券を換金したりするなど、やりたい放題だった」(同前)『財団を頼むね』と遺言を残していた もともとお金に無頓着だった橋田は、経理担当の大堀を信頼しきっていたという。一方で、大堀が財布代わりに利用した財団には橋田の思いが詰まっていた。89年、元TBSプロデューサーの夫が病没。2億8000万円の遺産全額を橋田は財団設立に投じたが、目標とする3億円には足りなかった。当時、相談を受けた石井氏が明かす。「じゃあ、ドラマをやろうと思っているから、足りない分は原稿料で払ったらどうかと伝えたんです」 かくして90年に始まったのが、息の長い人気シリーズとなる「渡る世間は鬼ばかり」(TBS系)である。橋田は息を引き取った後、財団設立時に作ったお気に入りの松竹梅のドレスを着て、旅立ったという。 TBSで社長、会長を歴任した財団理事長の井上弘氏を直撃すると「財団として捜査には全面協力している。コメントは差し控えたい」と話したが、石井氏はあらためてこう憤激する。「橋田先生は一生懸命、作品を書き、稼いだ分は財団に入れていました。遺言でも『財団を頼むね』と。お世話になった人の元で、よくこんなことがやれたなと思います」 当の大堀は「返すつもりでやった。財団や橋田先生に申し訳ない」と話しているというが、それもうわべだけ――、“鬼の念仏”にしか聞こえない。(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年7月27日号)
人気脚本家の故・橋田壽賀子は晩年、著書『渡る老後に鬼はなし スッキリ旅立つ10の心得』(朝日新書)の中で、そう説いた。だが、そのお膝元で密かに物欲を肥大させた“鬼女”がいた。
◆ ◆ ◆
7月12日、業務上横領の容疑で警視庁に逮捕されたのは、橋田文化財団(以下、財団)の経理担当だった大堀たまみ容疑者(66)。
「容疑は、2017年4月から20年12月までの間に、12回にわたり現金約1100万円を着服したとするものです」(捜査関係者) だが、発表された額は氷山の一角に過ぎない――。 財団は国民的ドラマ「おしん」などを手掛けたヒットメーカーの橋田が、放送文化に貢献した人物や番組を顕彰する目的で92年に設立。2000年4月に採用された大堀は、以来20年余にわたり、1人で財団の経理を担当していた。橋田壽賀子さん 文藝春秋「財団に来る前は、大手病院で院長秘書をしていたといい、独身だったと聞いている」(財団関係者)フランスの有名ブランド「ルイ・ヴィトン」全身を固める 普段の勤務態度は、大人しく真面目。財団の理事経験者もこう振り返る。「年数回の理事会で、交通費を渡してくれる人。あまり印象に残らなかった」 ところが、その裏で大堀は、橋田の存命中から財団マネーを湯水のように使い込み、散財の限りを尽くしていたのである。「着服した金は、ことごとくブランド品の購入や飲食代に消えていた。横領総額は約1億円に達する」(前出・財団関係者) 銀座に足繁く通い、百貨店の上客になっていた大堀は、逮捕に際してこう供述。「ブランド店に常連、お得意さん扱いされて、気持ちよくなっていました」 特にお気に入りだったのが、フランスの有名ブランド「ルイ・ヴィトン」。同ブランドで全身を固め、悦に入っていたのだ。「お洒落な格好をしていたので、実年齢より若く見えました」(足立区にある自宅マンションの住民) 不相応な身なりに違和感を覚えた1人が、橋田の盟友だったTBSプロデューサーの石井ふく子氏だ。「私はプロデューサーですから、俳優さんの手前、派手な格好はしない。でもあの人(大堀)は、いろんなお洋服をお持ちのようでした。上から下まで、私たちが着ないような服を着ていましたから。それが前からちょっと気になっていまして、調べた方がいいなと思っていたんです」架空の請求書や領収書を発行…やりたい放題の手口 大堀の犯罪が露見するきっかけは、21年4月、橋田が95歳で他界したこと。財団が財務状況を確認すると、不自然な金の流れが次々と見つかったのだ。「当初、大堀は横領を認めようとしなかったが、本人宛の出金記録など、動かぬ証拠がボロボロと出てきた。財団は22年3月末で大堀を解雇し、同年8月に麹町署に相談。刑事だけでなく、民事でも提訴している」(前出・財団関係者) 大堀が横領に手を染めたとされるのは、少なくとも10年以上前。