法廷で何度も顔を覆い嗚咽…79歳妻を海に落とし殺害「介護40年の82歳夫」犯行への悲しい背景

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

法廷で男性は何度も顔を手で覆い嗚咽。「妻に申し訳ない」「生きている限り心からお詫びしたい」と涙を流して謝罪した――。
7月5日から始まった裁判に結論が。7月18日、横浜地裁小田原支部で行われた裁判員裁判で殺人の罪に問われていた無職・藤原宏被告(82)に懲役3年の実刑判決が言い渡された。藤原被告は’22年11月に自宅近くの神奈川県大磯町の漁港で、妻の照子さん(当時79)を車イスごと海に突き落とし殺害したとされる。
「照子さんは脳梗塞をわずらい、藤原被告が40年にわたり一人で介護をしていました。長男が高齢者施設に入れることを勧めると『妻と離れたくない』『息子に経済的負担をかけたくない』と断ったそうです。
弁護側は、長男が藤原被告の罪を許していることなどから執行猶予が妥当と主張。裁判長は、被告の献身的な介護を認めながら『照子さんの絶望感や無念さは計り知れない』と実刑判決を下しました。藤原被告は『独断で妻をあんな目に遭わせてしまった。厳罰を受ける所存です』と話しています」(全国紙司法担当記者)
『FRIDAYデジタル』は’22年11月25日配信の記事で、事件について詳しく報じている。藤原被告が犯行にいたった悲しい背景や、仲睦まじい夫婦関係や献身的な介護について振り返りたい(内容は修正しています)ーー。
「海に人が浮いている」
神奈川県大磯町の岸壁で、釣りをしていた男性から110番通報が入った。駆けつけた警察官は、波に揺られる高齢女性を発見。病院に搬送されたがスグに死亡が確認される。警察のダイバーが現場付近の海を捜索すると、女性が乗っていたと思われる車イスが見つかったーー。
’22年11月22日、横浜地検小田原支部が殺人の罪で起訴したのが大磯町に住む藤原被告だ。妻を溺死させたとされる。藤原被告は逮捕された神奈川県警大磯署の取り調べに対し、「介護をしていた妻の身体が不自由になっていき不憫になった」と供述していたという。
「事件が起きたのは、11月2日の午後5時半ごろです。藤原被告は2人暮らしだった妻の照子さんを『散歩に行こう』と誘い、自宅近くの大磯漁港へ車で向かいます。照子さんは身体が不自由で一人では歩けませんでした。
漁港につくと、藤原被告は照子さんが乗っていた車イスを岸壁に近づけます。当日は快晴でしたが、すでに周囲は暗闇に包まれていたとか。藤原被告は照子さんと一緒に、しばらく海を眺めていたそうです。意を決すると、車イスのグリップに力を入れ……。車イスごと照子さんを海に突き落としたんです。照子さんは『いやだ!』と叫んで海に落ちたとか……」(全国紙社会部記者)
車で帰宅した藤原被告は、別の場所に住んでいた長男に「妻を海に落とした」と連絡。驚いた長男が「父が母を突き落としたと言っている」と警察に通報し、事件が発覚した。
「藤原被告は関西の出身で、大手スーパー『長崎屋』(現在はドン・キホーテの子会社)への就職をキッカケに神奈川県へ移住します。平塚市内の店舗での勤務となり、近くに住んでいた照子さんと知り合い結婚。とても仲の良い夫婦だったそうです。
夫婦生活に暗雲がたちこめ始めたのは、40年ほど前でした。もともと脚の悪かった照子さんが脳梗塞を患ったとか。以来、照子さんは一人で歩くのが困難になりますが、藤原被告は一所懸命に介護していたそうです」(夫妻の知人)
藤原被告と照子さんは、大磯町内の集合住宅に住んでいた。藤原被告は早朝から住民の清掃活動に参加するかたわら、洗濯や料理などの家事をすべてこなす。照子さんの体調が良い時は、2人で小田原や伊豆に旅行に出かけていたという。
「集合住宅の住民によると、藤原被告は気さくな性格で普段から笑顔で挨拶をしていたようです。照子さんを本当に大切にし、周囲も感心していたとか。ただ一人で抱え込むようなところがあり、こうも話していたといいます。『高齢者施設に入れるのはかわいそうだ。私が面倒をみないと』と」(前出・記者)
事件への直接のキッカケとなった出来事が、10月上旬に起きる。藤原被告が照子さんをトイレに座らようとするが転ばせてしまい、彼女の体調が悪化してしまったのだ。藤原被告は不安やストレスを募らせ、集合住宅の清掃活動を休みがちになる。近隣住民は、たびたび藤原被告の怒鳴り声を聞くようになった。
「おそらく藤原被告は、妻への介護の負担を一人で抱えこんでいたのでしょう。家族や知人に、もっとオープンに悩みを打ち明けていれば……。警察の調べに対し、藤原被告はこう供述していました。『40年にわたる介護に疲れた。妻に殺害を頼まれたわけではない。(照子さんの命を奪ったのは)間違いありません』」(同前)
家庭の問題を周囲に相談するのは、決して恥ずべきことではない。躊躇していては事態は悪化するばかり。助けを求める勇気を持つことが大切だろう。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。