追及スクープ第2弾『ビッグモーター』 客の車をミスで炎上させて「隠蔽」していた!

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「お――い! 消火器――!!」
男性の野太い声と共に、駐車場に緊張が走った。男性の視線の先には、ボンネットから火を吹く一台の車がある。突然の火災に、現場は大混乱に陥った――。
年商7000億円を誇る中古車販売業界大手『ビッグモーター』で不正が相次いで発覚している。本誌4月20日発売号では、工場長の指示のもと客のタイヤに穴をあけて工賃や保険金を過剰請求している実態や、オイル交換の偽装、車検における不正も明らかにした。
そんななか、本誌は新たに驚きの動画を入手した。それが冒頭で描写した「火災動画」である。これは’21年12月にビッグモーター熊本浜線店で撮影されたものだ。提供者のAさんは、同支店に’19年から約2年間勤務し、整備部門の責任者を任されていた人物である。Aさんは「ビッグモーター側のミスで、客の車を炎上させた可能性が極めて高い」と明かす。
「燃えた車はエンジン不調を理由に店が預かったものでした。エンジンに装着されているヒューズが切れている状態でしたが、工場長はその原因を特定することなく繋ぎ直してしまった。さらにエンジンを点けると、そのまま放置したんです。結果として火災が発生し、県警や消防が出動する騒ぎになりました」
50秒弱の動画の中盤では、異変に気付いたAさんたちが懸命に消火活動にあたる様子が映し出されている。すぐに鎮火したものの、客の車は消火器の粉末まみれになり、ボンネットの一部は焦げ、見るも無残な姿となった。
工場長自らの失態で客の車を燃やしただけでも驚きだが、さらに衝撃的なのは事後の対応である。Aさんが続ける。
「この火災に対して、ビッグモーターはお客様になんの賠償もしていないと聞いています。というのも、工場長は県警の取り調べなどに対して『自動車が突然発火した』という主張を貫いたからです。私も工場長から、『お前は何も話すな』と口止めをされました。九州地区のエリア長も事態は把握していたはずですが、何の対応もしませんでした」
本誌の取材に、Aさんは後悔も語った。
「会社は最後まで責任を果たすことなく逃げ続けました。一番可哀想なのはお客様です。私自身、真実を知りながら何もできなかった無力感が残りました」
工場長の隠蔽工作について、本社はどう考えているのか。本誌はビッグモーターに質問状を送付したが、今回も期日までに回答はなかった。
数々の不正が横行する背景には何があるのか。自動車業界に詳しい自動車生活ジャーナリストの加藤久美子氏は「利益至上主義が一因ではないか」と語る。
「現在も社長は兼重宏行氏ですが、数年前から息子が経営のトップになっています。その頃から利益至上主義が顕著になってきました。一例で言えば、『減額交渉』が始まったのもこのタイミングだと聞いています。私が取材した利用者の一人は、250万円と査定されたアルファードを、大きな事故や修理をしたことがないにもかかわらず、『修復歴があった』と言われ、50万円減額されたそうです。取材に応じたビッグモーターの現役社員の中には、上から『とにかく理由をつけて査定額を減額するように』という指示が出ていると告白してくれた方もいました。ノルマ達成者には多額のインセンティブが払われるため、多くの社員が悪いと思いながら不正に手を染めてしまうようです。こんなズサンな経営は決して許されるものではありません」
これからも客を軽視し、利益を追い求め続けるのか。中古車業界の雄として、その真価が問われている。
『FRIDAY』2023年5月26日号より

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