「橋田賞」のパンフレットの作成名目などで架空の請求書や領収書を発行する手口のほか、「石井ふく子さんへの支払いを偽造したり、贈答用に購入した商品券を換金したりするなど、やりたい放題だった」(同前)『財団を頼むね』と遺言を残していた もともとお金に無頓着だった橋田は、経理担当の大堀を信頼しきっていたという。一方で、大堀が財布代わりに利用した財団には橋田の思いが詰まっていた。89年、元TBSプロデューサーの夫が病没。2億8000万円の遺産全額を橋田は財団設立に投じたが、目標とする3億円には足りなかった。当時、相談を受けた石井氏が明かす。「じゃあ、ドラマをやろうと思っているから、足りない分は原稿料で払ったらどうかと伝えたんです」 かくして90年に始まったのが、息の長い人気シリーズとなる「渡る世間は鬼ばかり」(TBS系)である。橋田は息を引き取った後、財団設立時に作ったお気に入りの松竹梅のドレスを着て、旅立ったという。 TBSで社長、会長を歴任した財団理事長の井上弘氏を直撃すると「財団として捜査には全面協力している。コメントは差し控えたい」と話したが、石井氏はあらためてこう憤激する。「橋田先生は一生懸命、作品を書き、稼いだ分は財団に入れていました。遺言でも『財団を頼むね』と。お世話になった人の元で、よくこんなことがやれたなと思います」 当の大堀は「返すつもりでやった。財団や橋田先生に申し訳ない」と話しているというが、それもうわべだけ――、“鬼の念仏”にしか聞こえない。(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年7月27日号)
「容疑は、2017年4月から20年12月までの間に、12回にわたり現金約1100万円を着服したとするものです」(捜査関係者)
だが、発表された額は氷山の一角に過ぎない――。
財団は国民的ドラマ「おしん」などを手掛けたヒットメーカーの橋田が、放送文化に貢献した人物や番組を顕彰する目的で92年に設立。2000年4月に採用された大堀は、以来20年余にわたり、1人で財団の経理を担当していた。
橋田壽賀子さん 文藝春秋
「財団に来る前は、大手病院で院長秘書をしていたといい、独身だったと聞いている」(財団関係者)
普段の勤務態度は、大人しく真面目。財団の理事経験者もこう振り返る。
「年数回の理事会で、交通費を渡してくれる人。あまり印象に残らなかった」
ところが、その裏で大堀は、橋田の存命中から財団マネーを湯水のように使い込み、散財の限りを尽くしていたのである。
「着服した金は、ことごとくブランド品の購入や飲食代に消えていた。横領総額は約1億円に達する」(前出・財団関係者)
銀座に足繁く通い、百貨店の上客になっていた大堀は、逮捕に際してこう供述。
「ブランド店に常連、お得意さん扱いされて、気持ちよくなっていました」
特にお気に入りだったのが、フランスの有名ブランド「ルイ・ヴィトン」。同ブランドで全身を固め、悦に入っていたのだ。
「お洒落な格好をしていたので、実年齢より若く見えました」(足立区にある自宅マンションの住民)
不相応な身なりに違和感を覚えた1人が、橋田の盟友だったTBSプロデューサーの石井ふく子氏だ。
「私はプロデューサーですから、俳優さんの手前、派手な格好はしない。でもあの人(大堀)は、いろんなお洋服をお持ちのようでした。上から下まで、私たちが着ないような服を着ていましたから。それが前からちょっと気になっていまして、調べた方がいいなと思っていたんです」
架空の請求書や領収書を発行…やりたい放題の手口 大堀の犯罪が露見するきっかけは、21年4月、橋田が95歳で他界したこと。財団が財務状況を確認すると、不自然な金の流れが次々と見つかったのだ。「当初、大堀は横領を認めようとしなかったが、本人宛の出金記録など、動かぬ証拠がボロボロと出てきた。財団は22年3月末で大堀を解雇し、同年8月に麹町署に相談。刑事だけでなく、民事でも提訴している」(前出・財団関係者) 大堀が横領に手を染めたとされるのは、少なくとも10年以上前。「橋田賞」のパンフレットの作成名目などで架空の請求書や領収書を発行する手口のほか、「石井ふく子さんへの支払いを偽造したり、贈答用に購入した商品券を換金したりするなど、やりたい放題だった」(同前)『財団を頼むね』と遺言を残していた もともとお金に無頓着だった橋田は、経理担当の大堀を信頼しきっていたという。一方で、大堀が財布代わりに利用した財団には橋田の思いが詰まっていた。89年、元TBSプロデューサーの夫が病没。