長野立てこもり容疑者を溺愛した母は経営者で地元のリーダー格 社交的な母と内向的な息子の噛み合わない母子関係

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

わずか10分の間に、4人もの命が奪われた事件。「普通の少年だった」といわれる容疑者は、なぜ凶行に走ったのか。半生を辿ると浮かび上がってきたのは、社交的で明るい母親と内向的な息子の、噛み合わない母子関係だった──。
【写真】野球のユニフォームを着た中学時代の容疑者。「お母さんが撃とうか?」と母親が言った、容疑者が立てこもった自宅「お母さんがそばで見ているから。最後の場所は自分で決めて」 自宅の庭のりんごの木の下に移動し、猟銃を自らのどに突き立て自殺を試みる息子。だが、なかなか引き金を引けない。苦戦する息子に、母親は「足(で引き金を引くの)はどうかな?」と彼の靴下を脱がせた。足の指で引き金に触れるが、うまくいかない。その刹那、「パン!」と乾いた銃声が夜空に響いた。動揺からか、銃口は彼ののど元から外れ、上空を向いていた。母親は、息子に提案した。「お母さんが撃とうか?」──。

JR長野駅から長野電鉄に乗り換え、北東へ45分ほどの信州中野駅。駅から2kmほど離れた住宅が点在するのどかな地域で凶行は起こった。 5月25日、長野県中野市江部で竹内靖子さん(享年70)と村上幸枝さん(享年66)がサバイバルナイフで刺されて死亡。現場に駆け付けた中野署巡査部長の池内卓夫さん(享年61)は銃で撃たれ、同署警部補の玉井良樹さん(享年46)は撃たれた後に刺されて死亡した。翌日早朝、長野県警は自宅に立てこもっていた青木政憲容疑者(31才)を殺人容疑で逮捕した。「竹内さんと村上さんは、ほぼ毎日2人で近所を散歩していた。青木容疑者の自宅前は、散歩ルートだったようです。青木容疑者は彼女たちが“いつも自分がひとりでいることをののしっていると思い、殺した”と供述しており、2人を待ち伏せして襲ったとみられています」(社会部記者) 事件から2日後、青木容疑者の母親は「信濃毎日新聞」の取材に応じ、事件当日の緊迫の会話を明かした。その様子は冒頭で再現した通りである。「母親は、事件の一報を受け、外出先から慌てて自宅に戻ったところ、自宅に隣接した薪小屋で女性の遺体を見たそうです。“お母さんもお父さんも罪を背負うから。自首しよう”と促すも、容疑者は拒否。容疑者は自殺を試みたがうまくいかず、“お母さんが撃とうか?”という言葉で母親に猟銃を差し出したところ、そのまま母親は銃を持って現場から逃げ出したのです」(前出・社会部記者) 青木容疑者は、13代続く農家に三きょうだいの長男として生まれた。父親・青木正道さん(57才)は、中野市議会議長だった(事件直後の5月26日に辞職)。「正道さんと奥さんは高校の同級生で、当時から交際していて、そのまま結婚しました。明るい性格のふたりで、仲睦まじいカップルでした」(正道さんの高校の同級生) 中学時代は野球部に所属していたという青木容疑者。同じ野球部に所属していた、同級生の母親が回想する。「政憲くんは、キャッチャーをやっていました。お母さんが、よく練習試合や大会に来て、熱心に応援していました。ただ、3年生のときに後輩にレギュラーを奪われてしまって、その後はあまり練習に来なくなりました」 中学では上位の成績。卒業文集には「自分が思う事」として《この世の中で最も大切なものは「命」だと思います。では二番目は何かと問われたら私は間違いなく「金」と答えるでしょう》《よく聞く綺麗事に「心にゆとりを持ちなさい。」というのがあります。それは金持ちの言う言葉であって、金の無い者や、職業に就けない者が心にゆとりなど持てる訳がないと思われます》などと綴っていた。高校は地元の進学校に通った。