「コピペは禁止だけど、活用は否定していない」 生成AIめぐり都が夏休みの宿題に注意喚起 暗記は無意味に?何歳から使っていい? 議論

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13日、東京都の全ての部局で対話型生成AI「ChatGPT」を導入すると明らかにした小池都知事。一方で、都の教育委員会は都立学校に対して、夏休みの宿題でChatGPTの回答をそのままコピーして提出しないよう、注意喚起する通知を出した。
【映像】来日した「OpenAI」のサム・アルトマンCEO 生成AIが広がりを見せる中、ネットでは暗記不要論をめぐる声もあがっている。「AIが正解を教えてくれるのに、わざわざ暗記する必要ある?」「歴史とか大雑把に分かっていればいいと思う」。

教育は今後どう変わっていくのか。『ABEMA Prime』で専門家を交え議論した。■都の注意喚起「あくまで“コピペ”の話。“活用する”ことは否定していない」 「AIで暗記モデルの教育は変わる」と主張する教育評論家の石田勝紀氏は、東京都の注意喚起は「当然想定されたこと」との見方を示す。「読書感想文と自由研究が、親が手伝う夏休みの2大宿題だ。そうした背景を考えると、おそらく子どもというよりも、親がChatGPTをヒントにやっていく流れがあるのだと思う。ただ、今回の注意喚起は“コピペ”の話で、“活用する”ことに関しては否定していないと受け取っている」 NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星氏は「高校は大学受験があるわけだが、暗記重視というのは変わっていないので、今回の通知は合理性のあるものだと思う。小中学生にとっては、どういう社会的スキルに結びつくのかということが大事。学習指導要領は箇条書きのように文字が連なっているだけだが、これまでの学習でもスキルが培われるようなものと、AIによって代替可能なもの。これらを論理的に分けていく必要があると思う」との考えを述べる。 石田氏は「学習指導要領は近年、小中高と段階的に変わった。知識・技能の大切さはある一方で、一人ひとりにタブレットやパソコンなどのツールを入れながら、個別最適な学習も含めて思考力を育てるということもやっている。そこへ出てきた『ChatGPT』は想定外のもので、教育現場は混乱しているところだ」とした。■ChatGPTで暗記は無意味に? 「チャリ走」などを手掛けるスパイシーソフト代表の山田元康氏は、AI時代でも暗記は必要だと主張する。「小中学生の宿題や勉強というのは、自分でなんらか考えて作ってほしいというよりも、夏休みにきちんと本を読んで読解するようなトレーニングをしてほしいというのが本音だと思う。そういう視点でChatGPTは役に立たず、逆に本来やらなくてはいけないトレーニングが損なわれてしまう。AIはなぜこんな急激に知性が芽生えたのか。脳をシミュレーションするニューラルネットワークという技術は40年前からあるが、インターネットが広がり、大量のデータをCPUに食わせたことによるものだ。僕は人間もAIの一種だと思っているが、AIがデータ量でこれだけ賢くなったとすると、人間も暗記を安易にやめるのはよくないと思っている」 暗記重視の教育について、石田氏は「暗記をまずどう捉えるか。丸暗記していくやり方もありだが、ある程度ストーリー・文脈の中で知っていくほうが自然に入ってきやすい。意味を成さない暗記ができたり、真面目にきっちり覚えていく子がいる一方で、暗記をきっかけに勉強が嫌いになる子もいる。とはいえ、本当に基礎的なところは繋がりもないまま覚えていく必要があるものも最低限ある中で、重箱の角をつつくようなものまで暗記するのかという、程度の話だ」と答えた。 これにモデル・ラジオナビゲーターの長谷川ミラ氏は「私は暗記がすごい得意な学生で、どちらかというと考えるよりもダーッと覚えていた。それだと点数が高く取れるから楽だ。せっかくストーリーを覚えても、それを発揮して成績に繋げる場がない以上、いくら重きを置いてもマッチしないと思う。