2億8000万円の遺産全額を橋田は財団設立に投じたが、目標とする3億円には足りなかった。当時、相談を受けた石井氏が明かす。「じゃあ、ドラマをやろうと思っているから、足りない分は原稿料で払ったらどうかと伝えたんです」 かくして90年に始まったのが、息の長い人気シリーズとなる「渡る世間は鬼ばかり」(TBS系)である。橋田は息を引き取った後、財団設立時に作ったお気に入りの松竹梅のドレスを着て、旅立ったという。 TBSで社長、会長を歴任した財団理事長の井上弘氏を直撃すると「財団として捜査には全面協力している。コメントは差し控えたい」と話したが、石井氏はあらためてこう憤激する。「橋田先生は一生懸命、作品を書き、稼いだ分は財団に入れていました。遺言でも『財団を頼むね』と。お世話になった人の元で、よくこんなことがやれたなと思います」 当の大堀は「返すつもりでやった。財団や橋田先生に申し訳ない」と話しているというが、それもうわべだけ――、“鬼の念仏”にしか聞こえない。(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年7月27日号)
大堀の犯罪が露見するきっかけは、21年4月、橋田が95歳で他界したこと。財団が財務状況を確認すると、不自然な金の流れが次々と見つかったのだ。
「当初、大堀は横領を認めようとしなかったが、本人宛の出金記録など、動かぬ証拠がボロボロと出てきた。財団は22年3月末で大堀を解雇し、同年8月に麹町署に相談。刑事だけでなく、民事でも提訴している」(前出・財団関係者)
大堀が横領に手を染めたとされるのは、少なくとも10年以上前。「橋田賞」のパンフレットの作成名目などで架空の請求書や領収書を発行する手口のほか、
「石井ふく子さんへの支払いを偽造したり、贈答用に購入した商品券を換金したりするなど、やりたい放題だった」(同前)
もともとお金に無頓着だった橋田は、経理担当の大堀を信頼しきっていたという。一方で、大堀が財布代わりに利用した財団には橋田の思いが詰まっていた。89年、元TBSプロデューサーの夫が病没。2億8000万円の遺産全額を橋田は財団設立に投じたが、目標とする3億円には足りなかった。当時、相談を受けた石井氏が明かす。
「じゃあ、ドラマをやろうと思っているから、足りない分は原稿料で払ったらどうかと伝えたんです」 かくして90年に始まったのが、息の長い人気シリーズとなる「渡る世間は鬼ばかり」(TBS系)である。橋田は息を引き取った後、財団設立時に作ったお気に入りの松竹梅のドレスを着て、旅立ったという。 TBSで社長、会長を歴任した財団理事長の井上弘氏を直撃すると「財団として捜査には全面協力している。コメントは差し控えたい」と話したが、石井氏はあらためてこう憤激する。「橋田先生は一生懸命、作品を書き、稼いだ分は財団に入れていました。遺言でも『財団を頼むね』と。お世話になった人の元で、よくこんなことがやれたなと思います」 当の大堀は「返すつもりでやった。財団や橋田先生に申し訳ない」と話しているというが、それもうわべだけ――、“鬼の念仏”にしか聞こえない。(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年7月27日号)
「じゃあ、ドラマをやろうと思っているから、足りない分は原稿料で払ったらどうかと伝えたんです」
かくして90年に始まったのが、息の長い人気シリーズとなる「渡る世間は鬼ばかり」(TBS系)である。橋田は息を引き取った後、財団設立時に作ったお気に入りの松竹梅のドレスを着て、旅立ったという。
TBSで社長、会長を歴任した財団理事長の井上弘氏を直撃すると「財団として捜査には全面協力している。コメントは差し控えたい」と話したが、石井氏はあらためてこう憤激する。
「橋田先生は一生懸命、作品を書き、稼いだ分は財団に入れていました。遺言でも『財団を頼むね』と。お世話になった人の元で、よくこんなことがやれたなと思います」
当の大堀は「返すつもりでやった。財団や橋田先生に申し訳ない」と話しているというが、それもうわべだけ――、“鬼の念仏”にしか聞こえない。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年7月27日号)

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