青木家の知人が振り返る。「お父さんもお母さんも教育熱心でね。政憲くんの大学進学のときには、防衛大学校に入れたいと話していたこともありました。でも成績は振るわず。1浪して、東京の私立大学の情報通信系の学部に進んだそうです」 ところが、上京して間もなく挫折が訪れる。環境になじめず、大学を中退して長野に戻ってくることになったのだ。「異変を察知した両親に、青木容疑者は『大学で“ぼっち”とバカにされている』、『自宅アパートに盗聴器や監視カメラが仕掛けられている』と主張。両親は見かねて長野に息子を連れ戻したそうです」(前出・社会部記者)「あの家はお母さんの方が強いから」 長野に戻った長男を地域になじませようと、両親は、毎年秋に行われる地域のお祭りに青木容疑者を参加させた。「政憲は十数人の楽器演奏チームに入り、笛を担当していました。黙々と練習するタイプで、上達は早かったですよ。自分から話すことはないものの、飲み会にも顔を出していた。たぶん彼が23、24才ぐらいのときかな。『銃を持っている。鳥を撃っています』と話していたこともありました。 頑張っていたけれど、根底には人づきあいへの苦手意識があったと思う。4、5年経った頃にはフェードアウトして、一升瓶を手にしたお父さんが『申し訳ない』と謝りにきました」(地元関係者) 家業の農業に従事していたという青木容疑者は、結局、地域にはなじめず、平日は自宅と農地の往復を続けていたようだ。そんな彼とは対照的に、両親の活動は活発だった。「お父さんは市議会議長だからみんな知ってます。でも、あの家はお母さんの方が強いんです。“彼女が市議会議員をやった方がいいんじゃないか”って言われるくらい。PTA、地域の文化部長もやった。ほかに、自宅や公民館でのフラワーアレンジメント教室、フルーツのカッティング教室を開いて、直売所で花も売って……さらにジェラート店も経営されています。商売っ気のあるかたという印象です」(近隣住民) 母親の積極性は地域でも有名だったようだ。「彼女は、いろんな会合に顔を出しては辣腕ぶりを発揮する地元のリーダー格でした。ただ、自己主張の強いかたで、口調が厳しかったり、時に衝突することもありました。たとえば、毎年開催される『信州なかのバラまつり』では規則違反を犯してしまい、トラブルになったとか。正義感の強い人なのですが……」(前出・近隣住民) 多方面で活躍する彼女は、内にこもる青木容疑者を気にかけ、何度も手を差し伸べた。「ジェラート店では、政憲さんの名前を冠した『マサノリ園』という果樹園で栽培されたりんごやシャインマスカットが使われています。政憲さんは、ほとんどお店の運営に関与していませんでしたが、お母さんは『息子はジェラート店で頑張っているんですよ』とうれしそうに話していました」(前出・青木家の知人) 昨年11月、青木容疑者は、両親の持つ自宅を担保に地元の金融機関から300万円の借金をしている。「政憲さんの新ビジネスのための資金だったようですが、本人が進んで借りたとも考えにくい。彼に独り立ちしてほしいと願っていた親御さんのアイディアかもしれませんね。長野に戻って10年も経つのに、政憲さんは家族以外とのつながりが希薄なままでした。長男である彼を過保護なまでに溺愛していた母親からしたら、“なんとかしてあげたい”という思いが強くなるのは当然でしょう」(前出・近隣住民) そんな親の思いとは裏腹に、青木容疑者はどんどんと心の闇を深めていった。そして、猟銃とサバイバルナイフを手にし暴挙に出た──。「事件の全貌はまだ見えませんが、供述には被害妄想と受け止められるものもあり、精神鑑定で犯行時の精神状態が調べられることになるはずです。4人が殺され、そのうち2人は警察官。彼らの無念に応えるためにも、責任能力は徹底的に追及されるでしょう」(前出・社会部記者) 自宅に立てこもっているとき、母親に「出頭できないなら一緒に死のう」と提案された青木容疑者は「母さんは撃てない」と言ったという。あまりに身勝手な犯行を重ねた青木容疑者は、正義の裁きを受けなければならない。※女性セブン2023年6月15日号
