様々な働き方が選択できるようになったいま、会社の規則や労働法でもカバーできない問題点が噴出しています。
これまでの「常識」が通用しなくなった職場で、どこまでが職場規則の範囲内なのか、またその規則が社会的に常識といえる範疇にあるものなのかどうか、仮に常識の範囲外であれば、どこにどう相談すればよいのか…?など、悩みは尽きません。
そうした職場の労務にまつわるモヤモヤを、『職場問題グレーゾーンのトリセツ』を上梓した、社会保険労務士の村井真子さんが解説。
<【中編】ノルマが達成できなければ「買い取り」を強要する職場、これって実は違法ですか…?社労士が答える>でもお伝えした通り、意外と知らない職場での「落とし穴」とその対処法をアドバイスします。
【相談】会社に内緒で副業を始めたらしい同僚。バレないんでしょうか?
副業が発覚するいちばん多いタイミングは、5月から6月頃です。理由は住民税の通知書がこの時期に届くからです。
「住民税」は、所得割と均等割で構成されています。所得割の部分は、前年所得に応じて計算されます。前年所得とは、年末調整や確定申告で決定された額です。
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副業で得た収入が20万円を超えると確定申告が必要になりますが、住民税は「年末調整で会社から申告されている所得」と「確定申告で申告された所得」との双方から徴収額を決定します。
一般的に、会社員は給与天引きで住民税を納め、会社がまとめて納付するので、住民税の金額は会社も知ることができるのです。なお、住民税についての通知は、会社から労働者に渡すことになっています。
もちろん、副業をしていなくても住民税が変動することはあります。例えば、資産の贈与があったり、配当収入があるなどによって所得自体が増えた場合、また住宅ローン控除が終わるなど控除を受けられる範囲が少なくなった場合は住民税額が変動します。
しかし、そうした事情を会社に知らせず、あまりに前年度と差があれば、副業を疑われるでしょう。
また、日々の勤務に支障が出て副業を疑われることもあります。遅刻や欠勤、勤務中のミスが増えると、会社としても副業の可能性を考え出します。副業自体に対する懲戒ではなくても、勤務態度に対する懲戒が行われる可能性はありそうです。
2020年、労働者災害補償保険法(労災法)の改正によって、副業先でも労災保険に加入していれば、労災の給付対象になるような「ケガや休業」があった場合に、双方の賃金額を合算して給付額を算定するようになりました(*1) 。
つまり、労災事故が起こると、副業が発覚する構造になったのです。隠して副業すると思わぬところからバレてしまうので注意しましょう。
【社労士アドバイス】住民税が変動すればバレます。
(*1)厚生労働省「労働者災害補償保険法の改正について~複数の会社等で働かれている方への保険給付が変わります~」