クマ被害に揺れる日本社会。現場では一体何が起きているのか。書籍『ドキュメント クマから逃げのびた人々』(三才ブックス)より、北海道のヒグマに襲われた猟師・山田文夫さん(当時69歳)の壮絶な体験をダイジェストで紹介する。
【画像】「腹から飛び出した臓器をグッと掴んで…」69歳猟師が襲われた現場、駆除されたヒグマのおぞましい顎骨、クマに噛まれた右手の歯痕などの写真をすべて見る
北海道に生息するヒグマ(写真:IBUKi/イメージマート)
◆◆◆
2022年7月、山田さんは同業者のSさんとともにクマ出没の通報を受け現場へ急行した。2頭のクマを発見し発砲。1頭は崖下へ転落した。山田さんが確認のため接近したところ、弾を受けながらもまだ生きていたクマが突如襲いかかってきた。
仰向けに倒された山田さんは銃を失い、ヒグマと素手で格闘することになった。
「どうまれたかなんて、順番は分からん。ただクマとくっついて格闘して引っ張り回されたな。顎にがっつりみつかれてたから、下の入れ歯は割れて、口は裂けたしね」
山田さんは顎や腹を噛まれ、腕も攻撃された。Sさんに「撃ってくれ!」と叫ぶも、弾切れで応戦できず。死闘の最中、山田さんは偶然、右拳がクマの口に入ったことでひるませることに成功。そして驚くべき展開が待っていた。
「最初に一発、弾が当たった横腹から、腸が飛び出ているのが目に入ったんだよね。思わず左手をのばしたらうまいこと届いて、その腸をグッと掴んで思いっきり引っ張ったらベロベローッと出てきてね」
これをきっかけにクマは逃げ出し、山田さんは一命を取り留めた。約70針を縫う大けがを負い、2週間の入院生活を送ることになる。後遺症として耳の聞こえが悪くなり、口の麻痺、指の感覚喪失などが残った。
それでも山田さんは2カ月後に猟師として復帰。「ここで身を引いたら地域の駆除活動が続かなくなる」と考えてのことだった。最後に山田さんは屈託のない笑顔でこう語る。
「ラグビーやってたときはさ、俺は小柄なのに、身長180cmとか体重100kgの相手にいちばんぶつかっていかなきゃならないポジションだったからさ。ケガやあざが絶えんかったのよ。でも、クマと格闘したのは、それらとは比較にならない。人生最大のアクシデントだったな(笑)」
◆◆◆
この文章の本編は、以下のリンクからお読みいただけます。
(「文春オンライン」編集部/Webオリジナル(外部転載))