ネズミが大量発生したラーメン店。「落とした食材が30秒で喰われる」惨状を放置した結果…

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新型コロナウイルスが5類感染症扱いとなり、街の飲食店は一昔前の賑わいを取り戻している。そんななか、都心の飲食店は「ネズミの大量発生問題」に直面しているようだ。 飲食店におけるネズミ発生問題は、以前から頭を悩ませていた店も多いだろう。かつては世間的に明るみにならなかった店も、ネズミの大群がゴミを漁っている動画がSNSに投稿されたり、バイトによる裏側を暴露する投稿などにより、決して人ごとではない事態に陥っている。
今回お話を聞いたKさんは、自ら体を張ってネズミと対決を繰り広げていた過去を持つ。その舞台は、アルバイト先だった日本全国に店舗を展開する某人気ラーメンチェーンだ。
◆厨房でネズミの気配を感じる…
働いていた店舗は、繁華街から少し外れた幹線道路に面した場所にあった。オープンは平成のはじめだったが、当時から建物は古びた木造で、お世辞にも綺麗と言えるものではなかった。
アルバイトを始めて1か月ほどたったころ、とある違和感を覚えるようになる。
「最初のころは接客が中心だったんですが、途中から調理にも携わるようになりました。自ずと厨房の奥に行く機会が増えていくわけです。そこで、視界の端に『何か通った気がする』ことが何度かあったんですよ。見間違いかと思いましたけど、ある時ネズミが駆け抜けるのをはっきりと見てしまったんです。その瞬間、体の底から鳥肌が湧き上がるような気持ちになりました」
◆チャーシューが30秒後に消えている
調理台や冷蔵庫の下からネズミがいつ飛び出してくるかと、ビクビクしながら働いていたそうだ。Kさんをあざ笑うかの如く、ネズミの“暴挙”は、徐々にエスカレートしていく。
「働いて数か月が経つと、『麺上げ』を教わるようになります。湯をしっかり切るため、かなり気をつけても麺が何本か床に落ちてしまうもの。麺をどんぶりに入れ、一杯仕上げたあと、ふと麺を落とした場所を見てみると、なぜか見当たらない……。なんとネズミが咥えて持って行ってたんですよ。それからというもの、ネズミを見たくないので、なるべく床を見ないようにしていました。でも、麺上げ場にいると、落ちた食材に駆け寄るネズミが、僕の足に激突したりすることもあって、そのたびに思わず大きな声を上げてしまいました……」
特にチャーシューはネズミに“人気”で、一度落とすとわずか30秒ほどでネズミが奪いに来ていたという。アルバイトの同僚は、ネズミに拾われないように落とした食材を拾おうとしたら、飛び出して来たネズミに触ってしまうという憂き目にもあったそうだ。
◆厨房に入らない店長には事の重大性が伝わらず…
Kさんが働いていた店は、社員は店長1名のみ。基本的に事務作業が中心で、厨房に入ることはほとんどなかった。そのため、ネズミが大量発生する惨状を大きな問題と捉えておらず、アルバイト一同で対処してもらうよう懇願しにいった。
「しかし、『建物がかなり古いから仕方ないよね』とか、『駆除しても、どうせまた出てくるしね』と、まともに取り合ってくれず、絶望的な気分になりました。それでも、数日後にホームセンターで殺鼠剤を買って来てくれたので、日ごろの恨みを晴らすべく厨房に撒いてやりましたよ」
しかし、一時的に効果はあっても、外から次々と侵入してくるネズミたちに対処しきれず、まさに焼け石に水という結果に終わってしまう。そんなある日、想像もしたくないような事件が発生したのだ。

先輩は悲鳴をあげてネズミを振り払ったが、ネズミにこびりついていたすすの汚れで顔面が真っ黒に。また、どぶのようなニオイが洗っても洗っても落ちず、その日は早退を余儀なくされた。
◆「一網打尽作戦」を決行
アルバイトのメンバーたちが知恵を絞った結果、一網打尽にできそうな作戦が完成する。手始めに取り掛かったのは、店舗裏のゴミ捨て場。1m四方の木枠で囲まれた作りになっていたが、足元の角の部分が食い破られて穴が空き、ネズミたちはそこから出入りしてはゴミ袋に入った残飯を漁っていたという。
「まず、僕がゴム手袋をして雑巾を数枚持ち、足元の穴を塞ぎます。その隙に先輩がゴミ袋を外に出していくと、総勢20匹くらいのネズミの姿が……。先輩は網を使ってネズミを捕獲していき、空の一斗缶に放り込んでいきます。一斗缶の中でネズミが暴れまわるゴトゴトという音が怖かったです。
でも何より不気味だったのは、穴を押さえている僕の手にガリガリという感触が伝わって来たことですね。押さえている雑巾を食い破って外に出ようとしていたんです。木枠にさえ穴を開けるのを知っていたので、すぐに自分の手のひらに到達する気がして、先輩に『早く! 早く!』と命令口調で絶叫してしまいました」
◆恐れていた事態が発生…
そんなアルバイト一同の努力もむなしく、ネズミが減ることはなかった……。その結果、とうとう恐れていた事態に発展してしまう。
「ついに客席にネズミが出ました。厨房にいても聞こえるぐらいのボリュームの叫び声が聞こえてきましたよ……。バイトリーダーの先輩が何度も謝りましたが、そのお客さんは涙目のまま、替玉の食券を使うことなくラーメンも残してすぐに帰ってしまったんです。その日を皮切りに、店先で頻繁にネズミが出始めて……。当然ながらしばらくすると、本社に『ネズミが出る』というクレームが何件か入ったらしいです」
クレームを受けて本社の指導が入り、同店は改装を実施。建て替えのための数か月の休業を経て、無事「ネズミが侵入しにくい店舗」に生まれ変わったとのことだ。
衛生面の問題ばかりでなく、電気コードをかじることが火災の原因にもなりえてしまう。もし勤務先でネズミを見かけたとしたら、その場しのぎではなく、抜本的な対策を講じるべきだろう。
<TEXT/Mr.tsubaking>

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