「勝てば返せる」膨れた借金1400万円 悪循環でギャンブル依存

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「借金が100万円になったときは親に泣きつき、その後も何度も肩代わりをお願いした。気がつくと、消費者金融からの借金が約1400万円に膨れ上がり自己破産した」。高松市にある当事者や家族による公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」メンバーの佐伯徹さん(55)は、どん底だった8年前を振り返った。
息子に渡すお金尽きるまで…ギャンママの葛藤 最初にパチンコにはまったきっかけは同級生に対する優越感だった。勝って景品を友だちに渡すと、「すごいね」とほめられた。有名校に通っていた佐伯さん。「勉強では勝てないが、ギャンブルなら勝てる。他人に認めてもらう手段がパチンコだった」と話す。

学生時代は少額で遊ぶ程度にとどめていたが、社会人になって使える金が増えたことで歯止めがきかなくなった。IT関係の営業職で、ささいなミスや人間関係の悩みから、パチンコを繰り返した。「ギャンブルには煩わしい人間関係もない。台と向き合えば、借金や仕事のことも忘れられた」。寝る前に死意識、「やめ方」を検索 最初は「勝てば、すぐに返せる」と軽い気持ちで消費者金融から数万円を借りた。返済のためにパチンコをして負け、借金が膨らむ。返済のプレッシャーがストレスとなり、パチンコに走る悪循環に陥った。いつしか借金が頭の大部分を占めるようになり、寝る前には「死にたい」と考えるようになった。 ネットで「ギャンブル やめ方」と検索し、見つかったのが依存症の自助グループだった。わらにもすがる思いでミーティングに参加。パチンコなどに依存した経緯や過去を赤裸々に語り、他の参加者からも自分と同じ経験をしたと聞きホッとした。通ううちに自分を受け入れてくれる居場所になった。 パチンコをしたくなると自助グループのメンバーの顔を思い出し、衝動を抑えた。佐伯さんはもう7年以上ギャンブルはしていない。「いつでも相談できる仲間ができたことがギャンブルをやめる支えになった」と振り返る。 高松市にある香川県依存症治療拠点機関の三光病院に2023年3月に転職。4月にはギャンブルをやめたいと願う人のための自助グループを仲間と立ち上げた。一人でギャンブル依存に悩む人に向け、「依存症は病気で、甘えではない。まずは自助グループに一度参加してみてほしい」と呼びかける。「誰でもなる可能性ある」 三光病院の海野順院長はギャンブルをはじめとする依存症について、周囲に相談しづらい点を踏まえ「孤独の病であり、国民病でもある。依存症は誰でもなる可能性がある」と警鐘を鳴らす。小遣い稼ぎなど、ささいなきっかけから依存症になってしまうケースもあるという。 「快楽を味わい、またやりたいと思うことは脳の働きとして健康」と話す一方、「ギャンブルにのめり込みすぎると、健康的な人間関係や仕事よりもギャンブルを優先する。相談する相手もいないから、さらにギャンブルに依存する悪循環が生まれる」と指摘する。ギャンブル依存はだらしないなどのイメージが強く、病気かもしれないと発想できない人が多いという。病院外来や自助グループの存在を広く知ってもらうことが必要で、海野院長は「味方がいれば、回復へ導く支えとなる」と強調する。【川原聖史】 ギャンブルで悩んでいる人はGA日本インフォメーションセンターのホームページ(http://www.gajapan.jp)で相談を受け付けている。
最初にパチンコにはまったきっかけは同級生に対する優越感だった。勝って景品を友だちに渡すと、「すごいね」とほめられた。有名校に通っていた佐伯さん。「勉強では勝てないが、ギャンブルなら勝てる。他人に認めてもらう手段がパチンコだった」と話す。
学生時代は少額で遊ぶ程度にとどめていたが、社会人になって使える金が増えたことで歯止めがきかなくなった。IT関係の営業職で、ささいなミスや人間関係の悩みから、パチンコを繰り返した。「ギャンブルには煩わしい人間関係もない。台と向き合えば、借金や仕事のことも忘れられた」。
寝る前に死意識、「やめ方」を検索
最初は「勝てば、すぐに返せる」と軽い気持ちで消費者金融から数万円を借りた。返済のためにパチンコをして負け、借金が膨らむ。返済のプレッシャーがストレスとなり、パチンコに走る悪循環に陥った。いつしか借金が頭の大部分を占めるようになり、寝る前には「死にたい」と考えるようになった。
ネットで「ギャンブル やめ方」と検索し、見つかったのが依存症の自助グループだった。わらにもすがる思いでミーティングに参加。パチンコなどに依存した経緯や過去を赤裸々に語り、他の参加者からも自分と同じ経験をしたと聞きホッとした。通ううちに自分を受け入れてくれる居場所になった。
パチンコをしたくなると自助グループのメンバーの顔を思い出し、衝動を抑えた。佐伯さんはもう7年以上ギャンブルはしていない。「いつでも相談できる仲間ができたことがギャンブルをやめる支えになった」と振り返る。
高松市にある香川県依存症治療拠点機関の三光病院に2023年3月に転職。4月にはギャンブルをやめたいと願う人のための自助グループを仲間と立ち上げた。一人でギャンブル依存に悩む人に向け、「依存症は病気で、甘えではない。まずは自助グループに一度参加してみてほしい」と呼びかける。
「誰でもなる可能性ある」
三光病院の海野順院長はギャンブルをはじめとする依存症について、周囲に相談しづらい点を踏まえ「孤独の病であり、国民病でもある。依存症は誰でもなる可能性がある」と警鐘を鳴らす。小遣い稼ぎなど、ささいなきっかけから依存症になってしまうケースもあるという。
「快楽を味わい、またやりたいと思うことは脳の働きとして健康」と話す一方、「ギャンブルにのめり込みすぎると、健康的な人間関係や仕事よりもギャンブルを優先する。相談する相手もいないから、さらにギャンブルに依存する悪循環が生まれる」と指摘する。ギャンブル依存はだらしないなどのイメージが強く、病気かもしれないと発想できない人が多いという。病院外来や自助グループの存在を広く知ってもらうことが必要で、海野院長は「味方がいれば、回復へ導く支えとなる」と強調する。【川原聖史】
ギャンブルで悩んでいる人はGA日本インフォメーションセンターのホームページ(http://www.gajapan.jp)で相談を受け付けている。

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