人生の最後は、自宅でと思いながらも、家族には負担をかけるのは……そう考えると、老人ホームへの入所という選択肢も。「終の棲家だと思って……」そう入居を決める人も多いでしょうが、その願いが100%叶うとは言い切れません。みていきましょう。
WHOが発表した2023年版の世界保健統計によると、平均寿命が最も長い国は日本で84.3歳。男女別にみていくと、男性の平均寿命は81.5歳で「スイス」に次ぐ世界2位、女性は86.9歳で世界1位でした。
一方、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されている健康寿命は、日本は74.1歳で、こちらも世界1位。男女別にみていくと、男性は72.6歳で世界1位、女性は75.5歳でこちらも世界1位でした。
【世界「平均寿命」トップ10】1位「日本」84.3歳2位「スイス」83.4歳3位「韓国」83.3歳4位「シンガポール」83.2歳4位「スペイン」83.2歳6位「キプロス」83.1歳7位「オーストラリア」83.0歳7位「イタリア」83.0歳9位「イスラエル」82.6歳9位「ノルウェー」82.6歳【世界「健康寿命」トップ10】1位「日本」74.1歳2位「シンガポール」73.6歳3位「韓国」73.1歳4位「スイス 」72.5歳5位「キプロス」72.4歳5位「イスラエル」72.4歳7位「フランス」72.1歳7位「スペイン」72.1歳9位「アイスランド」72.0歳10位「イタリア」71.9歳10位「スウェーデン」71.9歳出所:WHO 世界保健統計2023年版平均寿命と健康寿命の差異は、男性で8.9年、女性で11.4年。つまり病院や介護施設にお世話にならないといけない期間は、9~11年程度だといえるでしょう。厚生労働省『介護給付費等実態統計月報』などから、年齢別の要介護認定者の割合をみていくと、「40~64歳」で0.4%、「65~69歳」で2.9%、「70~74歳」で5.8%ですが、「75~79歳」で12.7%、「80~84歳」で26.4%、「85歳以上」で59.8%と、年齢を重ねるごとに急カーブで増えていきます。生命保険文化センター『生命保険に関する全国実態調査』によれば、介護期間は平均61.1ヵ月。また介護の一時費用の平均は74万円、月々の費用の平均8.2万円。単純計算、平均で570万円もの介護費用がかかることになります。老人ホームへ入居…「最後まで安心」は絶対ではない介護が必要になったら……配偶者や子どもに介護・支援をお願いするのもひとつの選択肢ですが、施設に入居するというのも昨今の有力な選択肢になっています。厚生労働省では特別養護老人ホームの1ヵ月の自己負担の目安として、要介護5の人が多床室を利用した場合は約10万4,200円、ユニット型個室を利用した場合は約14万1,430円としています。また別資料では、サービス付き高齢者向け住宅の平均利用料金総額は14万0,241円、有料老人ホームでは18万9,982円としています。高齢者施設の平均入居年齢は80歳前後といわれていますが、80歳が手にする年金受取額は、厚生年金受給者で15.4万円。手取りは13万円ほどでしょうから、プラスαの貯蓄があれば十分検討できるといえます。なかには自宅を処分して、施設への入居を考えるケースもあるでしょう。住まいの維持は結構な労力が必要ですし、カラダの自由が段々と利かなくなってくる高齢者ならなおさらです。「終の棲家として」。そう考えて、施設に入居した人たちは、一様にホッとしていることでしょう。――これで最後まで安心しかし、最近は、そのような人生最後の願いも叶えられない事態が起きています。東京商工リサーチによると、2022年に倒産した介護事業者は143件。コロナ禍で利用者が減少したことによるもので、過去最多を記録しました。種類別にみていくと「通所・短期入居」が69件と最も多く、「訪問介護」が50件と続きます。「有料老人ホーム」も12件が破綻しています。破綻の原因は利用者減だけでなく、昨今の物価高の影響も。介護業界には、介護報酬の基本単位は一律で決まっているので、運営コストが増加してもサービス費用への転換が難しい、という実情があります。終の棲家だと思って安心して入居したのにも関わらず、施設は破綻。経営を引き継ぐ会社があればいいのですが、なければ退所しなければなりません。次の施設が見つかればいいのですが、昨今、介護業界では人材不足が深刻化。定員に余裕があっても、これ以上は入居させられない、入居はお断り……そんな施設が増えており、「介護難民」となる人が増えるという懸念が広がっています。介護施設の破綻においては、入居者は閉業が決まってからその事実を知ることになります。例えそうなったとしても、入居者が望む生活を継続できるような支援が必要です。