「お母さんがそばで見ているから。最後の場所は自分で決めて」
自宅の庭のりんごの木の下に移動し、猟銃を自らのどに突き立て自殺を試みる息子。だが、なかなか引き金を引けない。苦戦する息子に、母親は「足(で引き金を引くの)はどうかな?」と彼の靴下を脱がせた。足の指で引き金に触れるが、うまくいかない。その刹那、「パン!」と乾いた銃声が夜空に響いた。動揺からか、銃口は彼ののど元から外れ、上空を向いていた。母親は、息子に提案した。「お母さんが撃とうか?」──。
JR長野駅から長野電鉄に乗り換え、北東へ45分ほどの信州中野駅。駅から2kmほど離れた住宅が点在するのどかな地域で凶行は起こった。
5月25日、長野県中野市江部で竹内靖子さん(享年70)と村上幸枝さん(享年66)がサバイバルナイフで刺されて死亡。現場に駆け付けた中野署巡査部長の池内卓夫さん(享年61)は銃で撃たれ、同署警部補の玉井良樹さん(享年46)は撃たれた後に刺されて死亡した。翌日早朝、長野県警は自宅に立てこもっていた青木政憲容疑者(31才)を殺人容疑で逮捕した。
「竹内さんと村上さんは、ほぼ毎日2人で近所を散歩していた。青木容疑者の自宅前は、散歩ルートだったようです。青木容疑者は彼女たちが“いつも自分がひとりでいることをののしっていると思い、殺した”と供述しており、2人を待ち伏せして襲ったとみられています」(社会部記者)
事件から2日後、青木容疑者の母親は「信濃毎日新聞」の取材に応じ、事件当日の緊迫の会話を明かした。その様子は冒頭で再現した通りである。
「母親は、事件の一報を受け、外出先から慌てて自宅に戻ったところ、自宅に隣接した薪小屋で女性の遺体を見たそうです。“お母さんもお父さんも罪を背負うから。自首しよう”と促すも、容疑者は拒否。容疑者は自殺を試みたがうまくいかず、“お母さんが撃とうか?”という言葉で母親に猟銃を差し出したところ、そのまま母親は銃を持って現場から逃げ出したのです」(前出・社会部記者)
青木容疑者は、13代続く農家に三きょうだいの長男として生まれた。父親・青木正道さん(57才)は、中野市議会議長だった(事件直後の5月26日に辞職)。
「正道さんと奥さんは高校の同級生で、当時から交際していて、そのまま結婚しました。明るい性格のふたりで、仲睦まじいカップルでした」(正道さんの高校の同級生)
中学時代は野球部に所属していたという青木容疑者。同じ野球部に所属していた、同級生の母親が回想する。
「政憲くんは、キャッチャーをやっていました。お母さんが、よく練習試合や大会に来て、熱心に応援していました。ただ、3年生のときに後輩にレギュラーを奪われてしまって、その後はあまり練習に来なくなりました」
中学では上位の成績。卒業文集には「自分が思う事」として《この世の中で最も大切なものは「命」だと思います。では二番目は何かと問われたら私は間違いなく「金」と答えるでしょう》《よく聞く綺麗事に「心にゆとりを持ちなさい。」というのがあります。それは金持ちの言う言葉であって、金の無い者や、職業に就けない者が心にゆとりなど持てる訳がないと思われます》などと綴っていた。高校は地元の進学校に通った。青木家の知人が振り返る。
「お父さんもお母さんも教育熱心でね。政憲くんの大学進学のときには、防衛大学校に入れたいと話していたこともありました。でも成績は振るわず。1浪して、東京の私立大学の情報通信系の学部に進んだそうです」
ところが、上京して間もなく挫折が訪れる。環境になじめず、大学を中退して長野に戻ってくることになったのだ。
