「人に馴れる見込みない」保護犬31匹、殺処分検討…警戒心依然強く

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劣悪な環境の中、秋田県藤里町などで犬が多頭飼育されていた問題で、県は保護している犬の一部を「人に馴(な)れる見込みがない」として殺処分する検討に入った。
首輪を付けたり、なでたりできないなど、人への警戒心が強いままの犬が対象になる見込みで、今後、慎重に判断する。専門家は多頭飼育を防ぐため、福祉面での連携の必要性を指摘している。
県は2022年2、3月に藤里町、能代市、羽後町の住居で多頭飼育されていた犬56匹を保護し、県動物愛護センター(秋田市雄和椿川)と分所(同市浜田)で預かってきた。飼い主の女は同年3月、動物愛護法違反(虐待)で略式起訴され、秋田簡裁から罰金20万円の略式命令を受けた。
犬はふん尿のたまった部屋に閉じ込められるなど「ネグレクト(飼育放棄)」状態に置かれていた。保護時は人を怖がり、近づくとかみつこうとしたり逃げようとしたりしていた。
センターの獣医師や職員が給餌の機会などを生かして人を受け入れられる状態になるよう試み、一部の犬は首輪が付けられるまで人に馴れたという。これまでに一般県民と県内の動物愛護団体に計19匹を引き渡し、県外の動物愛護団体へも引き取りを打診してきた。
ただ、31匹が人への警戒心が強いまま残された。中には抱くとフンを排せつするほど怖がる犬もおり、県生活衛生課では「保護から1年4か月たってもこの状態のままであれば、今後も人に馴れる見込みがないだろう」とみている。
同課によると、センターは譲渡可能な犬と猫を一時的に保護する施設として位置づけられている。通常は保護した段階で譲渡や殺処分の検討を行うが、56匹の犬は保護の背景を考慮して検討を先延ばししていた。
ただ、施設には檻(おり)(縦約1メートル、横約1・5~4・25メートル)が40基しかなく、通常は1基1匹のところを最大3匹入れるなどして、他の動物を収容できるようにしてきた事情もあるという。
センターでは6月に作成した基準を基に、31匹の譲渡の適性を判断する。具体的には〈1〉首から背中に向けて優しくなでられる〈2〉首輪を付けられる〈3〉リード付きで歩ける――の3項目が達成できない犬は殺処分の検討に入ることにしている。
日本獣医生命科学大の水越美奈教授(人と動物の関係学)は「『殺処分はかわいそう』だけではなく、檻の中で生涯過ごすことに苦痛がないのかなど、犬の幸せを考える視点が重要。保護施設は新しくやって来る犬のためのスペースを空けておかなければならないなど、色々な状況を鑑(かんが)みて考える必要がある」と話す。
保護犬が発生する原因となった多頭飼育問題については、飼い主が経済的に困窮していたり、社会的に孤立していたりするケースが多いと指摘する。問題が顕在化する前に行政の社会福祉担当の部署が予兆を把握していることもあり、「危ないサインに気付いたら早期に動物担当へ伝えるなど、社会福祉の部署と動物担当の部署が連携することも有効だ」と話している。
■6匹の飼い主募集
県は譲渡可能な6匹の飼い主を募っている。終生にわたり飼うことができる県民や県内の動物愛護団体などが対象。県生活衛生課は「社会性を身につける機会を十分与えられずに育てられた犬たちで、根気強く向き合い、長い目で付き合える飼い主に申し込んでいただきたい」としている。問い合わせは同課(018・860・1593)へ。

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