東京・練馬区の「としまえん」跡地に「ワーナーブラザーススタジオツアー東京 メイキング・オブ・ハリー・ポッター」が16日にオープンし、予約が殺到している。この施設はハリー・ポッターの映画製作の舞台裏を体験できるもので、ファンには高評価。上々の滑り出しには米映画大手傘下のワーナーブラザーススタジオジャパンの“配慮”があった。
惜しまれながら2020年8月に閉園となったとしまえん。もともと1957年にとしまえんを含む一帯が都市計画公園「練馬城址公園」に指定され、さらに東日本大震災後の2011年には東京都が防災機能の強化のため、としまえんの土地を買収して都立公園として再整備する方針をブチ上げていた。このときに2020年度までに事業認可取得を目指す優先整備区域に指定され、としまえんは閉園する方向となっていた。
しかし、公園の整備計画は長期間動かなかった。都民ファーストの会で地元選出の尾島紘平東京都議は「当時の石原都政が防災公園として整備すると公にしたのですが、練馬区には根回しがなかったのです。練馬区は『ねりま未来プロジェクト』といって、あの場所にサッカースタジアムを誘致するとかいろんな使い道を考えていた。それなのにいきなり『防災公園にする』ですから、区が怒ったわけです。そして、都と区が交渉のテーブルに着くことすらできなくなったのです」と明かした。
事業認可取得の期限が近づいたことで、尾島氏が都と区の担当者に交渉のテーブルに着くよう話をしたという。「お互いに『ボールは相手にある』との主張で、としまえん問題は長年はれ物扱いでした。しかし、期限を超えると手続きはさらに大変になる。お尻に火が付いた状況から物事が動き出したのです」(同)
20年2月にとしまえん閉園とハリー・ポッターの施設開園が報道。としまえんがなくなることは防災公園になると11年に公になった時点で予想できることだったが、周知されていたわけではなかった。それだけに子供のころから利用していた地元民の反対の声は大きかった。
それら反対意見に向き合ったのがワーナーだった。「住民説明会ではワーナーが『お前らが来るからとしまえんがつぶれるんだ』とつるし上げになることもありました。実際はとしまえん閉園とワーナーは無関係なのですが、ワーナー担当者はいくつもある反対グループの声にも一つ一つ丁寧に答えていました。としまえんへのリスペクトもありました。としまえんのメモリアルゾーンを作ったのです」(同)
周辺の交通量が増えることが予想されることから、外周部の歩道も整備。災害となったら帰宅困難者を施設内に受け入れられるようにもなるという。「地域の声の一つにシンボルだった木を守ってほしいというのがあり、実際にワーナーは残しています。しかも、木を避けるように屋根がカーブするなど手間をかけています」(同)。現在は反対の声も少なくなったという。
ハリー・ポッターのスタジオツアーは英国で2012年にオープンし、今でも人気。世界で2か所目が練馬の施設となる。練馬の新名所として定着するか。