「異変を察知した両親に、青木容疑者は『大学で“ぼっち”とバカにされている』、『自宅アパートに盗聴器や監視カメラが仕掛けられている』と主張。両親は見かねて長野に息子を連れ戻したそうです」(前出・社会部記者)
長野に戻った長男を地域になじませようと、両親は、毎年秋に行われる地域のお祭りに青木容疑者を参加させた。
「政憲は十数人の楽器演奏チームに入り、笛を担当していました。黙々と練習するタイプで、上達は早かったですよ。自分から話すことはないものの、飲み会にも顔を出していた。たぶん彼が23、24才ぐらいのときかな。『銃を持っている。鳥を撃っています』と話していたこともありました。
頑張っていたけれど、根底には人づきあいへの苦手意識があったと思う。4、5年経った頃にはフェードアウトして、一升瓶を手にしたお父さんが『申し訳ない』と謝りにきました」(地元関係者)
家業の農業に従事していたという青木容疑者は、結局、地域にはなじめず、平日は自宅と農地の往復を続けていたようだ。そんな彼とは対照的に、両親の活動は活発だった。
「お父さんは市議会議長だからみんな知ってます。でも、あの家はお母さんの方が強いんです。“彼女が市議会議員をやった方がいいんじゃないか”って言われるくらい。PTA、地域の文化部長もやった。ほかに、自宅や公民館でのフラワーアレンジメント教室、フルーツのカッティング教室を開いて、直売所で花も売って……さらにジェラート店も経営されています。商売っ気のあるかたという印象です」(近隣住民)
母親の積極性は地域でも有名だったようだ。
「彼女は、いろんな会合に顔を出しては辣腕ぶりを発揮する地元のリーダー格でした。ただ、自己主張の強いかたで、口調が厳しかったり、時に衝突することもありました。たとえば、毎年開催される『信州なかのバラまつり』では規則違反を犯してしまい、トラブルになったとか。正義感の強い人なのですが……」(前出・近隣住民)
多方面で活躍する彼女は、内にこもる青木容疑者を気にかけ、何度も手を差し伸べた。
「ジェラート店では、政憲さんの名前を冠した『マサノリ園』という果樹園で栽培されたりんごやシャインマスカットが使われています。政憲さんは、ほとんどお店の運営に関与していませんでしたが、お母さんは『息子はジェラート店で頑張っているんですよ』とうれしそうに話していました」(前出・青木家の知人)
昨年11月、青木容疑者は、両親の持つ自宅を担保に地元の金融機関から300万円の借金をしている。
「政憲さんの新ビジネスのための資金だったようですが、本人が進んで借りたとも考えにくい。彼に独り立ちしてほしいと願っていた親御さんのアイディアかもしれませんね。長野に戻って10年も経つのに、政憲さんは家族以外とのつながりが希薄なままでした。長男である彼を過保護なまでに溺愛していた母親からしたら、“なんとかしてあげたい”という思いが強くなるのは当然でしょう」(前出・近隣住民)
そんな親の思いとは裏腹に、青木容疑者はどんどんと心の闇を深めていった。そして、猟銃とサバイバルナイフを手にし暴挙に出た──。
「事件の全貌はまだ見えませんが、供述には被害妄想と受け止められるものもあり、精神鑑定で犯行時の精神状態が調べられることになるはずです。4人が殺され、そのうち2人は警察官。彼らの無念に応えるためにも、責任能力は徹底的に追及されるでしょう」(前出・社会部記者)
自宅に立てこもっているとき、母親に「出頭できないなら一緒に死のう」と提案された青木容疑者は「母さんは撃てない」と言ったという。あまりに身勝手な犯行を重ねた青木容疑者は、正義の裁きを受けなければならない。
※女性セブン2023年6月15日号

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。