【世界「平均寿命」トップ10】
1位「日本」84.3歳
2位「スイス」83.4歳
3位「韓国」83.3歳
4位「シンガポール」83.2歳
4位「スペイン」83.2歳
6位「キプロス」83.1歳
7位「オーストラリア」83.0歳
7位「イタリア」83.0歳
9位「イスラエル」82.6歳
9位「ノルウェー」82.6歳
【世界「健康寿命」トップ10】
1位「日本」74.1歳
2位「シンガポール」73.6歳
3位「韓国」73.1歳
4位「スイス 」72.5歳
5位「キプロス」72.4歳
5位「イスラエル」72.4歳
7位「フランス」72.1歳
7位「スペイン」72.1歳
9位「アイスランド」72.0歳
10位「イタリア」71.9歳
10位「スウェーデン」71.9歳
出所:WHO 世界保健統計2023年版
平均寿命と健康寿命の差異は、男性で8.9年、女性で11.4年。つまり病院や介護施設にお世話にならないといけない期間は、9~11年程度だといえるでしょう。
厚生労働省『介護給付費等実態統計月報』などから、年齢別の要介護認定者の割合をみていくと、「40~64歳」で0.4%、「65~69歳」で2.9%、「70~74歳」で5.8%ですが、「75~79歳」で12.7%、「80~84歳」で26.4%、「85歳以上」で59.8%と、年齢を重ねるごとに急カーブで増えていきます。
生命保険文化センター『生命保険に関する全国実態調査』によれば、介護期間は平均61.1ヵ月。また介護の一時費用の平均は74万円、月々の費用の平均8.2万円。単純計算、平均で570万円もの介護費用がかかることになります。
介護が必要になったら……配偶者や子どもに介護・支援をお願いするのもひとつの選択肢ですが、施設に入居するというのも昨今の有力な選択肢になっています。
厚生労働省では特別養護老人ホームの1ヵ月の自己負担の目安として、要介護5の人が多床室を利用した場合は約10万4,200円、ユニット型個室を利用した場合は約14万1,430円としています。また別資料では、サービス付き高齢者向け住宅の平均利用料金総額は14万0,241円、有料老人ホームでは18万9,982円としています。
高齢者施設の平均入居年齢は80歳前後といわれていますが、80歳が手にする年金受取額は、厚生年金受給者で15.4万円。手取りは13万円ほどでしょうから、プラスαの貯蓄があれば十分検討できるといえます。なかには自宅を処分して、施設への入居を考えるケースもあるでしょう。住まいの維持は結構な労力が必要ですし、カラダの自由が段々と利かなくなってくる高齢者ならなおさらです。
「終の棲家として」。そう考えて、施設に入居した人たちは、一様にホッとしていることでしょう。
――これで最後まで安心
しかし、最近は、そのような人生最後の願いも叶えられない事態が起きています。
東京商工リサーチによると、2022年に倒産した介護事業者は143件。コロナ禍で利用者が減少したことによるもので、過去最多を記録しました。種類別にみていくと「通所・短期入居」が69件と最も多く、「訪問介護」が50件と続きます。「有料老人ホーム」も12件が破綻しています。
破綻の原因は利用者減だけでなく、昨今の物価高の影響も。介護業界には、介護報酬の基本単位は一律で決まっているので、運営コストが増加してもサービス費用への転換が難しい、という実情があります。
終の棲家だと思って安心して入居したのにも関わらず、施設は破綻。経営を引き継ぐ会社があればいいのですが、なければ退所しなければなりません。次の施設が見つかればいいのですが、昨今、介護業界では人材不足が深刻化。定員に余裕があっても、これ以上は入居させられない、入居はお断り……そんな施設が増えており、「介護難民」となる人が増えるという懸念が広がっています。
介護施設の破綻においては、入居者は閉業が決まってからその事実を知ることになります。例えそうなったとしても、入居者が望む生活を継続できるような支援が必要です。