マンション管理運営にとって欠かせないのが日頃、管理業務をこなしてくれている管理員です。真面目で何でも言うことを聞いてくれる、気さくで親しみやすいなど、「住人にとって良い管理員」が良い管理員であると考えがちですが、一方であまり表沙汰にならない「管理員による犯罪やスキャンダル」が実は多発していることをごぞんじでしょうか。
今回は、普段は真面目で住人からも人気の高かった管理員が起こしてしまった着服事件の実例をご紹介します。
「資源の再利用の推進」や「廃棄物の減量化」といった名目で、マンションで紙類布類、ビン、缶、ペットボトル等を各家庭から集めて回収業者に引き渡し、その量に応じて行政から奨励金が支払われる「リサイクル活動奨励金」という制度があります。これは管理組合にとっては貴重な収入源になっています。
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マンション運営の世界には、マンション管理組合の交流会というものがあります。そこでの管理組合役員の意見交換会での話です。都内の900戸のマンションの大西なつき(仮名)理事長という方で、行きつけのヘアサロンの美容師も60戸のマンションの理事長を務めており、マンション管理の話をよくするそうです。
美容師から「大西さんのマンションは大型なのでリサイクル活動奨励金は何十万円も市から出るでしょう。うちは小さいマンションなので年間4万円位しか出ないですよ」
と言われ、それまでマンションで日曜日に定期的に古新聞やビン・缶等を居住から集め業者に回収させていることは知っていたが、それがリサイクル活動奨励金となって市から振込まれていたことは知らなかったそうです。
家に帰って、管理組合の会計資料を調べてみると、リサイクル活動奨励金が収入として3万円しか計上されていないことを知り他の理事にも相談して市の環境課に問い合わせたと市は毎年70万円~80万円支払いしていたことがわかりました
市の環境課の担当者の説明では、リサイクル活動奨励金の振込先は、管理組合の銀行口座ではなく、なんと管理員の個人の銀行口座だったのです。
管理員を理事会に出席させて事情を聴いたところあっさりとそれを認めました。管理員は、リサイクル活動奨励金が管理組合の収入に計上されていないことがばれないように毎年3万円を管理組合の収入として管理組合の小口現金口座に入金していたのです。
今まで管理員が着服したリサイクル活動奨励金は700万円にもなることが判明しました。幸いなことに、着服したお金は管理員が全部老後の資金のために預金していたのでそれを返金しために実質的な被害はありませんでした。
警察に被害届けを出すことを理事会で決議しましたが、管理会社から支店長が訪れ使用者責任として謝罪はあったものの、「着服したお金も戻って来たし、この事件が公になればマンションの名前も知られて資産価値も下がるし、当社の信用も下がるのでお互いためにならないので内密にしてしてほしい」と何度も頭を下げれて、マンションの居住者にも知らせないままに管理員を交代して幕引きをはかってしまったのです。
事件は起こしたものの、人当たりも良く、気は利くし、子供達にやさしいのでマンションに住むママ達から人気も高い管理員でした。
その居住者のママ達から管理員が突然辞めること知らされた居住者からは、管理員の退職反対の署名活動まで起きてしまったということです。
後編『なぜ管理員室にマンションに関係のない不動産仲介業者の女性が…?「表沙汰にならないマンション管理員による犯罪」の実態とチェックすべき「処分歴」とは』につづく。