その名も「恐竜学部」 化石産出王国の福井が県立大に設置 全国初

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国内有数の化石の産地として知られる福井県の県立大に令和7年度、恐竜の研究に特化した新たな学部が誕生する。
その名も「恐竜学部」(仮称)。県によると、恐竜研究を掲げる学部設置は全国初だ。「恐竜王国」の強みを生かし、県立恐竜博物館(勝山市)の研究員による講義といったバラエティーに富んだ学習環境も提供される。しかしなぜ今、恐竜なのか。背景を取材した。
福井で化石が見つかった恐竜は、国産恐竜で初めて復元された草食の「フクイサウルス」(白亜紀前期)や、国産の肉食恐竜として初めて全身骨格が復元された「フクイラプトル」(同)などが有名。これらの標本を展示している県立恐竜博物館には毎年大勢の恐竜ファンが訪れている。
県立大によると、新学部の拠点となる新キャンパスは県立恐竜博物館の隣接地に造られる。学生は恐竜学や地質・古気候学を学び、発掘調査などの現場活動にも出向く。入学定員は30人で、卒業後は研究者や学芸員といった多様な職種に進むことを想定する。
県立大恐竜学研究所長の西弘嗣教授(古生物学・地質学)によると、近年、古生物学を冠する学部は減少傾向にある。ただねらいは、恐竜王国・福井を支える人材の育成だけにとどまらない。地球温暖化をはじめ、深刻化する環境問題を考える上でも地質学は非常に重要だと西教授。「地政学的要求と自然科学の問題の双方を研究し、関連する政策提案までできるような拠点にしていきたい」と力説する。
時代に応じた研究にも注力する。その一つがデジタル技術を生かした学びだ。実際に古生物の研究ではCTスキャンなどを用い、化石の内部構造を知る手法が一般化。恐竜の標本から化石の発掘現場まで、すべてをデジタル化できる技術を導入して生かしていくという。
同研究所は今年4月、兵庫県の大型放射光施設「スプリング8」の高エネルギーエックス線CTスキャンを使い、従来の方法のように切断することなく恐竜化石の骨組織の撮影に成功したと発表した。
恐竜王国の地で、専門的な知識を身につける恐竜学部。将来的には大学院の設置も想定しており、西教授は「恐竜を研究し福井の恐竜ブランドを支える学生や、自然科学の問題に対処できる能力を持った学生を育てていきたい」と抱負を語った。

少子化に伴い、志願者総数が各大学の入学定員の合計を下回る「大学全入時代」が迫りつつあるとされる。中央教育審議会の平成30年の推計によると、29年に約120万人いた18歳人口は令和22(2040)年に約88万人となり、約32万人減少する。これに対し大学の進学者数は約12万人しか減らず、大学進学率はさらに上昇するとみられている。
大学全入時代を目前に、近年は受験生の難関校への挑戦志向が顕著になっている。少子化などもあり、以前より難関校のレベルが低くなったと考える人がいるためだ。
その半面、「大学で何を学んだか」を重視する人も増えている。終身雇用は前提でなくなり、転職や起業を当然と考える人が珍しくなくなった。
福井県立大に誕生する恐竜学部(仮称)のように、特定の学問に特化した学部開設の動きもそうした社会情勢を反映した動きといえる。ユニークな学部名で目立つ大学はほかにもある。京都精華大の「マンガ学部」や、東京未来大の「モチベーション行動科学部」、明海大(千葉)の「ホスピタリティ・ツーリズム学部」などはその一例といえる。
一方、18歳人口の減少を受け、文部科学省は定員を大幅に下回る大学への規制強化を決めた。在籍する学生が定員の5割以下となった学部を持つ大学については、他の新たな学部設置を認めないといった内容だ。学生を呼び込む魅力ある学部づくりのため、大学側もニーズに合わせた変化が求められている。(前原彩希)

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