大学進学や就職を考えると内申という部分があるので、そこから逆算して考えていかないと変化は起きないのではないか」と指摘した。■ChatGPTに年齢制限は必要? ChatGPTの生みの親、OpenAIのサム・アルトマンCEOが来日し、12日に慶應義塾大学の学生ら800人との対話イベントが開催された。そこでアルトマン氏は「皆さんはパーフェクトな年齢だ」と述べているが、ChatGPTに年齢制限は必要なのか(ChatGPTは3月14日更新の利用規約で、「18歳以上または保護者の承認を得た13歳以上に限る」とし、年齢確認をする仕組みの導入を検討するとしている)。 山田氏は「僕は大学生でいいのではないかと思っている。皆さんChatGPTを神様だと思っているが、そうではなく、“知識量とコミュ力がめっちゃあるアシスタント”だ。アシスタントをうまく使いこなして、10倍の仕事をするためのツールだと現時点では思っている。そういう意味でのトレーニングが必要なのは大学生からではないかと思うが、高校生でも部活動などでは使ってもいいのではないか」との考えを示す。 一方、石田氏は「提出すればいい課題だったり、やっつけ仕事という状況では、ただのコピペで終わってしまう弊害もあると思う。問題意識と目的意識があるものに対しては活用してもいいのではないか。単純に年齢という考え方ではないと思っている」と述べた。 コラムニストの小原ブラス氏は「小学生でもプライベートで使う分には全然いいと思っている。例えば大人の言葉で書かれている難しいニュースをChatGPTに貼り付けて、“小学生にもわかるような文章にして”と言ったら書き換えてくれる。つまり、大人の世界を子どもでも見ることができるようになる画期的なツールでもあるわけだ。本を読むトレーニングもそうだが、目的を学校でちゃんと説明する場が必要だと思う」と投げかける。 大空氏は「ChatGPTの一番のメリットは、個別最適な教育を提供できるところではないかと思っている。小中学生までみんな等しいペースで教育を受ける中で、勉強についていけず学校にも行きたくない子どもたちが増えている。しかし、ChatGPTを使うと、先生の代わりにその子に合ったスピードと回答を出してくれる。暗記どうこうというよりも、個別最適な教育という方向に時間を集中したほうがいいのではないか」と述べた。(『ABEMA Prime』より)
生成AIが広がりを見せる中、ネットでは暗記不要論をめぐる声もあがっている。「AIが正解を教えてくれるのに、わざわざ暗記する必要ある?」「歴史とか大雑把に分かっていればいいと思う」。
教育は今後どう変わっていくのか。『ABEMA Prime』で専門家を交え議論した。
■都の注意喚起「あくまで“コピペ”の話。“活用する”ことは否定していない」
「AIで暗記モデルの教育は変わる」と主張する教育評論家の石田勝紀氏は、東京都の注意喚起は「当然想定されたこと」との見方を示す。
「読書感想文と自由研究が、親が手伝う夏休みの2大宿題だ。そうした背景を考えると、おそらく子どもというよりも、親がChatGPTをヒントにやっていく流れがあるのだと思う。ただ、今回の注意喚起は“コピペ”の話で、“活用する”ことに関しては否定していないと受け取っている」
NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星氏は「高校は大学受験があるわけだが、暗記重視というのは変わっていないので、今回の通知は合理性のあるものだと思う。小中学生にとっては、どういう社会的スキルに結びつくのかということが大事。学習指導要領は箇条書きのように文字が連なっているだけだが、これまでの学習でもスキルが培われるようなものと、AIによって代替可能なもの。これらを論理的に分けていく必要があると思う」との考えを述べる。
石田氏は「学習指導要領は近年、小中高と段階的に変わった。知識・技能の大切さはある一方で、一人ひとりにタブレットやパソコンなどのツールを入れながら、個別最適な学習も含めて思考力を育てるということもやっている。そこへ出てきた『ChatGPT』は想定外のもので、教育現場は混乱しているところだ」とした。
■ChatGPTで暗記は無意味に?
「チャリ走」などを手掛けるスパイシーソフト代表の山田元康氏は、AI時代でも暗記は必要だと主張する。
「小中学生の宿題や勉強というのは、自分でなんらか考えて作ってほしいというよりも、夏休みにきちんと本を読んで読解するようなトレーニングをしてほしいというのが本音だと思う。そういう視点でChatGPTは役に立たず、逆に本来やらなくてはいけないトレーニングが損なわれてしまう。
AIはなぜこんな急激に知性が芽生えたのか。脳をシミュレーションするニューラルネットワークという技術は40年前からあるが、インターネットが広がり、大量のデータをCPUに食わせたことによるものだ。僕は人間もAIの一種だと思っているが、AIがデータ量でこれだけ賢くなったとすると、人間も暗記を安易にやめるのはよくないと思っている」
暗記重視の教育について、石田氏は「暗記をまずどう捉えるか。丸暗記していくやり方もありだが、ある程度ストーリー・文脈の中で知っていくほうが自然に入ってきやすい。意味を成さない暗記ができたり、真面目にきっちり覚えていく子がいる一方で、暗記をきっかけに勉強が嫌いになる子もいる。とはいえ、本当に基礎的なところは繋がりもないまま覚えていく必要があるものも最低限ある中で、重箱の角をつつくようなものまで暗記するのかという、程度の話だ」と答えた。
これにモデル・ラジオナビゲーターの長谷川ミラ氏は「私は暗記がすごい得意な学生で、どちらかというと考えるよりもダーッと覚えていた。それだと点数が高く取れるから楽だ。せっかくストーリーを覚えても、それを発揮して成績に繋げる場がない以上、いくら重きを置いてもマッチしないと思う。大学進学や就職を考えると内申という部分があるので、そこから逆算して考えていかないと変化は起きないのではないか」と指摘した。
■ChatGPTに年齢制限は必要?
ChatGPTの生みの親、OpenAIのサム・アルトマンCEOが来日し、12日に慶應義塾大学の学生ら800人との対話イベントが開催された。そこでアルトマン氏は「皆さんはパーフェクトな年齢だ」と述べているが、ChatGPTに年齢制限は必要なのか(ChatGPTは3月14日更新の利用規約で、「18歳以上または保護者の承認を得た13歳以上に限る」とし、年齢確認をする仕組みの導入を検討するとしている)。
山田氏は「僕は大学生でいいのではないかと思っている。皆さんChatGPTを神様だと思っているが、そうではなく、“知識量とコミュ力がめっちゃあるアシスタント”だ。アシスタントをうまく使いこなして、10倍の仕事をするためのツールだと現時点では思っている。そういう意味でのトレーニングが必要なのは大学生からではないかと思うが、高校生でも部活動などでは使ってもいいのではないか」との考えを示す。
一方、石田氏は「提出すればいい課題だったり、やっつけ仕事という状況では、ただのコピペで終わってしまう弊害もあると思う。問題意識と目的意識があるものに対しては活用してもいいのではないか。単純に年齢という考え方ではないと思っている」と述べた。
コラムニストの小原ブラス氏は「小学生でもプライベートで使う分には全然いいと思っている。例えば大人の言葉で書かれている難しいニュースをChatGPTに貼り付けて、“小学生にもわかるような文章にして”と言ったら書き換えてくれる。つまり、大人の世界を子どもでも見ることができるようになる画期的なツールでもあるわけだ。本を読むトレーニングもそうだが、目的を学校でちゃんと説明する場が必要だと思う」と投げかける。
大空氏は「ChatGPTの一番のメリットは、個別最適な教育を提供できるところではないかと思っている。小中学生までみんな等しいペースで教育を受ける中で、勉強についていけず学校にも行きたくない子どもたちが増えている。しかし、ChatGPTを使うと、先生の代わりにその子に合ったスピードと回答を出してくれる。暗記どうこうというよりも、個別最適な教育という方向に時間を集中したほうがいいのではないか」と述べた。(『ABEMA Prime』より)

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